最強の双子Ⅰ
虚ろだった剣士の瞳に火がついた。血に染まった着物と同じ、鮮烈な紅の瞳。
少女の後ろに佇んでいた青年は、刀を抜き、それを青崎に突き付けた。それだけで二人にとっては十分だった。
再戦する理由としては。
合図はいらない。ただ、二つの刃が極寒の空気の中で火花を散らす。
傍から見れば、それは剣舞にすら見えただろう。それほど、流麗にして、動きに無駄がない仕合だった。
数十合打ち合っても、彼らは息一つ切れていない。どちらも力を温存している感すらある。
「できれば、もっと別の場所で会いたかったですね……」
青崎は残念そうに漏らす。
相対する青年からの返事はない。
彼は無表情のままで、青崎から距離をとって立っている。
「何も言いませんか、この私に」
返事は首肯だけだった。
語りたければ、その刀で語れ。青年はそう言っているように見える。
「私たちが離れ離れになってから、この十年を君がどのように過ごしてきたのか、とても気になります。そんな姿になり果ててまで、一体何を求めたのですか?」
初めて青年は口を開いた。
「問いなど無用。俺にはもう刀以外に己を示す方法など知らぬ」
静かだが、どことなく重みのある声。
その声は青崎がかつて知る彼の声とは違っていた。
「何を捨てれば私に勝てるかを考えた結果がそれですか! 己の矜持はどうした! 己の意思はどうした!」
「矜持などくだらんものに興味はない。それで強くなれるわけでもなかろう。だがな、意思なら……しかとあるぞ」
青崎は対峙する赤い瞳を見つめる。
「死にたい」
その言葉に凍り付いたのは少女ではなく、青崎だった。
「俺は呪う。この世界を、この時代を、この力を。そして、人間を。どうして生まれ、どうして生きて、どうして死ぬ。それを定義され、生かされている俺自身を呪う。いや……この世界を作り出した、アイツを呪う!」
アイツ、というのはアカガネハルキだろう。
青崎にはすぐに察しがついた。しかし、アカガネハルキ自身はもうすでに死んでいる。
「アカガネハルキを殺したいのですか?」
「当然だ」
彼は抜刀していた刀を鞘に戻した。
「それが、俺がこの女に助力している理由だ。奴さえ殺すことができるなら、俺は笑って逝くことができる」
「間違っている……」
「間違いかどうかなど、分かるはずもない。俺はこの地獄のような世界から早く消えたい。それだけだ」
「それでも、あなたは間違えている。なぜなら」
青崎は兄として弟に告げる。
「あなたの定義を覆せばすべて済むのですから」
こんばんは、星見です。
転勤先でようやく落ち着き、執筆を始めてみれば、コロナウィルスというものが世界中で跋扈している。わずか2か月で別世界のようになってしまいました。皆様も可能な限り外出を控え、ご自愛ください。私は私で、慣れない土地で一人ですが、何とか踏ん張ります。
待っている家族も友もいますので。
先週から私の職場は自宅勤務に切り替わりました。
できるなら執筆速度を上げたいと思います。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




