表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルミナリーファンタジーの迷宮  作者: 蒼城双葉
第二章 ソロモン島編
62/187

第二章20  『凪の黒魔法』

 (なぎ)が《(なぞ)のオカリナ》をアイテム(らん)にしまおうとすると。

 逸美(いつみ)ちゃんは言った。

「さっきの凪くん、(ふえ)()いてヘルメスみたいだったわ」

「へえ。ヘルメスって(ふえ)()くんだね」

 (つばさ)のついた帽子(ぼうし)とサンダルという稀有(けう)恰好(かっこう)をしている凪を見かけて、ヘルメスオタクな少年がおもしろがって《ケリュケイオン》や魔法(まほう)(あた)えただけだったりして。

 なんて、いま考えても答えは出そうにないよな。

「それにしても、あのオカリナにあんな使い方があったなんてね」

 俺がそう言うと、凪は得意(とくい)げにウインクした。

「まあ、咄嗟(とっさ)機転(きてん)ってやつさ。意表(いひょう)をつくにはいいかと思ったんだ」

 (すず)ちゃんが(あき)(がお)で凪を(はす)に見る。

「ホントに凪先輩(せんぱい)(ひと)(さわ)がせですよね。でも、魔法を覚えるなんてすごいじゃないですか。どんな魔法なんですか?」

「風を起こして攻撃(こうげき)してたよね? あと、アーゴスの首元についてた(ぬの)は自分の意思で(あやつ)ったの?」

 鈴ちゃんと俺に(たず)ねられて、凪は思い出すように答えた。

「少年は、風魔法(かぜまほう)だって言ってたな。フランス語で『突風(とっぷう)』って意味なんだってさ。それで、キミは能力(のうりょく)(いちじる)しく低いから普通(ふつう)風魔法(かぜまほう)じゃパワーが()りないからね、とか言ってたんだ。なんかぼくだけの特別(とくべつ)仕様(しよう)みたいなこと言ってたぜ。しかし失礼(しつれい)しちゃうよね」

 俺は苦笑(くしょう)して、

結構(けっこう)ハッキリ言う子なんだな」

「そうなんだ。ハッキリ言う子だった。で、アーゴスの(ぬの)はラッキーだと思う。ハネコの《かぎしっぽ》の効果じゃないかな」

「やっぱりそうか。さすがハネコ」

 と、俺がハネコを見ると。

(かい)さんに()められてるよ」

 鈴ちゃんはハネコを()でる。本当に鈴ちゃんはハネコを可愛(かわい)がっているな。ハネコのほうはまったりした顔で、心地よさそうにしている。

 俺は凪に言った。

「ちゃんとした風魔法(かぜまほう)なのに、魔力0で使えるなんてすごいね。魔法打ち放題(ほうだい)だよ」

「うむ。魔法のことならぼくに(まか)せたまえ。この魔法使いナギにね」

 一応、ワープと風魔法が使えたら、魔法使いといえるくらいにはなったか。

 逸美ちゃんが拍手(はくしゅ)する。

「すごいわ、凪くん」

「ぼくは自在(じざい)に風を(あやつ)れるようになったのだ。わはは」

自在(じざい)は言い過ぎでしょ」

魔力消費(まりよくしようひ)なしで使えるなら、もう一度やってみてくださいよ」

 と、鈴ちゃんにリクエストされる。

「いいぜ。どら。さっきの手下の海賊(かいぞく)が使ってたサーベルがまだ(ふね)の上にあるから、風の力で()き飛ばしてみせよう」

 凪が《ケリュケイオン》をかざしてサーベルに向ける。

「それっ! 《ラファール》」

 が。

 サーベルは動かない。

「あれ? おかしいな」

先輩(せんぱい)、さっきのはたまたま風が()いたタイミングで魔法を(とな)えたフリしただけだったんですか? それとも、もうあれくらいに重い物だと()かべることもできないとか?」

 鈴ちゃんが普段(ふだん)のお返しと言わんばかりにニヤリと笑って凪を揶揄(やゆ)する。

 黒魔法0のやつに魔力切れもないだろうけど、本当にどんな仕組みなんだか。コツがあってうまく発動できないのか?

 ハネコも()きてしまったのか、パタパタと飛んで(せん)(しゅ)に行き、まったり海を(なが)めている。ハネコが(すわ)るのにはちょうどいい形だったので、ハネコはリラックスしている。俺もハネコの横に行き、みんなの様子を見る。

 その(あいだ)も凪は、「《ラファール》、《ラファール》」と何度も魔法を(とな)える。

「ほーら先輩(せんぱい)、もういいですから、終わりにしましょ」

 楽しそうに皮肉(ひにく)っぽく笑って鈴ちゃんが言ったところで、凪が躍起(やっき)になって《ケリュケイオン》を振り回しながら、

「《ラファール》」

 と(とな)えた。

 そのときだった。

 ふわり。

 鈴ちゃんのスカートがめくれて、パンツが丸見えになった。俺の位置からは見えないけど、()(しよう)(めん)の凪からは完全に見えているはずだ。

「や、やった! やっぱり魔法が使えたぞ。成功だあ」

「軽い物なら持ち上がるのかもしれないわね!」

「あれはマグレじゃなかったのだ」

 (よろこ)びの声を上げる凪と素直(すなお)に感心する逸美ちゃん。二人とは対照的(たいしょうてき)に、鈴ちゃんはぼっと顔を()()にして(かた)まり、(おく)れてスカートを()さえる。


挿絵(By みてみん)


「…………!」

「そーら。《ラファール》! 《ラファール》! 《ラファール》! 《ラファール》!」

「すごいわぁ」

 何度も凪は魔法を(とな)えて、その(たび)めくれそうになるスカートを押さえ続ける鈴ちゃん。

 逸美ちゃんは凪が魔法を使えたことに「わー!」と拍手(はくしゅ)までしてる。

 ついに、鈴ちゃんが怒鳴(どな)った。


「いい加減(かげん)にしてくださいっ!」


 (りき)んで(こぶし)(にぎ)って声を上げたから、鈴ちゃんのスカートはふわりとめくれていた。それが元に(もど)り、凪はやっと(われ)に返った。

「ごめんごめん。さっきの魔法がマグレじゃないってわかって、ついついはしゃいじゃってさ。いやあ、しかしいい魔法が手に入った」

 鈴ちゃんはまだ赤面(せきめん)したまま、軽蔑(けいべつ)するように凪をジロリと一瞥(いちべつ)して、

「あんな卑猥(ひわい)な魔法のどこがいい魔法なんですか」

「ははっ。だからごめんって」

 なんだこれ。大長編(だいちようへん)ネコえもんでも()たような光景(こうけい)を見たぞ。まったく。俺はひとり(あき)れてため息をついた。

先輩(せんぱい)、今後は魔法の使い方には充分(じゆうぶん)気をつけるように。いいですね?」

 説教(せっきょう)する先生みたいな口ぶりの鈴ちゃんに、凪はケロッとした顔で答える。

「わかったよ」

先輩(せんぱい)反省(はんせい)してます?」

「してるしてる」

「凪くんはいい子だもん、次からは大丈夫(だいじょうぶ)よね」

「もちろんさ」

「さっすが~」

「どうだか。(あや)しいですね」

 俺は(あき)れながらおバカをしている三人の様子を見ていたけど、俺の(となり)にいるハネコは三人を見もしない。

「やれやれ。ハネコにまで(あき)れられてるよ」

 と、俺は(たん)(そく)する。

 さっきアーゴスからもらった地図に目を落とすと、ハネコが地図を(のぞ)いてきた。

「おそらく、遺跡(いせき)の中にあるバツ(じるし)が、《ソロモンの宝玉(ほうぎょく)》のありかだ。(がん)()ろう。(たよ)りにしてるよ」

「ハニャ」

 最初の《ルミナリー》――七つのアイテムを、手に入れてみせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ