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ルミナリーファンタジーの迷宮  作者: 蒼城双葉
第二章 ソロモン島編
70/187

第二章28  『蛇神カドゥケウス』

 俺たちが入ったのは、大きな部屋だった。

 (おく)にはまた、(とびら)があり、その先にも部屋があることが見て取れる。

 しかし。

 この部屋の()(なか)には、ヘビのモンスターが目を(つむ)り、(うで)()んでたたずんでいた。

 名前は、カドゥケウス。

 表示されているのはやはり名前だけで、HPゲージはない。

 ヘビといっても、カドゥケウスは二足歩行の獣人型(じゅうじんがた)モンスターで、二本の()がヘビになっており、まるでケリュケイオンのように下半身(かはんしん)()きついている。顔はややドラゴン(ふう)、タンタロスに()た、ボス特有(とくゆう)のオーラがある。右手に持つ武器(ぶき)は、()(かま)のように湾曲(わんきょく)した形状(けいじょう)短剣(たんけん)――ハルペーだ。

 やっぱりボス戦か。

海賊(かいぞく)と戦うだけじゃ、お(たから)はくれないみたいだね」

 俺がつぶやくと、凪はにやりとしてうなずく。

「当然。そうこなくちゃおもしろくない。ステージの最後はボス戦。それがお約束(やくそく)で、わくわくするってもんさ」

「だな」

 それには俺も同意(どうい)だ。

 逸美(いつみ)ちゃんがこの部屋の中央に鎮座(ちんざ)するボスを見て、

「あのモンスターの名前――カドゥケウスは、ヘルメスの(つえ)《ケリュケイオン》の(べつ)(めい)よ」

「だからヘビが()きついてるんですね」

 と、(すず)ちゃんが言った。

 凪が目を細めて、

「なるほど。これは、やるしかないな」

 さらに一歩進み出る。

 すると。

 目を閉じて鎮座(ちんざ)していたカドゥケウスは、目を()け、凪を見据(みす)えて言った。

「来たか、人間よ。そちも知っているであろうが、この部屋の(おく)にある(とびら)の先には、《ルミナリー》が()()まれた宝玉(ほうぎょく)がある。ワタシはそれを守る者。(ほこ)り高き蛇神(じゃしん)。名はカドゥケウス。魔王様(まおうさま)封印(ふういん)するパワーを持つ宝玉(ほうぎよく)を、ここに閉じ込め、外に出さないのがワタシの(つと)め。宝玉(ほうぎよく)が欲しければ、ワタシを(たお)してみせよ」


挿絵(By みてみん)



 バトルが始まった。

 セリフを言い終えるや、カドゥケウスは凪を攻撃(こうげき)する。

 短剣(たんけん)ハルペーが凪の喉元(のどもと)()びた。

「よっと」

 凪は後ろに下がって()けた。

 ()(とど)寸前(すんぜん)というところだ。

先輩(せんぱい)(あぶ)ないですよ。いきなり危機一髪(ききいっぱつ)じゃないですかっ。《韋駄天の翼(ハイクイックネス)》」

 鈴ちゃんの()(じよ)()(ほう)韋駄天の翼(ハイクイックネス)》。

 これによって、俺たちパーティーの素早(すばや)さが倍になる。

 パーティーメンバー四人全員の足首に(つばさ)()えるエフェクトがついた。ついでにハネコのまんまるの身体(からだ)にも(つばさ)のエフェクトがかかる。

「ハネコちゃん、《かぎしっぽ》」

 ふわりとハネコは鈴ちゃんの(かた)から飛び上がって、くるりんとしっぽを丸めて、魔法を(とな)えた。

「ニャフ!」

《かぎしっぽ》

 この魔法で、俺たちパーティーの(うん)上昇(アップ)する。(てき)からの攻撃(こうげき)(はず)れやすく、味方の攻撃(こうげき)がクリティカルヒットしやすくなる。さらに状態異常(じょうたいいじょう)にもなりにくくなった。

 ふと。

 俺は占い師のアナンさんの言葉を思い出した。

「鈴ちゃん、光る風を吹かせるんだ!」

「光る風?」

 横目に俺を見て、鈴ちゃんが聞く。

「ハネコが使える、もう一つの魔法だよ! アナンさんが言っていた光る風は、それのことだったんだ。お宝を守る者――すなわちボス。そのボスが、俺たちの力を(うば)攻撃(こうげき)仕掛(しか)けてくることを、アナンさんは暗喩(あんゆ)していた。いまこそハネコの魔法を使うときだ」

「なるほど! そういうことだったんですね! はい、わかりました! ハネコちゃん、続けて《風のカーテン(エアロバリア)》」

「ハニャ!」

 ハネコが小さな羽をはばたかせる。

 ふわりと気流が発生して風が黄色く光り、風のバリアが()られた。

 ハネコが(とな)えた風魔法《風のカーテン(エアロバリア)》。

 その効果は『戦闘中(せんとうちゅう)(てき)からの状態変化魔法じょうたいへんかまほう無効(むこう)にするバリア。ただし、攻撃(こうげき)によって(しよう)じた追加効果(ついかこうか)はその(かぎ)りではない』。

 つまり、(ねむ)らせられたり攻撃力(こうげきりょく)を下げられたりなどの厄介(やっかい)な魔法をされても、風の(かべ)が俺たちパーティーを守ってくれる。強力な補助魔法(ほじょまほう)だ。しかも、《かぎしっぽ》同様(どうよう)戦闘中(せんとうちゅう)は効果が永続(えいぞく)してくれる。

 これで。

 アナンさんが忠告(ちゆうこく)してくれた、俺たちの力を(うば)うことへの対策(たいさく)ができた。

 簡単に言えば――

 相手から攻撃(こうげき)を、純粋(じゅんすい)魔法攻撃(まほうこうげき)物理攻撃(ぶつりこうげき)(しぼ)れたのだ。相手自身が能力(のうりょく)アップする魔法を(とな)える可能性もあるけど、ハネコのおかげで(たく)大幅(おおはば)(せば)められた。

 いまのところハネコが使える魔法はこの二つだけだけど、モンスターはバトルをこなすと技を覚えるらしい。可愛(かわい)らしい見た目に似合(にあ)わず、本当に心強いことである。

「ありがとう、ハネコちゃん」

 お(れい)を言われて、ハネコはパタパタと俺たちの上空へと飛んで行き、攻撃(こうげき)を受けないように避難(ひなん)する。

 鈴ちゃんは《氷晶(ひようしよう)(かま)》を(かま)え、逸美ちゃんは《()やしの(つえ)》を(かま)え、俺は《天空(てんくう)(つるぎ)》を引き抜いた。

「逸美ちゃんは(うし)ろからフォローお願い」

「わかったわ。みんな、気をつけて」

「はい」

 と、鈴ちゃんがうなずく。

 さっそく逸美ちゃんが補助魔法(ほじょまほう)(とな)える。

「《フィジカルバリア》、《マジカルバリア》」

 よし。

 これで、物理攻撃(ぶつりこうげき)魔法攻撃(まほうこうげき)半減(はんげん)できる。

 強力なボス相手でも、これならすぐにやられない。

 そして。

 くるんと《ケリュケイオン》を回して、凪はビッとカドゥケウスへ向けた。

「さあ。ぼくの魔法(まほう)を見せようか」


 カドゥケウスは冷静(れいせい)()う。

「そちの(つえ)、なにやら不穏(ふおん)(かがや)きが()められているな。ワタシにこそふさわしい代物(しろもの)であろう。おそらくそちの魔法はワタシには()かぬ」

 流暢(りゅうちょう)にしゃべる姿(すがた)は、タンタロスとは別のタイプの(こう)()さがある。

 しかし、魔法が()かないってどういうことだ。

「つまり、同属(どうぞく)には無効(むこう)ってことか……?」

 俺がそう口をつくや、凪は(てき)の言葉を聞いていなかったのか、魔法を(とな)える。


「《ラファール》」


 風が()()きる。

 それを、カドゥケウスは左の手のひらを向けると。

 かき消してしまった。

「ワォ」

 と、凪はクールに微笑(ほほえ)む。

 カドゥケウスは目を細めて言う。

(おろ)(もの)め。()かぬと言っただろう。そちにとって、ワタシは天敵(てんてき)なのだから」

「ゲームじゃよくあるよね。同じ属性(ぞくせい)で打ち消し合ったり、抜群(ばつぐん)でダメージが入ったりすることがさ」

 凪はまだ、余裕(よゆう)を持っている。

 鈴ちゃんが不安そうに凪を一瞥(いちべつ)して、

「だとすれば、先輩(せんぱい)はこの(たたか)いでは(やく)に立たないかもしれないんですよ?」

「なに言ってるんだ。(ぎゃく)さ。俄然(がぜん)、有利になったじゃないか。ぼくがいるんだぜ?」

 二人がしゃべっている(あいだ)に、鈴ちゃんに向かってカドゥケウスが左手を向けた。


「《ブラスト》」


 ()()すような突風(とっぷう)が、鈴ちゃんへと()()む。

 凪の《ラファール》より威力(いりよく)は上だ。

「きゃっ」

 が。

 瞬間(しゆんかん)、凪は鈴ちゃんの前へと入り、《ケリュケイオン》の先を向けた。

 と。

 突風(とつぷう)が、《ケリュケイオン》に()()まれるように消えてしまった。

「え……」

 (おどろ)く鈴ちゃん。

 凪はシニカルに言った。

「打ち消し合うのさ。《ケリュケイオン》同士(どうし)相殺(そうさい)する。(てき)にだけ()かないってのも、理屈(りくつ)に合わないからね。どうだい? ぼくも大概(たいがい)、キミの天敵(てんてき)と言えるだろう?」

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