第二章24 『石版』
《ゴダン神殿》の入口に到着してみると。
やはり、《ゴダン神殿》の扉が開いていた。
「開きましたね!」
「やったっ。開いたね!」
「これで《ソロモンの宝玉》を見つけられるね。一歩前進よ!」
鈴ちゃん、俺、逸美ちゃんと扉が開いたことに喜んでいたが、凪だけは喜ぶより先に走り出していた。
「開いたぞー」
「待ってください、せんぱーい!」
と、鈴ちゃんが凪を追いかける。
逸美ちゃんが二人の様子を見て、うふふと微笑み、俺に聞いた。
「ところで、地面の下で地響きみたいなのがあったじゃない? あれってなにかしら?」
「ああ、あれ? たぶん、歯車だよ。石像は台座の石ごと押して運べた。それは地面にそういう仕掛けがあったからさ。動かしたことで歯車のかみ合わせが変わり、扉が開いたんだよ」
「なるほどー」
まあ、ゲームだしその辺は設定ってだけなんだろうけど。
「さ、俺たちも中に入ろう」
うん、と逸美ちゃんがうなずく。
《ゴダン神殿》に入った。
中は、薄暗かった。
外からの光がわずかに漏れて入ってきているが、探索は厳しそうだ。
けれども、入ってすぐ、扉の前の場所には、炎をともすための台座が左右に二つある。スイッチらしきものがあり、凪がなんにも考えなしにケロッとした顔でひょいと押した。
俺は慌てて、
「おい。勝手に押して大丈夫なのかよ」
凪が返事をする前に、炎がボッとともった。
「ほうら。大丈夫だよ。考えるまでもなく、聖火をともすためのボタンに決まってるじゃないか。きっとこれで他の階も明るくなったはずさ」
「今回はよかったけど、一応慎重に行くぞ」
「わかったわかった」
これは絶対わかってない。しかしそのおかげで視界が開けた。
内部を見ると、左右に細い道が分かれていて、真ん中が広いスペースになっている。どうやら祭壇のようだ。
自然と四人の足は祭壇に向かったけど、ここにはなにもない。
「なにもないなら次行こうぜ」
凪がふらりと引き返す。
「凪、これからどうする? 左右の道どっちに行こうか」
「ぼくはどちらでもいい。試しに両方見てみるのがセオリーかな」
ということで、両方の通路を右から順番に見た。右が下に降りる階段、左が上にのぼる階段になっている。
上へとつながる階段の前で、逸美ちゃんが人差し指を立てて、
「とりあえず、上に行ってみるのはどうかしら? 外から見た感じだと、上は二階しかなさそうだけど、下には何階あるかわからないもの」
「そうだね。上にあったらラッキー、なかったら下へ」
「ですね」
俺と鈴ちゃんがうなずき、
「こっちこっちー」
勝手に上への階段を上り始めていた凪を追って、俺たちはそのまま上に向かった。
二階に到着すると、両側が壁になった細い通路になっている。細いといっても幅三メートルはあるが、ずっと部屋の端までは行かずにすぐに曲がり角があるため、この二階は迷路になっているんだと思う。
いきなり。
人魂のような鬼火のような炎が見えた。
「名前が表示されてる。モンスターだ」
「コオニビだってさ」
「小さな鬼火のことね」
俺と凪と逸美ちゃんが、とらえどころのないコオニビを見ていると、鈴ちゃんがハネコを抱きしめてうずくまっていた。
「ひぃ!」
「あらら。鈴ちゃん、怖がってる」
と、俺は苦笑い。
逸美ちゃんは困ったように小首をかしげる。
「幽霊っぽいモンスターだけど、どうやって倒したらいいのかしら?」
「よし。やってみますか。開の炎と雷のブレンド魔法も、鈴ちゃんの氷の魔法も、なんとなく相性悪そうだからね。ぼくがやる。火は風で吹き消すものだ。《ラファール》」
「ちょっと待って」
思い出したことがあって止めるが、凪はもう攻撃していた。
しかし、凪の風魔法は確かに相性がよかった。コオニビの身体はぼぉっと盛んに燃え上がってふくらみ、風船が割れるように縮んでしまった。HPも半分ほどになる。
「どうしたのさ?」
「四大元素の相性を思い出したんだ。火・水・風・地。ここで、風は火を強めるって前に逸美ちゃんが言ってた覚えがあるんだよ」
「そうね。火と風は相性がいいから」
と、逸美ちゃんがうなずく。
そして、水と地の相性もいい。
「ただ、この情報と目の前で起こったことから察するに、コオニビは火の属性を持ち、凪の風魔法で火を強めたが、ある一定の大きさに達したら、コオニビのキャパシティをオーバーしたことで大ダメージを受けた」
「要するに、相性がいいってことか」
「さらに、ハッ!」
斬りかかってみるが、俺の攻撃は透かされた。
「やっぱり、幽霊型のモンスターに物理攻撃は効かないみたいだね」
「だから任せておきなって。《ラファール》」
二度目の凪の魔法。
これで、コオニビは倒せた。
凪は鈴ちゃんの肩に手を置く。
「せ、先輩……」
「神殿や遺跡には、幽霊がたくさんいるもんさ。諦めな」
「ひぃ」
また鈴ちゃんが怖がっていた。
道なりに曲がって曲がって進んでゆくと、分かれ道。
「どっちにしようか」
俺がみんなを見ると、凪が言った。
「ここは《迷いの森》で開が言っていたように、壁伝いにすべて回ればいいさ。幸いこの中はあまり大きくないしね」
「そうだね」
右へ曲がり、右手側の壁を伝うように進むことにした。
途中、行き止まりに石版が落ちていたのでそれは拾っておいた。
「しかしゲームなら俯瞰でマップが見られたらいいのにな~。じゃなかったら、自分で描けるマッピング機能とかさ」
「先輩、さっきはわからないからおもしろいとか言ってませんでした? もう飽きちゃったんですか?」
凪と鈴ちゃんがおしゃべりしている。凪は「違うよ、それはそれ、これはこれさ」などと言っている。
「あ、鈴ちゃん」
「なんですか?」
「コオニビ」
「きゃっ」
そんなやり取りをしながらも進むと、次第に鈴ちゃんもコオニビには慣れていった。
このあとも。
さらにいくつかの行き止まりを経て、ぐるりと一周して階段部に帰ってきた。
「この階には《ソロモンの宝玉》はなかったね。下に行こう」
ということで、一階に降りて反対側に回り、地下に向かった。




