討滅の誓い
二人の様子を、少女は微笑みながら見ていた。
その笑顔は優美ではあるが、どことなく妖しさを備えている。
「麗しい兄弟愛ですね。父もお喜びでしょう」
青崎の視線が彼女を射抜く。
「あなたも……アカガネハルキの」
「そうです。私も呪われた兄弟の一人です。今更隠しても、あなたには見抜かれてしまいますから、もうここでオープンにしてしまいましょう」
穏やかな風を思わせる、綺麗な声音は青崎に向けられた。
「興が削がれたわ。この場は引く。おい、女」
重苦しい声が響く。
「私の晶具をここで見せるわけにはいきません。彼が察知できないところまで、歩きましょう」
彼女の提案に渋々といった表情で頷く。
「では、ごきげんよう。またお会いすることもあるでしょう。その時は、殺し合いになっていないことを祈っています」
悪意の欠片も感じさせない声で彼女は言う。そして、そのまま青崎に背を向けて歩き出した。彼女の足跡からは紫色の輝く花々が生まれ、そしてしばらくして散っていく。
青崎は彼女たちを追わない。弟があの女とともに行動しているならば、必ず再会することになると思ったからだ。
「あなたとはいずれ殺し合いになります。アカガネハルキの血族、ですから」
「あなたはまだ本当のことを知らないのですね。知らない方が幸せなこともあります」
少女は振り向いて、お辞儀した。
「すべてを、一つに」
小さく、けれどはっきりと彼女は呟いて、風雪とともに姿を消した。
青崎が自身の弟と対峙してから一日後。
都馬独楽井コタンで、ジンたちと青崎は合流した。
「……一体なんで一日で数百キロも移動できるんだよ。人間か?」
ジンの表情は胡散臭いと言っているが、それを簡単にいなす青崎。
「もちろん人間ですよ。ほら、血だって赤いですし」
ジンと葉村は縮地を知らない。彼らからすれば、青崎の神業は常識の外にあるものだ。
「ともかく、このコタンは落としたようですね。ブカツコモンは始末しましたか?」
「抜かりない」
その声は空気と同じくらい冷たい。
「仕事はきっちりやるさ」
「雇った甲斐があります。次は殺幌コタンに向かってください。ここからはそう遠くないはずです」
ジンはため息とともに言葉を吐き出した。
「なあ、アンタの距離感覚おかしくね? ここから殺幌までの距離ってのは、神戸から大津あたりまであると思うんだけど?」
「まあ内地の方からすればおかしいでしょうね。北海道で遠いといえば、数百キロ移動するときに使う言葉ですので」
唖然としたのはジンだけではない。
「まあいいや。輪火内に比べれば全然遠くないしな。さくっと行って、さくっと仕事してくるわ」
「お願いします。殺幌は野球部が統治しているはずですが、何があるか分かりません。気を付けてください」
「行く前に、アンタが気にしてた花について伝えておく。花はあらかた刈りつくした。刈ると、紫色の光を放って消滅。どう見ても、晶具だろう。が、依然としてそれ以外のことは分からない」
「そうですか。いずれは分かると思います。元凶がこの地にいるのですから」
曇天の下、彼は誓う。あの女を必ず北海道で始末する、と。
こんにちは、星見です。
コロナ騒ぎもひと段落……してくれると嬉しいのですが、果たしてどうなることやら。
さて、少しずつ物語は進みます。次に向かうは殺幌コタン。
そこでジンたちが出会う者とは?
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




