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竜の住まう谷 ロベリア譚  作者: 訪う者
秘密基地は見つからない
19/28

洞窟の中で

()()()()か」


バレリアンがアレクトラと呼んだ彼女の声が頭の中でこだまする。私の知っている、()()()()とは()()()。鏡や水に写った自身のように、見た目がそっくりなナニカを指す言葉だ。

私が誰かの()()()

少し怒っていたようなバレリアンを思い出すと、嫌でも思い当たる存在。

()()()()()()


バレリアンの言う通り、アレクトラの目には似ているように写っただけなのか、それとも・・・


バシャッと音がして、全身を冷たい水が伝う。

考え事をしながら歩くと危ない。と母に注意されたことが頭をよぎる、右手を向くと水を浴びている馬の後ろ姿が見える。水を引っ掛けられた。


「あはははははっ!ひーーーっ、くっ、くふふふふっ・・・ふっ・・・だ、大丈夫ぅ??」


先程、グラディオがマキナと呼んでいた人物が大笑いを頑張って隠しながらこちらへと寄ってきた。


「あーあ、ずぶ濡れだねぇ。ぼーっとしてた?危ないよって声掛けたんだけど・・・くっふふふふっ・・・ご、ごめん。あんな、もろにかぶると思わなくてっ・・・くくくっ」


全然抑えきれていなくて、普通に笑われるよりも腹が立つ。が、考え事をしていてぼーっとしていた自分後悪いので少しムスッとするだけにしておく。

すると、口元を抑えながらも腹も抱えているマキナを押しのけるようにして、優しげなお姉さんが近づいてくる。


「あららら・・・ずぶ濡れねぇ・・・。風邪ひいちゃうわ。とりあえず、服を脱いで体を拭きましょう。」


そう言って、桃色の服に身を包んだ女性は私をもう1つ奥の馬車へと誘導した。その荷台はほぼものが載っておらず、中に入って幕を下ろしてしまうと簡易的に個室になった。


桃色の服の袖をまくり上げて、胸の上程まで伸びている髪を緩く後ろで結ぶと、私の前に膝をついて座り、柔らかい布で濡れている私の身体をそっと拭いてくれる。



「あ、の・・・大丈夫です。自分でやります。」


「そう?」


少しつまらない、といった感じで彼女は小首を傾げると、その柔らかい布をわ私にそっと掛けてその手を自らの膝へともどした。

拭いているあいだもずっとこちらを見てくるものだから、なんだか拭きづらくて声を掛けようとした時、荷台の幕がバッと上がり陽の光が入ってきた。


「きゃあ!!」


思わず体を隠してしゃがみ込み、今はもう一度幕の下がった方を見ると、そこにはマキナが服を抱えて立っていた。

私が何かを言うよりも早く、同時に振り返っていた桃色の服の女性がマキナの胸ぐらを掴み引き寄せると


「女の子の着替え中に、声も掛けずに入ってくるたァ、どういう了見じゃおぉコラ」


かなりドスの効いた声で、マキナを叱りだした。むしろ、その人が怖くて私は後ろへと下がった。すると、そんな私に気づいたのか、その人はパッと振り返り先程までとは打って変わって優しい笑顔と声色で、話しかけてくる。


「さて、せっかくだからここで冬の服を選んでしまいましょう?

何色が好きなの?」


「あ、え・・・水色とか白色とかかしら・・・」


「じゃあ、マキナ。

ピンクと紫、それから黒だけ置いてってあとはいらないわ!」


「え、ちょ、え?」


「大丈夫よ、怖くないわぁうふふっ」


どうしよう、怖い。笑顔なのになんだか良くない下心をビンビン感じるし、マキナって人は出ていく前に拝んでいったし、なによりよくわからないけれど、うねうねワキワキと動く両手が怖い。


「い、いや・・・こないでえええええええっっ」


――――――――――――――――――――――――――――――


「そっか、やっぱり北の大地は冬が広がってきているんだね」


「はい。馬では行ける範囲がどんどん狭まっています。

途中からはアレクトラ様の加護がなければ辿り着くのも厳しいです。」


「ふむ、まあ・・・北のも、あれでもう年じゃからの。」


「そうは言っても、あ、ロベリア・・・」


きな臭い話をしていた一団の前に、一輪の華が咲き誇る。

淡い桃色の柔らかな生地には、太陽の光でキラキラと輝く銀糸の刺繍が細やかに入っており、紫色の襟と帯は彼女の華奢な身体を引き立たせる。広がった袖口からはいつものように腕こそ見えないが、そっと覗き見るかのような垣間見える白く小さい手が愛らしさを増す。

羽織った真っ白な外套も、首元や裾などに銀糸で繊細な刺繍が施されており、暖かいだけでなく見目も美しかった。


普段はその豊かなプラチナブロンドの髪は無造作に高い位置で結ばれているだけなのだが、今日は低い位置から緩く編まれ耳横から肩へと垂れている。

いつもの活発なじゃじゃ馬娘はどこへやらといった風貌に、どこからか溜息が聞こえてきた。


「変じゃない・・・?」


小さなロベリアの呟きに、彼は目を閉じる。そうして、ゆっくりと目を開くともう一度彼女を上から下まで余すことなく見つめると、小さな声で讃える。


「とても美しいよ、ロベリア」


周りから聞こえていたはずの野次馬の声など何も覚えていない。スイっと逸らされた顔は耳まで赤くて、なぜだか満足感を覚えた。

そうして、マキナとアルテ・・・桃色の服の彼女に選んでもらった3着の冬服と白と黒の外套2着を、無事ロベリアは手に入れたのだった。



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