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アマルナへの扉  作者: 田丸 彬禰


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世界最古の……

世界最古の……。

考古学に携わる者にとってこれは喉から手が出るくらい欲しい称号のひとつのようです。

過去にそれを手に入れるために捏造までした者がいたくらいに。

今回は、その世界最古のものではありませんが、ある程度の知識を持っている人の方が驚くという話を……。


まず、エジプトのコンクリート。

最近は少しだけ変わったようですが、ほんの少し前まではコンクリートの類は古代ローマ時代に初めて現れると言われていました。

もちろん私もそれを聞き、信じていました。

ですから、アマルナのアテン大神殿敷地に唯一残る遺構である神殿基礎部分を見た時の衝撃は今でも忘れられません。

なにしろそこに残っていたのはどう見てもコンクリート。

そして、その上には石材が積み上げられるのですから当然といえば当然なのですが、その厚さも驚愕すべきものでした。

この当時の巨大建造物の基礎部分は岩盤。

そうでなければ日干し煉瓦、または石材の破片を使用していたと聞かされていたので、現在の一般家屋を建築する前におこなうような整地後にコンクリートを流すという行程とほぼ同じ行為が紀元前1400年頃におこなわれていたのは驚きです。

もちろん厳密にいえば、アマルナで使用されていたものは現在のコンクリートとは成分や製造過程は違うのでしょうが、それでもできあがっていたものはその同類と言えると思います。


ただし、それだけのものを手に入れながらコンクリートを使って建造物をつくり上げるというところまでは古代エジプト人は辿り着けませんでした。


いや。

彼らが建物本体の建築資材としてコンクリートを使用しなかったのは日干し煉瓦という非常に優れた建築資材があったからという可能性は十分にあると思われます。

日本人の感覚では建物をつくる建材になど使用できるはずがないと思わえる日干し煉瓦ですが、エジプトでは十分な建築資材だったことは、3000年以上前の日干し煉瓦製の建物が現在でも残っていることからもあきらか。

考えようによってはコンクリートよりも劣化の具合が少ないのかもしれませんので。


ついでに述べておけば、中王国時代のピラミッドの核になる部分には日干し煉瓦が使用され、その結果現在は「溶けたソフトクリーム」などと表現される無残な姿を晒しています。

ですが、だからと言って石材を使ったピラミッドよりも中王国時代のピラミッドが劣るのかといえばそうではないと思います。

なぜなら、それをつくった者にとって大事なのは質の良い石灰岩の外装石に覆われた完成した姿であって、その外装石を引きはがされた後のことまで考慮する必要などないのですから。

彼らにとって日干し煉瓦は現在の建築家におけるコンクリートのような存在であり、堅固さが担保されるのであれば安価で、しかも無尽蔵に使える建材である日干し煉瓦の使用を避ける必要などないでしょう。


アーチ構造。

こちらもその紀元はローマ時代とされているものです。

ですが、多くのピラミッドで見ることができる持ち送り式の屋根などそれに準じたものはエジプトにもありました。

その中で特質すべきもの。

まず、ギザの第3ピラミッドの埋葬室の天井。

ここは他のピラミッドのものと違い球状をしています。

さらに凄いものがルクソール西岸にあります。

ラムセス2世葬祭殿通称ラムセウム。

見どころ満載なためそこまで目が届く人はそう多くないのですが、主要建造物の背後に日干し煉瓦製の倉庫群が並んでいます。

この屋根はボルード状をしています。

つまり、最古のアーチ構造の建築物はエジプトにあったと言いたいところなのですが、これらはアーチ構造の肝である楔石がありません。

形だけです。

それでもわざわざその形にするのですから利点は十分にあったのでしょう。

特にラムセウムの倉庫については。


ということで、見学する機会があれば天井を見上げてもらいたいという願いを込めて今回はここまでにします。

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