表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚ろな境界【哭冷凍土戦線】  作者: 星見流人
5/44

絶対部活戦線Ⅱ

 とりあえずはキタク部の根城である、陽鷹ひだか管内の中心集落、士頭内しずないコタンを目指せ。

 神崎の指示に従って北海道上陸を果たしたジンと葉村はスマホのナビに従って、雪道を歩いていく。白く彩られた海岸線沿いに延々と歩くと、しばらくして目的地を発見することができた。

「あなた方は竜胆会の方々ですか?」

 集落に入ると、人のよさそうな青年がジンたちに話しかけてくる。彼の長い黒髪は海風で揺れている。

「そうだ。あんたたちは依頼主のキタク部で間違いないな?」

 彼は首肯した。

 とりあえずは情報収集をすること。葉村は道中、船の中で嫌というほどジンにそう促していた。

「で、現状を教えてくれないか? 敵がどこにいて、どういう奴らで、何を目的にしてここを狙っているのか」

「話が早くて助かりますよ。でも、ここは冷える。暖かい家の中で話しませんか?」

 案内された直方体の建物に案内されたジンたちは周りにトラップがないかどうか注意深く観察しながら、その灰色のコンクリートで作られた建物に入った。そこに入ると驚くほど暖かい。防寒着を装備しているせいか、外気温との差に少し汗ばむほどだ。

「どうです? 北海道の家は。意外なことに暖かいでしょう。優れた断熱材が住宅に使われているからなんです。これでストーブに使うガスや電気を節約できる、というわけですよ」

 二人に椅子をすすめた青年の端正な顔は憂鬱そうだった。

「で、その不景気なツラ見て分かるが、かなり深刻なようだな。俺たちはその対処で呼ばれた。遠慮なく使えよ」

「こら、ジン君!」

 ジンと頭をはたくと葉村は

「すみません、失礼な物言いで。私は竜胆会の葉村綾。こちらの無礼な男は黒崎ジンと申します。用件を伺いたいのですが」

 と頭を下げつつ、青年に話を促した。隣では、ジン君はやめろよというぼやき声が聞こえるが、葉村は表情ひとつ崩さず、青年の話を待つ。

「はい。もう既に組長さんにはお話ししていますが、野球部やサッカー部をはじめとする部活動たちの撃退が皆さんに依頼したいことです」

 沈んだ声で話す青年の顔には悔しさが滲み出ている。

「我々の集落、士頭内コタンでは食料や資源を彼らに差し出すことで彼らの侵攻を留めていました。ですが、もうコタンの中には集落の人間を食べさせていくだけの蓄えしか残っていないのです」

「それ、一番やっちゃいけないことだぜ、アンタ」

 ジンが呆れ顔で突っ込む。

「野盗に一度膝を折ったら、野盗は骨までアンタたちをしゃぶりつくす。そんなことアンタなら分かりそうなもんだけどな」

「これは先代のコタンの長の決定なのです」

「で、そのお偉い村長さんはどこよ?」

「殺されました」

 青年は着物の上に羽織った毛皮のコートを脱ぐ。

「これが村長の……叔父の遺品です。叔父は絶対部活戦線に殺されました。食料と資源を提供できなかった、ということで」

「へえ……アンタの力っつーか、ここの武力があれば何とかなりそうだけどな」

 青年は一瞬、腰に差している刀を見てから黙る。どうやら地雷を踏んだということを葉村は悟った。

「絶対部活戦線、というのは何者ですか? 都市暴走族か何かでしょうか?」

 葉村の問いで気を持ち直したのか、青年はその瞳に光を宿している。

「部活動の連合体とでも言いましょうか。現在の北海道を実質的に支配している連中です」

「はぁ? 部活動が支配とか、北海道はいつから動物園になったんだ?」

「ちょっと黙ってて」

 葉村はジンを睨み付ける。最近のジンはこの葉村が少し苦手だ。

「部活動が支配しているとおっしゃいましたね。では、その部活動をまとめている人間がいるはずですが、その人間はご存知ですか? 対象を暗殺すれば、とりあえずはその部活動やらの侵攻を一時的に止めることはできそうですけど」

 極道らしい物騒な言葉が飛び出したが、青年は驚く気配を見せない。元々、そういう依頼をしているからだろうかと思ったが、葉村は彼の観察よりも現状把握を優先した。

「ブカツコモンと呼ばれる連中が各地域を支配しています。例えば、威死狩いしかり管内の中心都市、殺幌さっぽろコタンは野球部が支配しています。主にここに侵攻しているのは野球部ですが、その他の部活動も虎視眈々と狙っている状況です」

「話が見えねえな。そのブカツコモンってのは何者だ? ただのバカなのか?」

「管内を支配する……そうですね、一国の王と考えていただければいいかと思います。彼らはロシア帝国北海道総督府から自治権を与えられています。生殺与奪、何でもありです」

「なるほど、とっておきのろくでなしの集団と理解すればいいわけだな?」

 獲物を見つけた獣のようにジンは獰猛に笑う。

「じゃあ、話は簡単だ」

 その時だった。警報が鳴り始めたのは。

おはようございます、星見です。

続きを書いたはいいものの長くなってしまいました。

今週は土曜日まで忙しいのですが、何とか乗り切りたいと思います。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ