第三章8 『五行と属性相性図Ⅰ』
属性相性は五行思想を元に作ってあります。
五行を知っている方も知らない方も、属性相性については、読み飛ばしたり読み流したりしてくださっても問題ありません。今後作中でも、その都度簡単に説明と解説はしますが、相性を理解していなくても楽しめるようにできたらと思っています。
バトルもこれからより本格的になっていきますので、お付き合いいただけますと幸いです。
また、プロローグに物語序盤におけるキャラクター相関図を追加しました。(2018/09/14)
「属性相性。この世界にも、各属性による相性がある。モンスターや魔法、武器にも属性が付与されているものが多い」
そう教えてくれるのは、《旅兎六人衆》のリーダーであるツナミさん。
属性相性――。
俺がこの世界に入って、ずっと気になっていたことだ。これまでの敵は、カドゥケウス以外じゃ属性相性なんて考える必要がなかった。カドゥケウス戦では凪の風魔法に助けられたものだが、あれは凪がケリュケイオンを持っていたから打ち消し合えただけ。おそらく、別の属性相性を見直してもっと大人数で戦うのが定石だったはず。
ミクロップやツムジカは、属性相性を考えれば簡単に勝てる相手だったのか。
エマノンくんが言う。
「これについては、魔法屋で20以上の魔法を購入すれば、より強力な魔法を購入できるようになるついでに教えてもらえるんです。また、どの店舗かは関係ありません」
鈴ちゃんが複雑そうな顔で、
「だからあたしたちは知らなかったんですね」
「で、それを把握すれば、ツムジカやミクロップ相手に苦労することはなくなるってわけだね」
凪がそうまとめた。
知識欲旺盛な逸美ちゃんが質問した。
「あの、属性相性ってどうなっているんですか?」
ツナミさんは紙に図を書いて言った。
「結論から言うと、こうなる。有名な五行思想だ。教養として知っている人も多いかもしれないね」
エマノンくんは相性図を指差して、
「それに加えて、『風』と『雷』が『木』に含まれ、『氷』が『土』に、『毒』が『水』に含まれます。ちなみに、『金』は金属系の武器やモンスター、『木』は植物系モンスターにあたりますね。『光』と『闇』は互いに相殺する」
図は各属性を結ぶように星形になっている。
「そんな相性があったのか。五行くらいは一般教養として知っていたけど、そこにちょっとしたアレンジもあるんだな」
俺のつぶやきに、エマノンくんがうなずいて続ける。
「基礎になっているのは、五行と陰と陽。背景に四元素があります。五行は、『木』・『火』・『土』・『金』・『水』。それらは順番に巡って次の性質を生み出します。すなわち相生。そして、『木』・『土』・『水』・『火』・『金』の巡りで次の性質を打ち滅ぼす。すなわち相剋。これが五行なり」
なるほど。
「中国の自然哲学ね」
と、逸美ちゃんがつぶやくと、ツナミさんはうなずいた。
「相生は以下のようになる」
木生火――木は燃えて火を生む。
火生土――物が燃え、残った灰が土に還る。
土生金――鉱物や金属は土の中から採掘される。
金生水――金属の表面からは凝結によって水が生じる。
水生木――木は水によって養われる。
「続いて、相剋」
木剋土――木は土に根を張り、養分を吸い取り土地を枯らす。
土剋水――土は水を濁し、水をせき止める。
水剋火――水は火を消し止める。
火剋金――火は金属を溶かす。
金剋木――金属の斧が木を傷つけ、切り倒す。
と、言って、ツナミさんはまとめる。
「これらの関係が五行に対応した相性になる」
エマノンくんがこれに解説を加える。
「《ルミナリーファンタジー》において、相生は『掛け合わせることで魔法や武器の効果を高める』、相剋は『弱点を突くことができる』。そう言い換えられます。ちなみにこの破線の相耐とは、《ルミナリーファンタジー》内での造語です。矢印の向きに攻撃したとして、それに対し耐性を持つことを意味します」
「つまり、『火』は『金』の弱点を突くことができ、『木』と『風』と『雷』と『金』に対して耐性を持つ。しかし、『水』と『毒』と『土』と『氷』に耐性を持たれているため、攻撃が軽減されてしまう、ってことか」
例を挙げてそう言うと、ツナミさんが首肯した。
「大半のモンスターは弱点より耐性のほうが多いから、うまく弱点を突かないと苦労するのも仕方ないさ」
「しかしツナミは人がいいよな。ここまでいろいろ教えてよ」
タラコさんがそう言うけど、ツナミさんはかぶりを振る。
「そんなことないさ。ただ、ゲームのテストプレイが始まってすぐならこれらの情報は交渉の材料になる。でも、ここまで来て残りはあとわずか。そんな状況じゃ、情報の独占をしてもあんまり意味がないだろ? それより、同じゲームをするプレイヤーの先輩として、楽しむためのコツを教えるって感じだよ」
本当にツナミさんはいい人みたいだ。
「このゲームが世に出たら、どうせ大量のプレイヤーによってすぐに属性相性くらいネットに転がってしまう。だから惜しむほどの情報ではありませんが、丁寧に教えるツナミさんは優しいですよ」
と、エマノンくんも言った。
さらにエマノンくんは、さっきツナミさんとタラコさんが話している間に書いてくれた早見表を俺に差し出した。
「どうぞ。こちらが早見表です。先程ツナミさんが描かれた相性図と合わせて見ればわかりやすいかと思います」
「ありがとう」
これには本当に感謝だ。
すぐにこれほどのものを書けるなんて、やはりエマノンくんは頭の回転がとても速く、情報処理能力が高い。
凪が聞く。
「じゃあ、背景にある四元素とは?」
「四元素とは、『地』・『水』・『火』・『風』。その四つのエレメントから成る。だったね、エマノン」
ツナミさんに振られて、エマノンくんが答える。
「ええ。これも教養として存じている方も多いでしょう」
俺は顎に手をやって、
「確か……。物質の四態を表し、互いに、『地』と『水』は良好、『火』と『風』は良好。『地』と『風』は相性が悪く、『水』と『火』も相性が悪い。ですよね?」
「そう。よく知ってるわね」
と、ドールさんが笑みを浮かべる。
「オレはいまだによくわかんねえのに、スゲーな」
「タラコさんはちょっとくらい勉強してください」
エマノンくんがジト目でそう言うと、タラコさんはがしっとエマノンくんの肩を組んで、
「そういうのはオマエが得意だろ? これも役割分担だよ」
「もう、タラコさんは」
と、やや呆れ気味なエマノンくんだった。




