第三章12 『トールルスの親子』
モアレオの出現率はそれほど高くない。
強いモンスターだけあって、貴重なのかもしれない。
すると今度は、ドラゴン型のモンスターもいた。
首が長い四つ足の恐竜のようなモンスターだ。
名前は、トールルス。
雷神トールとかけてあるのか、雷魔法の攻撃を扱える。また、背が高いという意味でも使われるトールの名前通り、とても大きい。十メートルくらいあるんじゃなかろうかというほどだ。
トールルスとのバトル圏内に入ってしまった俺は、雷魔法の攻撃をされてそれを避ける。
「どうやら、トールルスも属性は『雷』。物理攻撃でいこう。俺が《天空の剣》で斬る」
俺の《天空の剣》で斬りかかって倒した。
ドラゴンスレイヤーのおかげか強さはモアレオほどには感じないが、これまでのモンスターより固い――いわゆる防御力が高いタイプだった。リッキークラスだろうか。
「むしろ、防御よりHPが高いタイプだろうね」
と、凪が独自のモンスター観を語る。
もう一体いたトールルスに、凪が有利でも不利でもない風魔法《ラファール》を使ったが全然効かない。やっぱり防御力に優れている。
「なかなか強いね~」
魔法関係の耐性はトールルスのほうがあり、物理攻撃に対する耐久はリッキーに軍配が上がる感じだろう。
逸美ちゃんは恐竜について教えてくれた。
「こういう四つ足で首が長い恐竜は、竜脚下目っていって、草食なのよ。たぶん、雷竜や雷竜って呼ばれたアパトサウルスがモデルだと思うわ」
「へえ、雷魔法も使うしね! やっぱり恐竜っぽいモンスターはちょっと特別な感じがしていいね!」
俺は恐竜が好きだからこの手のモンスターの登場は嬉しい。
もう少し歩くと、トールルスの親子がいた。
まだ三メートルくらいの子供のトールルスと、十メートルはありそうな大きなお父さんお母さんのトールルスの三匹がいっしょに木の枝の葉っぱをはんでいる。
「開、また倒すのかい?」
凪に聞かれるけど、俺は首を横に振る。
「いや。さっき倒して図鑑には登録されてるし、いまは見るだけ」
近づかなければおとなしい恐竜みたいで、親子で木に茂っている草をはんでいる姿は可愛い。
「図鑑の説明にも、オスとメスと子供で食べる葉っぱのすみ分けをしているってありますもんね。家族仲よさげで和みます」
にっこりと微笑む鈴ちゃんに、逸美ちゃんが言った。
「この習性は、キリンさんに似てるわね。キリンもあんなふうに食べる葉っぱのすみ分けをするのよ」
「そっか! 首が長いし、なんだかそれらしいかも」
と、俺はちょっとおもしろいことを知れて嬉しくなった。
俺たちは親子の様子を見ながら先に進んだ。
荒野を進む中。
マンモスの骨のような化石が立っていた。
その中から、コオニビが現れる。
「そういえばさ。ソロモン島にいたコオニビは、凪の風魔法を受けて炎の勢いを強め、過剰に燃え上がって破裂するように消えた。あれは、相性を覆すほど力の差が大きかったからかな?」
俺の疑問に、凪が答える。
「おそらくね。風の勢いが強すぎて、火の勢いを強めるどころか火を消してしまった。五行の考えにもあることだけど、大きな力の差は相性関係を覆す。たとえば、水剋火――水は火を消し止める。が、火の力が強いと水で消すことができず、水が蒸発してしまう。これまでの弱いモンスターはだいたいこれでも力押しで勝てたと言えるね」
「そうね~。これまで野生のモンスターはそんなやり方でも勝てたけど、これからは気をつけないとね」
と、逸美ちゃんが穏やかに微笑む。
「それじゃあ、ちょっと試してみたいことがある」
俺はコオニビに近づき、バトル圏内に入る。
コオニビが俺たちに迫りくる。
手を向けて、
「《雷火》。俺の仮説が正しければ……」
コオニビも俺に向けて火を吹いたが、《雷火》に押し負け、エフェクトとともに消えた。
「同属性の魔法同士がぶつかった場合、力が強いほうが勝つ。特別な場合を除いてね」
「特別な場合、ですか?」
鈴ちゃんの問いに、俺は答える。
「カドゥケウスと凪の風魔法は、互いに相殺した。五行でも、同じもの同士が互いを相殺する関係があるけど、旅兎の人たちはそれについて言及しなかった。そのことから、二人の風魔法が《ケリュケイオン》同士という特別なものだったからだと予想できた。結果として、いまのコオニビとの戦いがそれを証明してくれた」
「きっとそうよ~! ツナミさんたちが同じ位置について触れたのは、『風』から『雷』だけだったものね」
「コオニビもそれで倒せましたし、その考え方でいけば問題はなさそうですね」
と、逸美ちゃんと鈴ちゃんが俺の見解に同心した。
凪は人差し指を立て、
「あと、スイリュウに鈴ちゃんの氷魔法《牡丹雪》はあまり効かなかった。相性は有利だったのにだ。だから、スイリュウは相当強いモンスターだったんだね」
俺は同意する。
「海の王者だしね。また、俺の《天空の剣》は、やはり属性相性以上に対ドラゴンで効力を発揮する、ということもわかった。これは大きい」
「ちょっと不甲斐ないですが、規格外の強さのモンスターがいることにも気をつけませんとね」
そう言って、鈴ちゃんが口を引き結ぶ。
「まあ、鈴ちゃんは普通に《牡丹雪》で攻撃しただけだったのに対して、俺は有利な魔法をまとった上でドラゴンスレイヤーで攻撃した。もっと言うと、《国士無双》での攻撃力2倍もあったから、ダメージが違うのも当然だよ。気にすることないって」
「はい」
と、鈴ちゃんが笑顔でうなずく。
「とにかく、開くんのドラゴンスレイヤー《天空の剣》でドラゴンを倒して、《ドラゴンの涙》をゲットしよう~」
逸美ちゃんが元気に声をかけて、俺たちは「おー」と拳をあげる。
さらに歩くと。
ついに。
やっと街らしきものが見えてきた。
規模としては街より村って感じだろうか。
五分ほど歩いて、俺たちはとある村に到着した。
《モスクリフト》
岩場にある、集落的な村だった。




