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竜の住まう谷 ロベリア譚  作者: 訪う者
秘密基地は見つからない
13/28

洞窟の中で

その日は、まだまだ暑くて、朝早くから畑に出たもののダラダラと流れる汗が鬱陶しくて、作業があまり進んでいなかった。

最近では、畑仕事の多くはロベリアの仕事になっている。

代わりに、バレリアンは午前中、朝ごはんを共に食べたあとフラっと出掛け、昼前にはうさぎや鹿などを狩って帰ってくるようになっていた。


今日も例に漏れず、バレリアンは狩りに出ている。いつも、槍も罠も、銃も弓矢も持って行かず、血抜きに使うのだとロープと短剣だけ持っていくが・・・どうやって狩りをしているのか・・・。

もちろん、それはあえて聞かない。きっと、彼は見せたがらないだろうから。



「あっつい・・・」


それにしても、暑すぎる。せめて1度木陰に隠れよう、と思ったところで視界にそれを捉える。

下の川へと続く階段だ。

なんとなくあの日以来降りられずにいる。水ならバレリアンがどこからか用意をするし、洞窟の中にも緩やかな水の通り道はあるため、特段降りるに迫られることもなかった。


「・・・」


けれど、川に足をつければとても冷たくて気持ちいいだろうと思うと、自然に足が向いていた。

別にバレリアンにも禁止されていないし、もし何かあってもむしろ水の側の方が安心のような気がする。


頭の中で、誰に向けてか言い訳を考えているともう階段を降りきり、目の前には大きな川が流れていた。

川底の石を視認できるほどに澄んでいる、流れの緩やかなその川はまさしくバレリアンよようだった。

スカートの端をまくり上げて濡れないよう膝上の位置で固定し、農作業用のブーツと靴下を脱いだ。


触れなくとも近づくだけひんやりとした空気が身体を包む。これはよく知っている。彼を包む空気と同じだ。

そっと足先を水につけた。

ヒヤッと足先から背中を抜けて頭まで冷たさの衝撃が伝わる。ブルブルっと少し身体を震わせたあと私は両足で川へと進んだ。


たくさん汗をかいて、体の芯から熱を持っているようだったから、冷たい川の水はとても気持ちがよかった。自然、笑顔になってパシャパシャと1人水遊びをした。



「ロベリア」


名前を呼ばれ振り返ると、そこにはいつもの優しい笑顔の彼が立っていた。あまりに楽しみすぎて、彼がすぐ近くにいる事にも気づかなかったようだ。


「おかえりなさい!」


駆け寄ると、彼は片腕で軽々と私を抱き上げる。

私は彼の首へ手を回す。すると、彼の目元はいつもより少し多めに優しさを含むようになる。

「水遊びをしていたの?畑にいないからびっくりしたよ」

「ごめんなさい、あんまりにも暑くって」

「怒っているわけではないよ。次は僕も混ぜてね。」

「きっとね」


クスクスと2人で笑い合いながら、私は彼のもう1つ手に目をやる。ここからだとうまく見えないが、今日もなにかとってきたらしい。


「今日は何を取ってきたの?」

「今日は、兎を2羽だよ。」


「すごいわ!バレリアンは狩りの天才ね!」

「そんなに褒めてくれるなら、次はもっと頑張らないと」


馬鹿ね。と笑うと、彼は心底嬉しそうに私を見つめる。

やがて、そっと地面におろされ、彼はいつもセリフを言うのだ。



「さあ、ロベリアお昼にしよう。」



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