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虚ろな境界【哭冷凍土戦線】  作者: 星見流人
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夢の終わりⅠ

「待っていたぞ」

「待っていたか」

 二人の青年は相手を正面にとらえた。髪型と服装以外、瓜二つな二人の青年。それは得物も例外ではない。

 殺幌コタンの中心部、廃墟となったビル群の中で二人は対峙している。

 二人の間には言葉などは不要。兄は弟を斃すために、弟は兄を超えるために、ひたすら永久凍土の北海道で修練を積み重ねてきた。

 雪は止んでいる。

 その代わりに、陽光が雲間から大地を照らす。

 二人以外誰もいない、その空間は互いの殺気で満たされた。

 はからずも二人同時に刀を抜く。

 一秒と経たずに甲高い音が木霊した。

 やはり強い、と弟は思った。そして、兄は

「変わったな……」

 と呟いた。呟かずにはいられなかった。つい先日見た、殺人剣とは決定的に何かが違う。その正体には気付かなかった。

 互いに一歩引いて、再び斬りかかる。それを幾度となく繰り返した。今はまだ、相手の動きを把握しようとしているだけに過ぎないが、達人の域に達している二人のそれは一撃一撃が相手の命を刈り取るための斬撃だ。一瞬一秒の油断や判断が命取りになる。それは二人ともが心得ていた。

 三十合と打ち合った末、二人は再び距離をとった。

「本当に変わった。お前は強くなった。兄として、剣士としてこれほど嬉しいことはない」

「何しろそれしか取り柄がないんでな。そんなことは互いに言えることだろう。剣の道は殺しの道。それを分かっているのは俺だけじゃないはずだ」

 白く濁ったため息が空を漂う。

「そうだな……思えば、俺たち兄弟は不幸だった、のかもしれん。こんな生まれ方をしなければ、もっと違う場所に生まれていれば、殺し合いなどという結末に至らなかったのかもしれない」

「それはアカガネハルキとかいうクソ野郎にぶつけてやれよ。まあ、俺も奴を切り刻みたいところではあるんだけどな」

「それは勝ち残った方の仕事、としようじゃないか」

 お互いにここで勝負を決めるつもりだ。この機会を逃せば、おそらく永久に決着をつける機会は失われると二人の直感が告げていた。

 吠え猛る炎を纏った刃が走る。

「力を示せ。それ以外に俺たちにできることはない」

 兄は、青崎は告げる。

「それが兄貴の力、か」

「陽光天刃アマテラス。永久凍土を解放するための力だ」

「ホントにアカガネハルキって野郎は意地が悪い」

「どうした? まさか同じ晶具が与えられているわけではないだろう。お前の刀を、お前の力を見せてみろ。さもなくば」

 疾走する灼熱の刃は巨大な氷塊を一瞬で蒸発させた。

「お前もこうなるだけだ」

 その刃の後には灰すらも残らない。それが青崎の晶具だった。

「いいぜ、見せてやるよ。おそらく最初で最後だ。そのためにここまで修行を重ねてきたんだしな」

 弟は大きく息を吸い込んだ。

「拘束解除……月光透刃ヨイザクラ!」

 神々しい月を思わせる白色の刀身は静かに、けれども力強く光を放っている。

「終わりにしようぜ……運命とか名付けられたくそったれなシナリオをな!」

こんばんは、星見です。

夏休み中、時間はあったのですが諸々の事情で書くことができませんでした。

ちょびちょび合間を見つけて書き溜めたものを今日アップしたいと思います。


今週からは比較的時間が取れそうなので継続的にアップしたいと思います(できれば)。

ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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