労働者の落書き
現在は建物などに落書きをする行為は当然NGです。
古代エジプトにおいてもそうだったのか、それとも、それが賞賛されたかどうかはわかりません。
ただし、これだけはいえます。
現代に生きる我々にとって古代エジプトの時間経過を知る方法のひとつが、この労働者の落書きになっています。
たとえば、ピラミッドの建造年数。
エジプト学者がその年数を口にしているのは、単なる推測ではありません。
立派な文字的証拠に基づいたものです。
そして、それが積み上げられた石材に書き込まれた労働者たちの落書きなのです。
それによって、エジプト学者たちは建造迄の年数だけではなく、落書きのあったブロックが据え付けられた位置から進捗状況まで把握できました。
ただし、この時代の表記には少々問題がありました。
新王国時代に記された落書きは「〇〇王の治世〇年~」と記されているのに対し、この時代は「〇〇王の〇回目の家畜数計測年」と表記されていたのです。
この家畜の頭数を計測するのは2年ごととされていたものの、もっと短い期間でおこなわれていた可能性もあり、治世年表記よりも正確性が欠けるのです。
そのため、建造年数の論争が起き、さらに王の治世年数にも開きが出てきてしまうのです。
それでも資料は資料ではあります。
そして、この落書きを書き残したのは労働者だけではありません。
観光箇所で確認できるのはルクソールの王家の谷にあるトトメス4世王墓に残されたものがあります。
これはホルエムヘブの時代に盗掘にあったこの墓を調査したマヤという名の貴族が残したものです。
そして、ツタンカーメン王墓の遺物にも盗掘の修復をおこなった者が残した落書きがありますし、ワイン壺には生産地などが記されていたりします。
興味がある方は、エジプトを訪れたときに確認されるとよいでしょう。




