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虚ろな境界【哭冷凍土戦線】  作者: 星見流人
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終戦の日

 凍っていた感情が解け始めた。怒りの炎が胸の奥で燃え上がる。

 自分をまともな人間とすら認識していなかった青崎赤馬は刀を支えに立ち上がった。兄が技を見せるのはこれが初めてで、間違いなくこれで最後だ。

 時に、行動は言葉よりも強いメッセージとなる。

「……見た」

 兄は絶対に模倣しろ、などとは伝えようとしていない。彼はそう感じ取った。

「……得た」

 兄に速度で劣る自分が為せることは。

「ブカツコモンの仇だ! 全員構え!」

 空手部の部員はマシンガンを構える。格闘技を使うつもりは一切ないらしい。

「あの死にぞこないをミンチにしてやれええええッ!」

「キタク部のクズどもはハチの巣だべええええええッ!」

「殺すのは男だけだ! 女は持ち帰って我らの種を植え付けるッ!」

 赤馬はその下卑た声を聞き流し、駆けた。

 縮地には遠く及ばぬ速度。

 彼の武器は足ではなく、その剣閃。

「凍りつけ」

 蜘蛛の糸のように空間に張り巡らせた斬撃は人も銃弾も分け隔てなく、凍らせ、砕き散らしていく。血は流れない。血でさえも凍っている。

 これが彼の“縮地”。

 これが兄からの贈り物。

「嗚呼……本当に、伝わった……」

 瞼を閉じて、青崎は力なく呟く。

 顔は血の気を失い、命の息吹は少しずつ消えていく。

「これから、は……その足で、歩いていけ……お前はきっと、私より強くなる……」

「黙れよ……」

 横たわる兄を見下ろした赤馬から涙が零れ落ちた。

「剣の頂に……至ること、を願って……いるぞ」

 そんなことはもうどうでもよかった。競い合うことのできる相手がいなくなったことの方が大きかった。

「勝ち逃げかよ」

 目指してきた者を超える機会は永遠に失われた。

「いいや……」

 力を振り絞って言葉を返すと、青崎は静かに息を引き取った。まるで偉業を果たした英雄のように満足して眠りについた。

 魂を震わせるような叫びが木霊する。

 それは一人の男が終戦を迎えた日になった。

こんばんは、星見です。

もうそろそろ終わります、と言い続けてもう何か月経ったでしょうか。本当にそろそろ終わりです。年内には……私のメンタルがハイになれば、ですが……


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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