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妖光  作者: 村上蘭
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佐久間本家の顛末


    二十三




   

   「まさか、村上さんが本家筋の親戚だったなん


   て俺が蘭さんに有ったのも偶然じゃなくて、何


   かの縁だったのかな」




    驚いたのは、佐久間だけじゃ無く村上蘭もだ


   った。蘭の母親の薫子は、佐久間本家の娘で三


   人姉妹の長女だった。本来なら長女の薫子が、


   婿を取り佐久間本家を継ぐはずだったのだが実


   際はそうならず佐久間本家は次女の陶子が婿を


   取り継いで居た。長女の薫子は東京の村上家に


   嫁ぎ、三女の小夜子は地元の中屋家に嫁として


   迎えられて居る。中屋の叔母と、呼んでいたの


   は三女の小夜子の事であるという事を平蔵達か


   ら聞かされて知った蘭だった。




「佐久間本家の、三姉妹と言えば地元でも知ら


   ない人が居ない位の器量良しさんだったつよ」




    佐久間の、母親が通り過ぎた昔を懐かしむ様


   に言った。




   「その中でも、長女の薫子さんは飛び抜けて美


   人で性格も良かったけん、地元の若い男の間で


   も誰が婿に入るのかといつも噂しとったつばっ


   てん、その薫子さんは東京の大学を卒業して直


   ぐに、大学の先輩と言う人と結婚してしもた。


   それが、あんたの親父さんだったつたいね」




    源三が少しだけ、残念そうに言ったのが印象


   的でもあり可笑しくもあった。父と母の、馴れ


   初めを図らずも聞いてしまった訳だったが、そ


   れにしても長女で佐久間本家の後継ぎ娘が、ど


   この誰とも解らない相手と結婚するのに反対は


   無かったのだろうか、そう思って率直に質問し


   てみたら平蔵がそれに答えてくれた。




   「そりゃあもう、上を下への大騒ぎだったつば


   い大体が薫子は、学校ば出たら婿取りをして佐


   久間本家を継ぐちゅうことが大学進学の条件だ


   ったつが、卒業して暫くして戻ったと思ったら


   男連れで、しかもこん人と結婚したかて言い出


   したもんだけん」




    その時の、佐久間本家の親達の狼狽ぶりが蘭


   にも手に取る様に想像できた。しかし、一番意


   外だったのはあの真面目と厳格さを絵に描いた


   様な母親にそんな一面があったという事が驚き


   だった。




   「それで、当然二人の結婚は反対されたのです


   よね」




    蘭が聞くと平蔵がすぐに答えて呉れた。




   「そぎゃん、でも助け舟が現れたったい」




   「助け舟?」




   その時、傍らから源蔵が話に割り込んで来た。




   「ああ、そん話ならおるも知っとる。陶子さん


   が、自ら名乗り出て自分が婿を取るから姉さん


   の結婚を許してやって欲しいって、言い出さし


   たつだろ」




   「そぎゃん、そっで話が何とかまとまって薫子


   は、東京の村上家に嫁ぐ事が決まったつたい」




    村上蘭の、母親の嫁入り話はそこまでで平蔵


   は、又少し憂鬱な顔に戻り蘭の方に顔を向ける


   と言った。




   「村上さん、所で話しは祠の事に戻るばってん


   あんたはどぎゃん思うかな」   




    平蔵の顔には、それまでの長い人生を生き抜


   いて来た証である深い皴が刻み込まれていた。


   今日は、特にその皺の溝が深まって見えた。そ


   の平蔵の顔を見ていた蘭だったが、直ぐに口を


   開いた。




   「平蔵さん、逆に聞きますけど八百年もの永い


   間どんな方法で悪霊を鎮めて来たのですか」




   「それは、俺も知りたいな」




    佐久間が、蘭の言葉尻を捕まえて喋りかけて


   来た。源三達も気持ちは同じだったらしく、平


   蔵の言葉を待っていた。




   「おるが、徳の高い坊さんの話ばしたつは覚え


   とるな」   




   「はい、騒ぎの最中に突然現れた。お坊さんの


   事ですね」




   「そぎゃん、そん坊さんが悪霊になってしもう


   た源氏の武者の魂ば、こん裏山に葬られとった


   亡骸に戻したばってん、そんままだとまたぞろ


   抜け出して悪さばしかねん、そっで亡骸の埋め


   られ取る場所に大きか石ば置いて、そこに悪霊


   の魂ば封じ込める有難かお札ば貼らしたげなた


   い。そんお札と石ば護る為に祠が作られたって


   話したい」




    一気に喋って、喉が渇いた平蔵がお茶を飲も


   うと口に運んだが、お茶が残ってないのに気づ


   きお茶碗を差し出しながら言った。




   「福子さん、悪かばってんお茶ばくれんかな」




   「はい、ちょっと待って下さいお湯ば持って来


   ますけん」




    佐久間の母親が、お湯を持って来る間に蘭は


   平蔵の話しを整理して居た。裏山で、思った通


   り祠の消失と悪霊騒ぎがリンクしているのがこ


   れではっきりした訳だけど、そうなると悪霊を


   鎮めないと一連の騒ぎは収まりそうも無いとい


   う事になる。その昔、お坊さんがやった様にお


   札と高い徳に裏付けられた霊能力が必要なのだ


   が、残念な事に普通の人よりは霊能力を発揮し


   ている村上蘭では有っても、悪霊を抑え込み尚


   且つ封じ込めるなんて事は、経験した事が無い

   

   し出来る自信も無かった。しかし、そんな気持


   ちの中で佐久間家いやこの村の人達の為に何か


   出来ないだろうか、何でも良いから手助けした


   いと言う思いが不思議だが胸の奥の方から沸々と


   湧き上がって来る蘭なのであった。















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