幕間:運命の邂逅
Interlude in
刀を振る。刀を振る。刀を振る。
何度その動作を繰り返したか分からない。無限にも思えるその時間を彼は修練に費やしてきた。それは、誰かから強制されたからではない。自らの意思が、刀を振るえと彼自身に語り掛けるのだ。
どこで生まれたのかも分からないし、どうやって北の大地に降り立ったのかも分からない。
本能に刻み込まれたことといえば、手にした刀を振るうことだけだ。故に、彼には刀以外には何も興味を持たず、ただ生きてきた。刀の力があれば、生きる分には困らない。
獣を狩り、その肉を食らう。野草を摘み、それを糧とする。
そうやって彼は、この永久凍土の地を生き抜いてきた。
十六歳を超えた時から、彼はたまに夢を見るようになった。見知らぬ顔だが、どこか懐かしい雰囲気をもった青年が語り掛けてくる夢だ。
その青年はさらに告げる。
刀を振るえ。その力を示せ。そして、この世界の真実を見極めろ、と。
この世界の真実とは何だろう?
青年はそれからたまに己自身に問いかけるようになった。とはいっても、それは剣の修練のついでのようなもので、相も変わらず刀を振り続ける生活だった。
ただ、纏わりついてくる雑念は降り積もる雪のように増え続けた。
それは彼にとって呪いに近い。
刀のみを頼りに生きてきた彼には、その雑念を振り払う術は一つしかなかった。すなわち、さらに修練を積むことだ。
彼は今まで以上に修練を積んだ。剣を振り、獣を斬った。けれども、どれだけの鍛錬を積もうとも、呪いは容赦なく彼を蝕んだ。
あの青年は誰だ?
人に興味など持たなかった彼が初めて興味を抱いたのは夢に出て、己に語り掛けてくる青年だった。
何もかもに絶望したかのような眼差しで、何もかもを嘲るかのように微笑み、そしておそらくは破滅を願う男。
彼の目に青年はそう映った。
思考をする間も彼は剣の修練を止めることはない。これはおそらく彼が死ぬまで続くのだろう。
彼がいつまでも続くと思った日常はある日突如崩れた。
「やあ、初めまして。僕の名前は」
その青年は彼の前に颯爽と現れたからだ。
「アカガネハルキという」
Interlude out
こんばんは、星見です。
やはり色々あって遅筆になっていました。
ここで再登場、アカガネハルキと名乗る男。
本物か? それとも?
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……