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虚ろな境界【哭冷凍土戦線】  作者: 星見流人
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エピローグ:風にのって

 雪の解けた北海道で生き残ったブカツコモンたちは食料を求めて彷徨っていた。もう部員たちはいない。全員が餓死するか、自殺するかし、死臭がそこかしこに立ち込めている。

「誰か……我に飯を……与えよ。名誉あるブカツコモン様の世話ができることを……」

 ブカツコモンたちは生きる術を持たなかった。すべての世話を部員たちに押し付け、スポーツに没頭するだけで生きてきた人間たちだった。

「究極のスポーツを極めるまでは……」

 空腹から倒れ、這いずる彼の前に彼女は現れた。

 天使と見紛うほどの美麗な微笑みを湛えて、慈愛に満ちた言葉をかける。

「ブカツコモンの皆様、ご苦労様でした。あなた方のおかげで、北海道で私が為すべきことを完遂することができました。心からのお礼を申し上げます」

 学生服に身を包んだ彼女は両手でスカートをつまみ、優雅に一礼した。

「おお、巫女様……飯を……」

「そうですね。お礼がまだでしたね」

 彼女は手を差し出す。

「安らかな最期おわりを」

 彼女がブカツコモンの額に触れると、彼の心臓は鼓動を止めた。ごとりと地面に倒れ伏す姿を一瞥してから彼女は再び微笑んだ。

「あなたも少し混じってきたのですね。その剣がどこまで研ぎ澄まされるのか、楽しみにしています」

 彼女はそこにはいない少年に向けて言葉を送る。きっと届くだろう、きっといつか分かるだろうと思いながら、太陽の下で両手を広げた。

「もし、神様がいるのなら……私の願いが叶うのなら、もう一度だけ夢を見させて。幻でもいいから」

 陽光を浴びて祈りを捧げる姿は聖女と呼ぶに相応しい、と彼女を知らない男は言うだろう。

 暖かな光が大地を照らす。

 清らかな水は大地を流れる。

 誰もいなくなったその場所で、彼女は一人祈り続けている。

 きっと誰に理解されることもなく、きっと誰にも理解することのできない、長年彼女が願い続けてきたもの。

「次の地は横浜……“星を撃ち落とす日”にまたお会いしましょう。その日まであなたが無事であれば……ですが」

 竜胆会の敵は彼女だけではないということは彼女が一番よく知っている。

「神に祈る、なんてことはできないくらいに私は穢れていますが、それでも祈りましょう。どうか、数多の困難を乗り越え、“星を撃ち落とす日”を共に迎えられることを。愛しい、愛しい、私の……」

 風にのって、最後の言葉は消えていく。

 すぐに優しい歌声が聞こえてきた。その声は眩暈がするほど青い空に捧げられた。

こんばんは、星見です。

4年の月日を経て(この分量なら1年も本来はかからないはずなんですが)本作は完結です。

北海道編は自分の納得のいく出来ではありませんが、これはすべて自分の責任です。シンプルイズベストをコンセプトにしたのが裏目に出たようです。


”星を撃ち落とす日”という言葉が出てきて、続編の構想もあるのですが、このシリーズの続編はしばらく書きません。次回作はすでに下書きができている、自身初の異世界モノです。女性が主人公という自身初という初めて尽くしです。(女性主人公のものを先に出すか、別のものを先に出すかは決めかねていますが)


ともあれ、本作は私が下手な手で、手塩にかけて育てたモノです。

少しでも、読者の皆様に楽しい、ワクワクする、ハラハラする時間を提供できたのなら、作者冥利に尽きます。次は別のベクトルで”面白い”作品を作り出すことができるよう、楽しみながら描きます。


4年もの長い間お付き合いいただき、本当にありがとうございました。

詳しくはあとがきにて。


ではまた次回作でお会いできることを祈りつつ……

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