表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アマルナへの扉  作者: 田丸 彬禰


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/129

ピラミッドの建造過程のシミュレーション Ⅲ

一年間に2段から3段積み上げ、建造開始から8年目の途中には20段目まで石材は積み上げられます。

つまり、この年にピラミッドの入口付近の石材の積み上げがおこなわれたことになります。

そして、今回はその入り口に関する話です。


まず、その前段階。

王の埋葬時にはピラミッドの状態はどうなっていたのでしょうか?


理想的なのは、やはり石材の積み上げはもちろん、外装石の仕上げと傾斜路の撤去も終了し、完璧に王を迎える準備ができた状態なのでしょう。

ですが、クフの治世期間のすべてを使って石材を積み上げている以上、テレビ番組で紹介されるような理想の状態になっているはずはありません。

というか、それが完了したのは、以前書いたように実際は次王のジェドエフラーの治世の最晩年ということになります。

まあ、それだけ外装石の仕上げは時間がかかるものなのでしょうし、屈折ピラミッドに残る外装石の表面を見ればそれは納得できるものでもあります。


ということで、当然ながら、クフが死去したときは、当然ピラミッドはそれを覆うように巻き付く傾斜路に埋もれていることになります。


ここで、もう一度ピラミッドの入口がどこにあるか確認してみましょう。

158段で構成されるクフのピラミッド。

その19段目に入口があります。

つまり、入り口も傾斜路を構成する瓦礫の中ということになります。

もちろん、南側の斜面のみに取りつくような直線状の傾斜路であれば、その心配はないわけですが、実際のところ、足場がほぼないような状態で、外装石の仕上げは難しいように思えます。

この辺について興味があるようなら専門家の話を聞くとよいでしょうが、私自身も日本の専門家にこの話について尋ねたことはあります。

ただし、それが彼の興味の範疇の外だったのか、単純に答えられなかったのかはわかりませんが、明確な答えは返ってきませんでした。

まあ、それはそれとして、とりあえずここでは作業する技術者の安全性と仕上げの正確さを担保させるためらせん状の傾斜路が使われたと仮定します。


では、その前提で王の埋葬の手順を想像してみましょう。


王の死後、目印をつけていた入口付近の傾斜路を崩れないように補強しながら掘り出し作業をおこない入口を確保する。


入口を土砂から守っていた蓋石を外す。

その部分だけは入り口の蓋の役割をする外装石はピラミッドに完全な形では設置していないはずです。

なぜなら、そうしてしまうと、もっとも重要な王の埋葬ができなくなるから。

ですが、蓋をしないと傾斜路の瓦礫や砂がピラミッド内部に流れ込みます。

取り外し可能な仮石を蓋代わりにしていたのかもしれません。


埋葬儀式がおこなわれる、河岸神殿、葬祭神殿から続く儀式用の新たな傾斜路を設置し王の遺体を運ぶ葬送の列を待つ。

これが必要なのはいうまでもないでしょう。


そして、葬送の儀式。

石棺をはじめとした埋葬品はすでに建造中に運び込まれているため、この儀式では王の遺体だけを運び込んだと思われます。

ただし、真っ暗なうえに1m四方の下降通路と上昇通路を通るのは大変なことだったでしょう。

しかも、大回廊には通路封鎖用の石が設置されています。

埋葬室まで王の遺体を運ぶ儀式参加者の苦労がどのようなものだったのかは想像できます。


ちなみに、大回廊入り口付近にある井戸の間ですが、岩盤をくりぬき、地下で下降通路に繋がっています。

地下の間をつくる際の空気取り入れ口という話もありますが、脱出坑ではないかと思われます。

脱出坑?

何の?


ここで更なる妄想ストーリー

埋葬儀式終了後、選び抜かれた作業員はピラミッドに残りました。

彼らの仕事。

それはもちろん上昇通路の封鎖。

大回廊の設置されていた封鎖石を押さえていたロープを切るのです。

大きな音とともに滑り出していくブロックは首尾よく上昇通路を塞ぎます。

ですが、当然彼らのその内側。

普通なら戻ることができません。

そこで使用するのが井戸の間というわけです。


ちなみに、大回廊と上昇通路の間にそれなりのスペースがあるのですが、これを埋めるために木製スロープが用意されていたと思われます。

これは大回廊から滑り落ちてくる封鎖用ブロックを確実に上場通路に送り込むという主要目的のほかに、脱出抗でもある井戸の間の入口を確保するという役目もあります。

もちろん現在はそのスロープは存在しませんが、それがあったと思われる証拠となるものを紹介しておきます。

大回廊と平行通路、上場通路の交差部分の壁面にはそれのための思われる窪み。

その角度も程よいものです。

大ピラミッドに何度も入ったという人も知っている人は多くないようなので、今度訪れた場合には是非確認を。


さて、話はだいぶそれましたが、通路封鎖をおこなった勇者たちを含めて全員の帰還を確認したところでこの日の儀式は終了。

本来設置するはずだった入口付近の外装石をはめ込んで終了。

あとは傾斜路の除去を待つだけ。


こんな感じだったのではないでしょうか。


では。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ