遺したものは
「ヒャハハハハッ! 我がサッカー部を侮ったな、下郎ッ!」
狙撃銃を構えた凶悪な人相の男たちは嘲笑いながら二人の剣士に近づいてきた。
「絶対部活戦線はサッカー部の優勝で決まりだッ! 貴様らキタク部の残党どもはここで死ね!」
サッカー部員たちは一斉に狙撃銃を構える。
ブカツコモンが発射命令を出そうと思ったその刹那
「死ぬのはテメエだ、このゲス野郎!」
巨大な爆炎がサッカー部員たちを飲み込んだ。青い焔に抱かれた部員たちは踊り狂うが
「バカ者ッ! 気合いだッ! ガッツだッ! その程度の炎、ブラジリアントルネードで消し飛ばすのだ!」
とブカツコモンは激励か叱咤か分からない言葉を飛ばすことしかできない。
「テメエの脳みそはスポンジでできてんのかよ、そんなんで消せたら苦労しねえよ」
ジンの抜いた大剣はその透明な刀身でブカツコモンの両足を切断した。
絶叫しながら地面を転がるブカツコモンを冷たく見下ろし
「立ってみろよ、根性とやらで。気合いとやらで俺を殺してみせろよ。テメエ、ブカツコモンなんだろ」
「助けて……助けてくれ……! 俺が悪かった! 俺が間違っていた!」
「つまんねえな……オイ、テメエは刀構えた奴の前で命乞いすんのか? 数えきれねえくらい殺してきたくせによ」
「もうよしなさい。こんな人とも猿とも分からないような愚物に付き合っているほど私たちは暇じゃないでしょ」
ジンと合流した葉村は撃たれた青崎の方を見る。
「早く処置しないと」
「仕方ねえな」
二人は青崎に駆け寄った。
「……二人か、致命傷だよ」
力なく青崎は言う。彼がこれほど悔しそうに表情を歪めるのは初めてだった。
「治療はしなくて構わない……弟を、赤馬を頼む。どうか……」
銃弾は正確に心臓を破壊していた。それでもこれだけ呼吸ができているのは、彼の肉体がアカガネハルキによって作られたからだろう。
「少し早いが報酬だ……持っていくといい」
青崎は自らの愛刀を差し出した。
「気付いてたのかよ……」
「最初からね」
食えねえ野郎だな、と悔しそうに呟いてジンは刀を受け取る。
「分かった。アンタの意思と遺志は受け継ぐ」
「フハハハハ! 茶番は終わったか、キタク部の残党ども! 我らは空手部! 我はブカツコモンのガガーリン=デコガラポンド=スパークリング! 拳を極めた者である! いざいざ、裁きの拳を受けよ!」
厄介なところで来やがったなと、ジンは胸の内で毒づいた。一人は瀕死、一人は動けず、ブカツコモンたちはこの二人を狙うだろうことは明らかだ。
「葉村、二人の護衛は頼むわ。俺はこの筋肉野郎どもを……潰す」
「いや、私を護衛する意味はない……時間も、ない……ならばせめて……」
赤黒い血を流しながら、青崎は駆けた。
「よく、見ておけ……これが……」
縮地だ、とは言わない。技を模倣してほしいわけではないからだ。
「ギャハハハ! 我が北海爆殺拳の前に死にぞこないが挑むか。愚かなッ!」
空手部のブカツコモンは手榴弾を次々に投げる。
あたりは爆炎に包まれた。何の感情もない、ただの命を奪うだけの爆炎。それに身を焼かれながらも青崎は駆けた。
この技を伝授できる最初で最後の機会。
弟ならばきっと一度で十分。
彼は信じていた。
「ゲハハハ……ん? 死んでいない、だと……」
手榴弾の爆発をかいくぐって、青崎は全力で拳を突き出す。
「最後に教えてやる……」
息も絶え絶えに、しかし力強く彼は言う。
「極めるとは……こういうことだ!」
命を振り絞って放たれた正拳はブカツコモンの心臓を貫いていた。
こんばんは、星見です。
そろそろ夏季休暇も終わりです。ああ、働きたくないなんてことは思いませんが、創作活動が捗る時期になってきました。お盆が終わり、涼しくなってくれることを願うばかりです。
さて、青崎が遺したものはどう彼らに受け継がれていくのでしょうか。
そろそろ終わりです、ほんとに。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




