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虚ろな境界【哭冷凍土戦線】  作者: 星見流人
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吠える凶拳

 大剣はその刀身を現した。妖しく光る刀身は不気味でありながらも美しい。

「これが、俺の晶具……」

 ジンは驚きを隠せずにいた。

「それが主のあり方か。呵々、ますます興味深い」

 命を容易く屠る一撃を次々と繰り出していく青年。それを何度も防ぐ大剣。

 一進一退の攻防は続く。

「これほど儂の拳を防がれたのは久方ぶりよ。ならば、こちらも絶技の一つも見せねばなるまいな?」

 その言葉とその空気に反応したのか、大剣は形状を変えていく。刀身は太く分厚く、盾に近い。

 ジンも晶具も次の一撃はこれまでとは比べ物にならないことを感じ取っている。間違いなく、これを食らえば“人は壊される”のだと。

 白髪の凶手は五メートル以上も飛び下がった。

「では、ゆくぞ……強敵」

 言葉が終わると同時に、彼は一瞬にしてジンに接近し

一様絶殺いちようぜっさつ

 その左の拳をジンの心臓めがけて突き出した。防ぐは能わず、躱すも能わず、彼が誇る第一の奥義。

 踏み込んだ右足はコンクリートの地面を容易く抉る。

「爆ぜ死ねぃ!」

 だが、その奥義にも晶具は反応した。

 鈍い音が響く。

「ふ……儂の技を防ぐとは、流石よな。その剣の対策をせねば、主を殺すは能わずか……」

 奥義が効かぬと知るや、彼は飛び退いた。

「俺が一番驚いてるぜ……あんな見えない一撃をよく防いだもんだ」

「安心するはまだ早かろう。ここでの敵は儂だけではないぞ。周りを観察し、見定めよ。さもなくば、いかな名剣を持つとて、敗れるは必定よ」

「ンだと?」

「儂はその奇怪な武具を持っておらぬ。だからこそ、主はこうして今生きている。だが、その武具を持つ者同士が仕合えばどうなるであろうな?」

 結末など分かりきっている。

 どちらかの死だ。

「言われなくても分かってるぜ」

「主には覚悟があるのか?」

「覚悟も何も……この世界では命は水蒸気よりも軽いんだ。特に、日本人ジャパニーズの命なんてものはな。一ドルで売買されてるんだぜ、人間の命ってのはよ」

「……ずいぶんと儂の知らぬ世界を知っておるな」

「そりゃ、本土の糞汚いところにいたからな。見たくねえもんまで見えてきやがる。知ってるか? 人間ってのはな、天使にもなれるし、畜生にもなれるんだぜ。命がけで、戦場の中にも関わらず、金のない貧困層の人間を救う、神様みてえな医者もいる。片や、道楽のために人間狩りをする野郎もいる。そして、そんなゲス野郎を黙認している政府のお偉いさんもいる……腐り果てて死ぬのを待つ世界さ」

「ふむ」

 白髪の凶手は思案した。

 もうここにいても得るものはないかもしれない。だとするならば。

「面白い。そのような人の皮をかぶった外道が跋扈する世界を一度見てみたい」

 そんな言葉が彼の口から自然と出た。

「正気か? あんなところに行くのは狂人か、根っからの悪党か……」

「主のような人間か?」

 凶手の言葉が何を意味するのかをジンは理解しかねた。

「うむ、気が変わった。儂はここを去る。いずれまみえようぞ」

「そうかよ」

 ジンは大剣を納める。

「じゃ、止める理由はねえな。アンタとやりあうほどこっちは余裕があるわけじゃねえ」

「まままま、待つのだ! いや、待て! 我が部活動は貴様がいなければ成り立たん! その拳でキタク部の根性なしどもを葬るのではなかったか?」

 二人の攻防を見て、完全に震えあがった野球部のブカツコモンが口をはさむ。

「五月蠅い」

「黙れ」

 二人の圧力の前にブカツコモンはへたり込んだ。

「ひっ……ぶ、部活は全宇宙の摂理……部活がないと生きていけないのだぞ……」

「そりゃ脳味噌お花畑のテメエだけだろうよ。そのうちこの辺のウィルスに負けて動けなくなるぞ」

「ウィルスなど……根性があれば……部活動があれば……」

「言ってろ。人語が通じねえんじゃあ、何言っても無駄だ」

 ジンは踵を返した。

「じゃあな、白髪頭。本州では会いたくねえけどよ」

「そうさな、儂はさらに腕を磨き、また仕合いたい。とりあえず、この地ではもう拳を突き合わすまいよ」

 凶手も踵を返す。行き先を定めぬまま、彼は殺幌コタンを後にした。

こんばんは、そして明けましておめでとうございます。

仕事での執筆と本業が忙しかったため&ゲームにはまってしまったため、こちらのアップが遅れてしまい、申し訳ありません。

そろそろ終盤です。終わり方はもう決めています。

よろしければもうしばらくお付き合いください。


2021年が皆様にとってより良き年になりますよう。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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