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アマルナへの扉  作者: 田丸 彬禰


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石材の運搬

古代エジプトの謎のひとつ。

それはピラミッドを形作る石材をどのようにして採石場からピラミッドまで運んだのかということです。


現在使われているような運搬具がない古代エジプト人にそんなことができるはずがない。

すなわち、あれは未知の力を持った者たちしかつくることはできないのだ。

よって、ギザのピラミッドはその者たちがつくった遺産。

決して古代エジプト人の手によるものではない。


これが、ピラミッドは超古代文明の遺産と主張する方々の話となります。

実をいえば、この「現代の運搬具を持たない古代エジプト人があのとんでもなく大きく重い石を運び上げるどころか動かすことさえ不可能だ」というその主張は、ギザのピラミッド群を間近で見ると、なるほどと納得してしまう。

ギザの三大ピラミッドはそれほどのものなのです。


ところが、日本に残るいくつかの遺構を眺め、それに関する資料を見ると、「そうでもないな」と思うことができます。

ここで取り上げるのは、奈良の「石舞台古墳」と、大阪城の石垣に組み込まれた「蛸石」。


まず大阪城の「蛸石」ですが、それはクフのピラミッドに使われたどの石よりも大きく重いです。

そして、その石はなんと瀬戸内海に浮かぶ島から切り出されたもの。

つまり、百トンを超える「蛸石」は船で運ばれ、陸揚げされたあとは地上を現在地まで動かしたことになります。


それから、もうひとつの「石舞台古墳」。

これは飛鳥時代の墳墓です。

そして、あまり話題になりませんが、この遺跡に使用された石材もあきらかに他所から切り出され運ばれてきたもの。

同時代の遺跡に残る痕跡や遺物から考えれば、地面に木材を並べ、石材を載せた橇を引くという運搬方法をとっていたのは間違いないでしょう。


それはすなわち、古代エジプトで使用された方法と同じものです。

ついでに言っておけば、海と川という違いはありますが、古代エジプトでも重い石材を船で運んでおり、これは新王国時代のハトシェプスト女王の葬祭殿に百トンを超える巨大オベリスクを運搬した様子をレリーフとして残しています。

さらにいえば、エジプト南部のアスワンでは同時代のものと思われる千トンを超えるとされる特大オベリスクを切り出そうとした痕跡が残されていますが、これはこの重さのものも船で運べることを示してます。

……切り出す作業だけでもとんでもなく時間と労力と資源が必要であり、それだけの手間をかけて「ただ切り出したかった」という理由だけであれをおこなうほど古代エジプト人も暇ではありませんでしたから。


ちなみに、同じ木材を並べ橇を使って石材を運搬した両者ですが、それを少しだけ注意して比較するとおもしろい差異が見られます。

古代エジプトでは木材を線路の枕木のように並べ、その上を橇に乗せた石材を動かしていたのに対し、古代日本ではまず線路上に木材を置き、その上に枕木状に木材を並べ、それから橇を動かすという方法を採用していたようです。

これが進化なのか、乾いた砂地と湿った土地という土壌のせいなのかは定かではありませんが。


そして、時代はかなり進み、江戸時代の石垣に使われた石材をどうやって運搬し、そして高所まで持ち上げたのかといえば……。

多くの資料が残るその方法は飛鳥時代とほとんど変わらず。

それはすなわち、それと同時代の「蛸石」も同じ方法で現在地まで運搬されたのは間違いないでしょう。

ということは、「蛸石」も古代エジプトと同じ方法で運搬されていた。

イコール、古代エジプト人が重い石材を運ぶことは可能だったということになるのではないでしょうか。


このような話をすると、超古代文明を信じる方々は必ずといっていいほどこう言います。


それは間接的なものであり、古代エジプト人がピラミッドの石を積み上げた証拠にはならない。


ついでですから、ここでその反論も書いておきましょう。


では、相手に対してそこまでの物的証拠を求めるのなら、あなたがたの言う「ピラミッドを未知の力でつくった」ことを示す具体的な、または誰も納得できる物的証拠はどこにあるのですか?


超古代文明の知られざる力や宇宙人の力によってピラミッドの石材は運び上げられたという説は、ロマンがあってフィクションとしては非常に面白いものなのですが、こうやって少し調べるだけでも簡単に否定されてしまうものでもあります。


つまり、少し強めの言葉で表現すれば、「文明の欠片さえ持たない古代エジプト人が船で重い石材を運んだり、積み上げられることなどできるはずがない」と主張している方々は、古代エジプト人の多くの経験に基づいた知恵と技術を侮辱しているだけではなく、自分の無知を世間に公表しているようなものといえるでしょう。


それにもかかわらずエジプト学者がニューエイジの方々の主張に正面から反論しないのは、時間の無駄と思っているだけはなく、そのロマンを消さないようにするチョットした気遣い。

……と思いたい。


ということで、今回はここまで。

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