冷たい剣閃
刀と身体は一つになる。この手に握るはただの刀にあらず。諸人の未来を弑するものだ。
あらゆる可能性を、あらゆる時間をその刃は刈り取る。そこに一切の躊躇はなく、一切の慈悲はない。
「……あ?」
軌跡すら見えない斬撃の跡に残ったのは、鈍い痛みだけだった。
斬られた右手の甲からは血液が湯気を立てて、零れ落ちる。
「失礼。力量を知りません故、手加減がうまくできませんでした」
雪の上にはジンの大剣が横たわっている。その刃はわずかにひび割れていた。
「ですが、我が妄念を上回るほどの力ではなかったようですね」
バカめ、とジンは呟いた。
「俺は剣士じゃねえ!」
その言葉とほぼ同時に青年の両手は動いていた。相手の視線、相手の心理を読み取り、正確に弾道を見切るために。
ジンが素早く抜いた拳銃から放たれた凶弾は刀の一閃によって呆気なく斬り捨てられた。
「……ンだ、と」
「晶具を侮りましたね。この素材が何かは分かりませんが、鉛玉如きで容易く敗れるようなものではありませんよ」
青年の穏やかな物腰には恐ろしささえ感じる。
時間にして一秒もない攻防。
瞬時の判断にして、冷静な思考。
失敗の先に待つものは死。
そんな状況であっても、彼は淀みなく、頭に描くそれを実行できる。
「テメエ……只者じゃねえとは思っていたが……何者だ?」
「化け物ですよ」
自嘲するように青年は答えた。
「斬ること以外に何も意味を見いだせない人間の形をした生物兵器、とでも言えば納得できそうですか?」
ジンは穏やかに微笑む青年に恐怖を覚えた。
こいつは人間じゃない。いや、形は人間なのだろうが、その精神はもう既に人間のそれじゃない。
「テメエは……何者だ?」
「それはどちらの意味でしょうか?」
青年は刀を鞘に戻す。そして、彼は言った。
「私は青崎蒼馬と申す者です」
こんばんは、星見です。
色々あって遅筆となっていました。
今世間を騒がせている「部活動」がテーマの作品ですが、これを描くためだけに本作を書いているのではありません。
さて、青崎蒼馬というキャラクタが出てきました(出ていましたが)。
剣豪というキーワードにどう絡んでくるか?
では、また次回お会いできることを祈りつつ……




