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虚ろな境界【哭冷凍土戦線】  作者: 星見流人
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交錯する秘剣【序】

 縮地しゅくちという技がある。これは伝承上のもので、実在しないと思われていた。それを真っ向から否定する青年がいる。

「さて、ここが汚島おしま管内の箱館はこだてコタンですか。まあ随分寂れたものですね。青森からの略奪産業で栄えているものと思っていましたが」

 青崎はわずか一日で士頭内コタンから箱館コタンまで到達した。常人にはなしえない紅軍速度でそれを実現させた青年はしかし、息一つ切らせていない。

「サッカー部が統治しているらしいですが……見当たりませんね。どうしたものか」

 丈夫な生地から作られた軍服のベルトにかけられた刀を見る。

「目当ての彼もいませんかね。さて、どうしたものか。そこらへんの雑魚を斬ったところで、何が起こるわけでもなし」

 比較的雪が少ない街を歩きながら、青崎は思案した。この街にも例外なく、あの花がそこかしこに咲き乱れている。海の上でさえも。

「この花が晶具であることは間違いないのでしょうが、これの使い手はあの二人ではなさそうです。となると、ブカツコモンが使い手……のわけではなさそうですね。何しろ、アカガネハルキの子どもたちにしか扱えない代物ですから」

 この花々はただそこにあるだけで何もしない。

 ただ、厳寒の中に美しく咲き誇るだけだ。

「本当に不気味な晶具ですね。皆目、この使い手の狙いが分からない。何らかの防御結界でも張るのかと想定していましたが、そうでもない」

 無造作に花々を斬ってみた。それら何の反応をするでもなく、生気と輝きを失って、消えるだけだった。

「私の花を随分手荒に扱ってくれるのですね」

 凍えるような怖気に、青崎は抜刀する。

 そこには、穏やかに微笑む美しい少女がいた。

「あなたの晶具のようですね」

 抜刀はしたものの、彼は巫女装束の少女を斬る気にはなれなかった。斬ろうとした瞬間にやられるという剣士の第六感が働いたからだ。この少女は、“私たちと何かが違う”。青崎はそう思った。

「ええ、そうです。私の晶具、綺麗でしょう? あなたはこの地のブカツコモンたちを殺しに来たのかしら?」

 艶やかに光る瞳が青崎を捉えた。

「……あなたが味方という保証はありません。答えるわけにはいきませんね。もっとも、この問い自体、時間稼ぎなのでしょう?」

「ええ、その通り。あなたは、私の瞳を見ても私に欲情したりはしないのですね。さすがは、あのアカガネハルキの子どもたちといったところでしょうか」

 青崎はこの不気味な少女を今すぐにでも斬りたいと思ったが、身体が動かない。いや、動いてはいけないと身体が警告している。

「あら、そんなに殺気を飛ばさないで。私はあなたを殺しに来たわけではありません。見届けに来たのです。誰が何を選び、誰が生き残り、そして誰が私を殺すのか……」

「自殺したいのなら、勝手にすれば良いでしょう」

 青崎の言葉を聞き流した少女は

「ふふふ、お時間を頂いたお礼に、あなたの望みを一つ叶えて差し上げましょう」

 お辞儀をする彼女の背後には、刀を持った剣士の姿があった。

こんばんは、星見です。

すっかり冬、のはずですが、今年は暖冬ですね。雪がほとんど降らず、なんだが変な気分です。

さて、花の魔術師ならぬ花の晶具使いの彼女が登場。

彼女は汚染都市編よりも登場機会が増えてきます。

青崎君が北海道をあちこち移動できるわけは縮地という技にあったという理由付けがなされています。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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