幕間:餓えた狩人
Interlude in
生まれた時からなのか、そうではないのか、定かではない。彼は気付けば戦いに飢えていた。
敵が欲しいと願っていた。それも、自分を殺し得るだけの力を持った敵を。
死にたいのか? と問うと、彼は否と言うだろう。自殺をしたいわけではないからだ。
ただ彼はつまらなかったのだ。白一色で塗りつぶされた世界が連綿と続くことが。そして、そこで生きる人間たちの営みが。
故に彼は戦を求めた。
一瞬の攻防に命を賭けるあの悦びを知ったときから、それは甘い蜜のように少しずつ自身を侵食していく。その自覚はあった。それでも、彼は立ち腐れていくような日常から逃れたいという欲望に勝てなかった。
最初に狩ったのは熊だった。剛腕を振り回す熊の動きを見切り、一刀のもとに斬り捨てた。一瞬の快感の後に訪れたのは虚無感。
次の敵が欲しい。
その欲望に突き動かされるまま、彼は狩りを続けた。食べるためだけではなく、狩るために狩りを続けた。そして、狩人が人斬りとなるまでそう長い時間はかからなかった。
一切斬穿。
それが彼の渾名にして忌み名となった。
敵対した者を一切の抵抗をさせずに斬殺する天才的な技。相対した者に一生忘れえぬ恐怖を与える絶対的な力。
ある暗殺の依頼者は言う。彼の剣はもはや剣術の範疇ではない。魔剣にも等しい、と。
そうして、北海道で人を斬り続けて、高名と悪名を得た今となっても、彼は常に退屈さに苛まれていた。
もっと強い敵が欲しい。
もっと斬りごたえのある相手が欲しい。
その狂気は留まることを知らない。
そんな彼の前に、ある青年が現れ、一振りの刀を手渡した。
「やあ、人斬り君。あはは、そんな怖い顔をしないでおくれよ。僕は君に必要な、いいものをあげようと思って、こんな寒いところまで来たんだよ。さあ、受け取って。名刀と称してもいいものだと自惚れている僕の作品だ。これを振るうといい。これを振るえば、あるいは君の願いは叶うかもしれないよ」
彼の殺気を須く受け流しながら、青年は涼しそうに笑う。
彼は青年から刀を受け取り、すぐにそれを抜刀した。手になじませるため、何度かそれを振るう。
「うん、僕の見込みに間違いはなかったね。君の願いはちゃんと叶うよ」
神速の太刀筋を見た青年は微笑みを崩さず、はっきり言う。
「でも、覚悟しておくといい。それを持つということは、君はある運命を背負うことに他ならない。その先に見える未来は果たして、君にとって幸福なのかな? いや、幸福であることを祈るよ。なんといっても……」
彼は不気味に思った青年の最後の言葉にだけは驚愕した。
「君は僕の子なんだからね」
Interlude out
皆様、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
はい、というわけで三週間ぶりに投稿しました。
色々ありすぎて中々書けず、書く気も起こらず、今実家で細々と書き続けています。
来週から仕事ですが、社会復帰できるのか心配です(笑)
まだまだ序盤です。このお話は汚染都市編よりも長くなりそうです。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




