埋もれた謎のピラミッド
先日、別エピソード「吉野ヶ里遺跡の空振りについて」を書く際に、読み返したゴネイム氏の「埋もれた謎のピラミッド」ですが、ここに興味深いものがあったので書きたいと思います。
実はこの本の中でゴネイム氏は「ウセルカラー王」のピラミッドについて言及している部分があります。
実はこのウセルカラー王は、いわゆる「消されたファラオ」の資格を持つひとりとなります。
簡単に説明しておけば、第6王朝テティ王に次ぐ第二代王として即位するのですが、その痕跡はほとんどありません。
それにもかかわらず、アクエンアテンやツタンカーメン、それにハトシェプスト女王のような正真正銘の「消されたファラオ」とは違い、単なる資格持ちで済んでいるのは、アビドスの王名表にしっかりと名前が記されているからです。
では、「消されたファラオ」ではないだろうと思う方もいでしょうが、この王はそれにふさわしい業績を残しています。
王の暗殺。
もちろんこれが事実かはわかりませんが、一応専門家のいうところの定説によれば、ウセルカラーは父王を暗殺し、即位したものの、次王となるぺピ1世によってあっという間に排除されたということになっています。
当然記念建造物はなく、その墓であるピラミッドも見つかっていません。
ですが、ゴネイム氏の「埋もれた謎のピラミッド」では、そのピラミッドの位置を示しています。
まあ、現在は示された位置にあるのは第13王朝のピラミッドなので、単なる間違いだろうなのかもしれませんし、現在でも所有者が確定しないそれをウセルカラーのものと推測半分で書いたという可能性もあります。
ですが、そう書いたからにはそう思える何かがあった可能性もあります。
残念ながら、それ以上は深掘りできませんが。
それから、ついでにもうひとこと。
以前は、「埋もれた謎のピラミッド」のような本の翻訳も盛んにおこなわれていましたが、最近はまったく、とは言いませんが本当にないです。
代わりに出版される日本のエジプト学者の著作はどれもこれも同じ。
通史的なもの。
旅行記崩れ。
初心者向けのガイドブック。
たまに翻訳本が出ると、これが原書の一桁高い高級品に化け、五桁のものも珍しくない。
いかんですね。
ほんとうに。
誰か病的なエジプトの遺跡好きでも満足するような本を書いてくださいませ。




