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アマルナへの扉  作者: 田丸 彬禰


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日干しレンガを使用したピラミッドは退化したと言えるのか?

エジプトのピラミッドと聞いて想像するのは?

そう尋ねられて挙げるのはギザの三大ピラミッド。

そうでなくても、階段ピラミッドや屈折ピラミッドなど古王国時代につくられたピラミッドであって、中王国時代のピラミッドを挙げる方はほとんどいないでしょう。

当然といえば当然です。

なにしろ見栄えが悪い。

ギザのピラミッド軍が巨大な石材を積み上げられているのに対し、中王国時代のピラミッドの核の多くは日干し煉瓦。

ですから、質の良い石灰岩が使用されていた外装石が剥ぎ取られると、風や砂によって形が崩れ、多くは砂に戻り、残ったものも「溶けたソフトクリーム」と評される無残な姿を晒しているわけです。


そして、これを見て多くの人はこう思うことでしょう。


古王国時代に比べて中王国時代のピラミッドは退化した。


ですが、これは本当に正しいのでしょうか?


これを現代に置き換えて考えてみたらよりわかりやすいかもしれません。

たとえば、木材。

現在の木製品の多くは集成材と呼ばれるものが使用されます。

それどころか、木材に似せた別の材質が使われています。

たとえば、石材。

大きな石材の代わりに、多くの場合コンクリートやレンガが使用されます。


ですが、これらの多くは耐久力という点では本物より劣ることが多いです。


では、それを使用した建築物が退化したものと呼ぶかといえば、そうは呼ばないでしょう。

ピラミッド建造に日干しレンガを使用した中王国時代の王たちも同じ。

入手しやすく、さらに安価である日干しレンガを使用して巨大ピラミッドが建造できる技術を手に入れたから、核に日干し煉瓦を使用した。

そういうことです。


ついでにいえば、中王国時代のピラミッドの哀れな姿はあくまで外装石が失われた結果です。

そして、建造した王にとって重要なのは自身が埋葬されるときにピラミッドが聳えていること。

それから、彼らが考える永遠とは子孫がピラミッドを守ることを前提にしており、外装石が失われることなど想定されていません。

想定外の事態の結果で判断するのはやや思慮が足りないといえるでしょう。

さらにいえば、日干し煉瓦製のピラミッドは不格好ながらとりあえず残っていますが、現代の日干し煉瓦であるコンクリート製の建物は三千年後に残っているのか?

そう言いたくなるテーマでした。


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