第三章17 『凪の勧誘』
俺は今一度マイルズくんを見る。
「うん。マイルズくん、ケガっていうケガはしてないようだね」
「おかげさまで」
と、マイルズくんは微笑む。
「ねえねえ、マイルズくん。キミ、どこから来たの? リフトの向こう側から渡って来たんだろう?」
凪が俺に続けて聞いてくれた。
マイルズくんはさらりと答える。
「《ヨーソミシテタウン》だよ」
「え、マイルズくんよそ見してたの? だからリフトから落ちるんだよー」
やれやれと凪は呆れるような残念そうな顔をする。
「いや、《ヨーソミシテタウン》っていう名前の街から来たんだよ」
「なるほど。そうならそうって先に言ってよ。まぎらわしいな~」
「わ、わかった。次から気をつけるよ」
マイルズくんは半分諦めたように言った。俺なら怒っているところなのに優しい人だ。もう凪の扱いをわかっている。
「もう、先輩はぁ。気をつけるのは先輩のほうですよ? いつもそうですけど――」
と、鈴ちゃんが凪に注意を始めた。
対して凪は飄々と頭の後ろで手を組み、話を聞き流している。
よくあるいつもの光景だ。
「マイルズくん。大事なことを聞いてなかった。キミ、どうして気を失ったんだい?」
凪が質問すると、マイルズくんは照れくさそうに微苦笑を浮かべた。
「疲れて寝てしまったんだ。谷の向こうは関所のようになっていて、こっちと違ってすぐ近くには村がないんだよ。ちょっとだけ離れたところにある《ヨーソミシテタウン》からはモンスターと戦いながら進んでいたから、リフトに乗る頃にはすっかり疲れ果てていた。その結果、リフトに揺られているうちに、いつのまにか寝てしまったってわけなんだ」
「そっか」
と、俺は納得する。
確かに、こちら側と向こう側で距離がありそうだし、リフトに乗っている時間は長いから、眠くなっても仕方がない。
「本当はリフトに乗ったら回復アイテムを使えばよかったんだけど、うっかり切らしてしまっていてね」
と、マイルズくんが頬をかく。
凪が尋ねた。
「じゃあ、マイルズくんは一人で冒険してるんだ?」
マイルズくんはうなずく。
「そうだよ。いっしょにゲームをしている仲間はいないから」
「一人だと、アイテムも必要よね~」
と、逸美ちゃん。
鈴ちゃんも同意する。
「そうですね。一人だとなにかと不便ですよね」
「仲間がいれば回復魔法を使いやすいし、戦闘の負担も少ないから疲れにくいもんね。ひとりでのバトルって大変じゃない?」
俺が聞くと、マイルズくんは穏やかに答える。
「いや、慣れてるからボクにとってはそれが普通なんだ。仲間がいたらなぁって思うことはこれまで何度もあったけど」
すると、凪が握手をするようにマイルズくんに手を差し出した。
「え?」
目を丸くするマイルズくんに、凪が言う。
「マイルズくん、そういうことならぼくたちと冒険しようよ。みんなで冒険すると楽しいよ。ひとりじゃできないこともみんなとならできるしさ」
「それって……」
凪は首を縦に振った。
「ぼくたちの仲間にならないかい?」




