愚者の大地
「巫女様が仰った通り、この北海道に外部からの愚人どもが入り込んだようだな。こやつらをどうするか」
殺幌コタンの雑居ビル内の一室。そこでは何人かの男たちが円卓に座っている。まとめ役を務めている丸刈りの男が議題を提示した。
長髪の男がまず最初に発言する。
「もちろん我が部としては部員として入部させ、一生部活動をさせたいと思っていますとも」
対して、丸刈りの男は
「巫女様の予言では、こやつらは野球部と剣道部を返り討ちにするらしい。洗脳して部員にするとしても一筋縄ではいくまい。何か奥の手はあるのか、サッカー部?」
と長髪の男に問いを投げる。
「もちろんですとも! ブラジル仕込みのキックでノックアウトですよ」
その答えに返事をせず、丸刈りの男は禿頭の中年に男に問いかけた。
「空手部。そちらは何か考えがあるのか?」
「ぐはは。我が北斗拳法で彼奴等を粉砕するまで」
頭の悪そうな男だと思ったのか、丸刈りの男はそれ以上何も言わない。
「まあいい。野球部と剣道部がいないが、ブカツコモン会議はこれで終了とする。各ブカツコモンは部員の確保と指導に当たってもらいたい。北海道に永遠の部活動を!」
「え? マジかよ」
ジンは頭から自分の信じてきた常識を吹き飛ばされたような感覚に陥った。
「はい、本当です」
家の中は強力なストーブの吐き出す熱で暖かいが、ジンにとっては頭から冷や水をぶっかけられたようだった。
士頭内コタンを案内している青年の表情から、それは冗談ではないとすぐに分かった。
「コタンの住人は文字が書けません。計算もできません。ついでに言えば、文字も読めません。ああ、書けなければ読めないのは当たり前ですか」
青年は端正な顔を少しだけ歪めた。
開いた口がふさがらない。
「ええと……この人たち、ちゃんと学校通ってた……んだよな?」
「学校? 何ですかそれは?」
青年の返事には茫然とするしかなかった。
「するとアレか、俺たちは会話の成立しない宇宙人相手に殺しや取引をしろと? でも、アンタは普通に会話や意思疎通が出来ているじゃねえか?」
「私は北海道の人間ではないものですから。北海道には教育機関が存在しません。あるとすれば部活動だけです」
「食料とか電化製品とかどうするんだよ?」
「本州から拉致してきた者を奴隷として働かせるか、となりの青森まで略奪しに行きます」
ヤクザ顔負けの生業に呆れつつも、ジンはこの奇妙な世界を理解しようとした。文字も書けず、計算も出来ず、ただただ部活動にのめり込む。
ジンや葉村からすれば、それは想像しがたい世界だ。ともあれ、任務を達成するには、その文明国家とは言い難い世界を理解する必要がある
「その土人文明は一体どこから始まったのか、が気になるところだな?」
ジンは青年に探りを入れる。
「その質問の答えが貴方がたにとって決して良い結果をもたらさないとしても、聴きたいですか?」
言葉の中に刃を潜ませた青年は剣士の目になった。
「北海道は禁忌の楽園です。あらゆる意味で」
青年はジンの瞳を見つめてから
「この地は、既に呪われているのです。一人の人間によって」
と静かに切り出した。
「皆さんは知っていますか? アカガネハルキという名前をした人間を。いや、人の形をした悪魔を」
こんばんは、星見です。
寒さが日ごとに厳しくなってきました。
あと1か月ちょいで里帰りでしょうか。
今年もあと少し。
色々な意味で変化のない毎日は送りたくないと思っている私です。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……