洞窟の中で その後
その日は、そのまま川辺で宴会となった。
マキナとアルテはジョッキに入ったお酒を飲みながら、クルクルと器用に踊っている。
グラディオは、先程から1人酒樽を隣に置き黙々と酒を飲み続けている。かなりの量を飲んでいるはずだが、見た目は何も変わらないので隣の酒樽さえなければ、水でも飲んでいるかのようだ。
当のロベリアはというと、少し緊張が溶けてきたのかバレリアンの横で座り込み、肉を口いっぱいに頬張っている。
代わる代わる、行商人の男達が旅の話をして聞かせてくれる。
冬になっても春と変わらない温かさの国や、砂に埋もれた石碑に纏わる伝説、遥か西の大陸の端に住むというエルフの話、北の氷の大地に育まれる小さな部族の話、そして、南の地で竜の死を最期の姫巫女が見送った話。
彼らの聞かせてくれる話は、どこか真実味に欠けていておとぎ話のように聞こえてしまう。けれども、遠く南の地で天へと還った、顔も知らぬ時を操る竜の話を聞いた時に、今までのどの話にも真実が隠れているのだと気づいたのだった。
それはまた、私自身にも言えることだろう。
ウツシミ
軽く頭をふり、その話題を隅へと追いやる。
私の竜は誓った。だから、知らなくても良いことはそのままでいい。私はいまのこの居心地のいい場所を、安らげる関係を壊したくはない。
例えそれが原因で、いつか取り返しのつかない事が起こるとしても、私はまだ知らないままでいたい。
考え込んでいたせいで、よほど暗い顔をしていたのだろう。ふと俯き気味だった顔を上げると、この日一日で見知った顔が心配そうにこちらを伺っていた。
「お嬢ちゃん、大丈夫か?」
「ばっか、お前が竜の話するからだろ!」
「えー・・・お前の顔が汚いせいじゃないのかぁ?」
「んだと、こら」
やいのやいのと、ああでもないこうでもないと言い合う無骨な男達を見てクスリと笑う。
もうこちらには目もくれずに男達は、きっといつもの流れなのだろう、険悪さのない言い合いをしながら楽しそうに酒を流し込んでいる。
左手側に座っているバレリアンの顔を覗き上げると、パチリと目が合う。すると彼はいつものように微笑んで、よく似合っているね。と恥ずかしげもなく言う。
だから、私も少し酔っていることにしてこういうのだ。
「あなたは、いつでも素敵よ。」
パチクリと瞬きをしたあと、バレリアンはさっと顔を背ける。
耳が赤くなるから、顔を背けても無駄なのにとクスクスと笑う。最近の彼のこういう反応を見ると、少しだけ彼の中に居場所がある気がして嬉しくなる。
そうして、夜は更けていく。
彼の耳が赤く見えたのは、焚き火の明かりのせいではないはず。
眠りにつくロベリアの瞼には、彼の横顔が焼き付いていた。




