幕間:三つのS
Interlude in
「ヴェクター=オルブライト統制官、君は国を亡ぼすにはどうすれば効率的か、分かるかね?」
穏やかそうな風貌の男は若い男に尋ねた。
「そうですね。やはり武力による制圧が効率的でしょうか」
「うむ、優等生の君らしい答えだね。だが、私はノーだと思う」
「なぜでしょう? これほど合理的かつ単純な解はないと思いますが」
「君、それだと犠牲が出るだろう。我が軍の犠牲を極力減らし、国を潰す方法は他にもあるのだよ」
「というと?」
「君は“三つのエス”を聞いたことがないかね? 人間を堕落させる三つの道具だよ」
「レザノフ=エレヴァスキー総督、それは存じておりません」
「意外だね。博識な君のことだから知っているものだと思っていたよ」
「申し訳ありません。不勉強でした」
「いや、構わない。君はまだ若いのだ。これから追々知って行けば良い。さて、“三つのエス”というのはセックス、スポーツ、スクリーンのことだ」
「エレヴァスキー総督が北海道を統治されたのはそのため、ですか?」
「その通り! さすが君は飲み込みが早い。北海道にはこの三つが揃っている。ススキノや各地方都市での性産業、もはや狂っているとしか思えないスポーツ熱、そしてスマホ・ゲーム中毒。北海道は、愚民を育むための土壌が整っているといえる。故に、我がロシア帝国は北海道の統治を選んだのだ。ここを亡国にすることが出来るかどうか……まさにここは巨大な実験場と言えるだろう」
「そこまでお考えとは、恐れ入ります」
「幸いにもここには愚民が多い。さらに愚民化政策を推し進めれば、さらに我々にとって有益な状況になるだろう。オルブライト統制官、君はしばらく様子を見ていたまえ。今、進めている愚民化政策の行き着く先を、ね」
Interlude out
こんばんは、星見です。
今回の北海道地震、偶然にも私自身が被災しました。
食料がなく、電気もなく、行く当てもなく……。
何とか生きて家に戻れましたので、こうして執筆している次第です。
でかい地震の被災はこれで人生二度目になりますが、慣れません。
一応少年時代の阪神・淡路大震災のサバイバル経験が北海道で活きたわけですが。
さて、何か意味深なタイトルですね。三つのS。
まだまだ序盤です。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……