無銘の凶手
「いたぞ、キタク部の残党だ!」
「キタク部死すべし!」
「部活に入らぬ愚か者めが!」
空手部と思しき黒い道着の青年たちがガトリングガンや金属バットを振り回しながら、都馬独楽井コタンにたどり着いたジンたちを出迎えた。
「なぁ、これ笑うとこ? 空手部が何でガトリングぶん回してんの? しかも、弾撃ってこねえし」
ジンは笑いをかみ殺しつつ葉村に話しかけたが
「漫才は他でも見られるでしょ? さっさと片付けましょう」
とクールに返された。
「はいはい、お仕事お仕事」
とため息をついて、一人の道着の青年の額を撃ち抜いたとき
「待てィ! 我が神聖なるコタンを荒らす悪党一味は貴様らかッ!」
と白い道着の男がジンの前に立ちふさがった。赤いハチマキを額に巻いたその姿は、かつて日本で流行した某国民的格闘ゲームの主人公によく似ている。
「アンタが空手部のブカツコモンさん? とっととこの勘違いの大馬鹿野郎たちを下がらせてくれないかな?」
「笑止!」
白い道着の男は一喝した。
「我こそ、北海神拳を極めし者! 北海七十七流派の頂点に立つ、北海帝王拳の正当伝承者だぞ!」
昔どこかで読んだ漫画を彷彿させる言い回しで自己紹介をする壮年の男に対して、ジンは大げさにため息をついてみせた。
「設定がアレすぎると面白くないよ? 漫才師としては二流以下になっちゃうぜ?」
「おのれおのれッ! どこまでも我が北海聖拳をバカにするか! ならば見せてやろう! 北海帝王拳奥義ッ! 北海百裂拳を!」
周囲の取り巻きからはどよめきが起こる。
「あの伝説が、全宇宙が震える伝説がここに!」
「一秒間に五千万発の拳を繰り出す、伝説の殺人拳! ガキ如きに防げるわけがない」
壮年の男は気合を溜め、ジンに向かってその拳を突き出した。
だが
「骨、イっちまったか?」
その拳はジンの大剣によって難なく止められた。
壮年の男は右の拳を左手で押さえてうずくまる。
「ま、こんなもんだよな。伝説なんて自分でほざくようなのは。でさぁ、本物出て来いよ。隠れてるんだろ?」
黒い道着を纏った白髪の青年がブカツコモンの前に、立ちふさがるように陣取る。
「テメエの方が数千倍愉しませてくれそうだ。こんなド僻地まで殺しに来たんだから、精々……」
ジンの言葉が終わる前に、その青年の拳はジンの左わき腹をかすめた。ジンはとっさに身体を捻って直撃を避けた。
「油断したか」
ジンの目が獣のそれになる。
「悪いな、失礼をしちまって……」
言葉を吐き出そうとすると、ジンは拳がかすった左わき腹に重い衝撃を感じた。かすっただけのはずが、まるで内部から抉り潰されるかのように痛い。
ジンは思わず蹲った。
有利になっているにも関わらず、白髪の青年は表情一つ変えない。氷のように冷静に、ただ敵と見做したジンを観察している。
「ただ一撃……それだけで十分と思っていたが、それを凌ぐとは……世界は広いものよ」
かすれた、だがどこか重みのある声がジンに投げかけられた。
「傷を癒して、いずれ仕合おう。今のお主では、我が拳振るうにはまだ足りぬ。己と、そして己の得物と対話し、再び見えよう」
ジンの放つ殺意の濁流を、自身が放つ殺気の暴風で相殺する。
「儂はただの凶手にすぎぬ。ただの凶手すら斃せぬようでは、この北海道を制するなど夢のまた夢。悔しくば、儂を超える力を示せ」
その声には戦意はなく、悪意もない。
たおやかに狂った青年は再戦を約束して、その場を静かに去っていった。
本当にお久しぶりです。
お待ちいただき、ありがとうございます。星見です。
さて、新たな登場人物を出しました。というか、出てきました。
今後は体調の具合に合わせて更新していきたいと思います。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……
PS:このセリフ書くのは、何か月ぶりだろうか……




