戦争の大地
「ブカツコモンの侵攻だ! 逃げろ!」
コタンの住人たちは警報を聴いて逃げ惑う。錯乱しながらあちこちを走り回る住民たちを見て、ブカツコモンの一人は嘲笑った。
「部員ども! あそこで走り回る家畜を一匹残らず屠殺するのだ! 奴らは部活から逃げた軟弱者だ! 生きている価値はない! 我ら絶対部活戦線が奴らに引導を渡してやれィ!」
「ファイッ!」
部員と呼ばれた男たちは金属バットや手榴弾を手に、次々と手慣れた様子で住民たちを捕まえ、殴殺あるいは爆殺していく。中には本当に楽しそうにバットを振るい、住民たちの頭蓋骨が壊れる音を愉しむ者もいた。
「ははははは! 見よ! これが部活動に入らなかった愚か者の末路だ! 我が野球部こそが最強にして至高!」
「その辺にしとけ、猿山のボス」
心底呆れた様子でブカツコモンと呼ばれた中年の男の前に歩み寄ったのはジンだった。
「野球ってのはバットで他人を殴り殺すスポーツだったとは初めて知ったぜ。そんなゲススポーツの顧問なんだから、相当な悪党なんだろ? すぐに楽にしてやる」
「貴様ッ! 新入部員か?」
「人の話を聞いていたのか、ボス猿。知能指数がミジンコ以下じゃ、会話はできませんってか? よく聞け、ボス猿。俺はテメエを殺しに来た刺客だ。ごちゃごちゃ言ってねえで、そこで死ね」
中年の男は野性味たっぷりの顔を歪ませる。
「おのれッ! 貴様は私が殺幌コタン統括者、炎の投球王ボルトロス=スヴェリヴィーノ=サンスーシと知って言っているのか?」
「名前が長い。ボス猿でいい。それから、そんな脳筋バカは知らん」
ジンが大剣を振り上げた時、一本の刀がジンの背に向かって投げつけられた。
「おいおい、横槍かよ。無粋だぜ?」
それを容易く打ち払ったジンは後ろに立つ坊主頭の中年男に向き直る。
「我が飛刀を打ち払うとは見事! 剣道部に入れ。さすれば、全宇宙を制覇することも夢ではないぞ!」
「クスリでもキめてんのか、クソ坊主。遺言吐きたきゃ、病院でやれ」
「威勢がいいな、若いの。私を剣王と知っての無礼でなければ、許してやろう」
ジンは坊主頭の男の腰にある刀を観察する。どうやら晶具の類ではなさそうだ、とすぐに結論付けた。
「待て、剣道部の。その若いのは我が野球部が捕らえて鍛えてやろうと思っていたところだ。うちのリリーフにするために加えるのだ!」
「ほう、炎の投球王か。貴様とここで一戦交えても良いのだぞ。士頭内コタンは元々我ら剣道部の拠点にしようと思っていたところだ。遅かれ早かれ野球部とは戦うことになる。剣を極めし者の名に懸けて貴様をここで……」
「黙れ、山猿ども。勝手に話を進めんじゃねえ。俺はテメエらを殺しに来たとさっき言ったばかりだ。三分前のことくらい覚えとけよ、脳筋野郎。そんなんだから足元をすくわれんだよ、間抜け」
その言葉が終わると同時に爆炎が白い大地を駆け抜ける。野球部のブカツコモンは多数の部員とともにそれに吹き飛ばされた。
「さて、文字通り“真剣”勝負と行こうか、剣王さんよ」
殺意に溢れるその瞳は坊主頭の男を捉える。追い詰めれば、晶具を出すかもしれない。
「よかろう。我こそ剣を極めし者……我が絶技、その身に刻み、我が軍門に下るがよい!」
男は腰から太刀を抜いた。
こんばんは、星見です。
地震に台風、そして地元に戻るための転職活動……。
色んなことがありすぎた九月が終わり、ほっとしてたらこげな時間が経ってました。
ネガティブになると筆が乗るので、今は絶好の執筆日和なのではないかと思っています。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……