再び神戸にて
「で、仕事の成果がこの刀とコイツってわけか」
事務所のソファにふんぞり返った神崎が青崎赤馬を見上げつつ、報告書をテーブルに放り投げた。
「上々やないか。こっちとしちゃ、戦力も欲しかったところやしなあ。その戦力が北海道の剣豪となりゃ申し分ないわ」
ジンと同様に神戸に連れてこられ、なぜか竜胆会の事務所にまで連れ込まれた赤馬は葉村に助けを求める視線を送るが、悉くスルーされた。
「はい、ありがとうございます、おじ様。報告書にある通り、異常現象は北海道でも確認されました。神戸の事変で確認された花も、北海道で確認できました。この二つの事件は繋がっている、と結論付けるのが適当かと思います」
「さすがやな、葉村ちゃん。ワシの予想も大体同じや。鍵となるんは、この異変を起こした黒幕の女……こいつの目的がいまいち読めへん。この国を転覆させようと思っているようにも思えんし……何らかの実験をしとる可能性がある」
「はい、その可能性が高いと思います。彼女は北海道の絶対部活戦線を積極的に支援しようとせず、切り捨てています。そのことからも、実験の要素が高いかと」
「それに、晶具持ちやったな。その女は」
「はい」
二人の会話に入ることができない少年と青年は突っ立っているしかできない。
「あの女子、相当に頭がキレるようだな」
「ああ、うちの参謀みたいなもんだ。実際、あいつが来てから組の仕事が大分しやすくなったって話だぜ」
「……」
葉村を観察する赤馬を見て、ジンは
「あいつはお前の手に負えるタマじゃねえぞ……外見はいいけどな」
と耳打ちした。
「消し炭にされたくなかったら、少しはその口を慎め。あの女、こっちの会話にも気を配っているぞ」
「マジかよ……」
やりかねねえからな、とぼやいて口を閉じる。
葉村は少しため息をついてから
「黒幕は間違いなく、アカガネハルキの子どもたちです。つまり……」
と自分の意見を述べ始めた。
「私たちの兄弟、です」
「アカガネハルキ……かつての大量殺戮事件でこの国を滅ぼそうと画策した人物やったな。データは残っとるが、奴の本当の狙いが何か、よく分からへんな」
「アカガネハルキは人間が憎かったのだと思います」
「なぜそう思うた?」
「私たちはアカガネハルキの子どもたちですから」
何よりの答えだった。
彼らはアカガネハルキのDNAと意思を受け継ぐ子どもたち。人類を殺戮する宿業を与えられた人造人間たち。
「私たちもいつかはアカガネハルキのように、人類を殺し尽くすようになるのだと思います。そのトリガーが」
「晶具……しか考えられへんな」
神崎は視線を床に落とした。
「同意見です。この晶具、代償なしに使うことができるとは思えません。きっと何かしらの代償があってしかるべき……すでにジンくんの晶具が変貌しています。いずれ精神を侵食するでしょう。そうなればきっと……見境なく人を殺す悪魔に成り果てる」
「それがアカガネハルキが晶具を遺した理由、やと?」
「あくまで推測にすぎません。そのトリガーが入った人間が、黒幕だとすると……辻褄が合うような気がするんです」
赤馬は二人の会話に割って入る。
「その女の言うことは正しい。アカガネハルキの子どもの一人である俺が保証する。兄が突き止めた事実も含めての情報提供と竜胆会への助成。それが貴様たちの条件だな?」
「そうなる。……断った場合は消す」
静かな威圧感を赤馬にぶつけながら、神崎が返答した。
「極道だからな、当然の返事だな。いいだろう、すでに堕ちた身だ。俺の力、有効に使え。だが、俺からも条件がある。具体的には用意してもらいたいものがある」
「なんや? ワシらにできるモンやったら用意するで」
「修行用の道場が欲しい。俺専用の、だ」
こんばんは、星見です。
2022年ももうすぐ終わりですね。私としては大きな収穫のあった1年でした。
2023年は転換の年になるのかもしれません(人生的に)。
さて、このお話もあと一話で御仕舞です。
今度こそ。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




