交錯する秘剣【破】
二人の剣豪の打ち合いは続いた。
冬の終わりを祝福するように、空からは太陽が大地を照らしている。優しい光は少しずつ雪を溶かし、恵みの水は大地を流れる。
時は再び動き出した。
彼らは打ち合いながらもそう感じ取っている。
打ち合うこと数百合。やはり決着はつかない。
それでも、二人の息は整っていた。
「そりゃそうだよな……これで終われるくらいなら」
「そうだ。こんな場所まで来ていない」
二人は笑みを浮かべている。
最期の相手が好敵手であることに喜びを感じているのだ。それが剣豪という生き物で、他者から見れば理解できないことを分かった上で、彼らは命のやり取りを楽しんでいる。
「命に嫌われている、と思っていたぜ。途中までは……」
弟は口元を歪めた。
「そうか。良い偶然があったようだな」
兄は相好を崩した。
「私も良い出会いがあった。残酷な運命に抗う少年と少女だ。初めは単なる手駒としか考えていなかったが……彼らならあるいはたどり着けるだろう。破滅の未来を超えた先に」
青崎は未来を知ってしまった。
それゆえに諦めてしまった。
これは絶対に覆せない未来だ、と。
遺伝子に絞め殺されるまで、ただ無為に生きるのだ、と。
生まれて初めて、それに抗う者を見た。最初はただのバカだと思った。しかし、それは間違いだと分かった。
何もせず、無惨な未来を達観したように待つことしかしなかった自分こそが愚か者だったと気付かされた。
彼らが緻密に計算され作り出された未来に打ち勝つことができるとは思っていない。それでも、青崎は彼らをバカだと笑えなかった。
奇跡とは、幾重にも張り巡らされた偶然の連続によって起こるものだ。
確率だけを計算するなら、それはとてつもなく低い。
それでも、彼らなら、と青崎は思ったのだ。
悪魔の計算を覆し、偶然の悪意を潜り抜け、未来をつかむのだろうと感じたのだ。
だから、これはそのための布石。
本当は青崎が彼らを利用するつもりだった。だが、今は違う。
自分が彼らの勝利のための布石になろうと誓った。彼らに賭けてみると決めた。救いというものがあるのなら、神様というものがいるのなら、何もせずに希望を手に入れることなど許さないだろう。だから、その代償にこの身を差し出す。それが青崎の選んだ取引だ。
「本当に……こんな最果てまで流れてきて、兄貴も俺も今になって希望を見出すとはな……。未来ってのは分からんもんだよな」
「何が起こるか分からない、か。本当に……これまで、ここで積み上げてきた計画がパーになるとは。本当に腹立たしい」
二人は一気に数メートル飛び下がった。
今の二人に言葉は不要。
全身に力を込める。
この日のために磨いてきた己の剣を示すために。この日のために鍛えてきた己の矜持を示すために。
「参る」
「いざ」
二人は一度納刀した。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
諸々ありまして(実はおめでたい話です)、執筆時間がなかったので、こんなに間が開いてしまいました。序破急の通り、この先は急展開が待っています。もう終えたいですいやマジで。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




