第二章18 『開VS海賊アーゴス』
海賊たちとの戦闘が始まった。
俺はアーゴスと一騎打ち。
逸美ちゃんと鈴ちゃんは手下の海賊たちを相手にしていたが、鈴ちゃんがさっそくひとり倒したとき――
海賊船から、またひとり、海賊がやってきた。
さっきの手下と同じような出で立ちだ。
海賊は俺たちの船に乗り移り、鈴ちゃんにサーベルを向ける。
「親分、助太刀しますぜぃ!」
「えー! いま倒したばっかりなのにー」
驚く鈴ちゃん。
「やだ~」
と、逸美ちゃんもマイペースながらリアクションする。
これは、ボスであるアーゴスを倒さない限り、永遠に仲間を呼ばれるパターンなのか?
そう思ったのも束の間。
逸美ちゃんが鈴ちゃんのフォローを受けてひとり倒したとき、
「親分、助太刀しますぜぃ!」
また、海賊船から、海賊がやってきた。
「やだ~、また来てる~」
やっぱりだ。
俺がアーゴスを倒さないと、このループから抜け出せない。
「二人共、大丈夫?」
俺が聞くと、鈴ちゃんはすぐに気を引き締めたように答えた。
「はい! さっきの戦いで、だいぶ《氷晶の鎌》の扱いにも慣れてきたので!」
それは心強い。
鈴ちゃんの武器なら接近戦から中距離戦でも、かなりのパフォーマンスを期待できる。
逸美ちゃんは魔法を唱える。
「《フィジカルバリア》。最初にバリアを貼って一分経ったから、貼り直しておいたわ。わたしと鈴ちゃんで協力して戦うから、開くんはアーゴスをお願いね!」
「うん、ありがとう。頼んだ! でも、無理に倒さなくてもいいよ」
「え?」
と、逸美ちゃんと鈴ちゃんが声をそろえた。
「たぶん、アーゴスと誰かを一騎打ちにするシステムなんだ。だから、逸美ちゃんと鈴ちゃんがいくら手下を倒しても、さっきの繰り返しになる。俺がアーゴスを倒さないと終わらないんだ」
「そうだったのね」
「了解しました!」
うん、と俺は二人にうなずいた。
「よそ見してていいのかよッ!?」
金棒が振り落とされる。
俺はサッと後ろに下がって避けた。
バキッと船の床が割れる。
くそう、簡単に俺たちの船を壊してくれて。
「これは、さっさと倒さないとな」
じゃないと、船が壊れて沈んでしまう。それに、いつまでも逸美ちゃんと鈴ちゃんにも手下の海賊たちと戦わせているわけにもいかないからな。
「開さん、ひとつだけ手助けしておきます! 《韋駄天の翼》」
鈴ちゃんが唱えた魔法。
これにより、俺たちパーティーの素早さが2倍になる。
パーティーメンバー三人、つまり俺と逸美ちゃんと鈴ちゃんの足に翼が生えたエフェクトがつく。
「ありがとう! 鈴ちゃん」
「くらえ!」
アーゴスが大きな金棒をブンと振り回して上から下に落とす。
俺はそれをさらりと避ける。
かなり身体が軽い。
本当に足に翼が生えたみたいだ。
俺は《天空の剣》で斬りかかった。
しかし。
左手のフックで受け止められる。
フックと剣がカキンと金属音を鳴らしてすぐ、俺の横から、振り落とされたばかりの金棒が横から襲ってきた。
「!」
横殴りで俺に向かってくる金棒を足で押さえようとしたが、俺の体は軽く吹き飛ばされてしまった。
自分のHPを見ると、八分の一くらいのダメージをくらっている。
なかなかの攻撃力だ。
《フィジカルバリア》が貼られているのにこれほどの威力とは。
迂闊には近寄れないか。
こいつ、強い……!
チラと横を見ると、逸美ちゃんと鈴ちゃんは手下たちと戦っていた。しかし二人は、相手の攻撃を受け流すようにして、うまく戦えている。俺も安心してアーゴス戦に集中できる。
再度、俺は《天空の剣》を構える。
少し距離を取りつつ、俺とアーゴスは剣と金棒で戦った。フックとの合わせ技をくらわないためだ。
けど、これだと決定的なダメージを与えられないのがもどかしい。
こうなったら、やはり、魔法を使うしかない。
俺の黒魔法は、最高値の150。
さらに、ゼウスの力を持った魔法。
使い所だろ、ここが。
まずはこれだ!
「《雷火》」
そう唱えて、剣先をアーゴスに向けた。
すると、雷が走る如くアーゴスに直撃し、そして、炎が爆発するようにアーゴスにダメージを与えた。
規模としては、普通の人間が爆発するくらいに強力だ。
だが、アーゴスは強敵だった。ダメージこそだいぶ負った顔をしていても、身に着けている海賊服のおかげか、まだまだ戦えそうな気配である。
一応、これはボス戦のような扱いなのか、アーゴスのHPゲージは表示されていない。けれどおそらく、いまの感じなら、あと三回も《雷火》をヒットさせられれば勝てるだろう。
せっかくだから、俺も《マグナマキナ城下町》で買った魔法を試させてもらおう。
「《国士無双》」
自身の攻撃力を、5回攻撃分だけ2倍にする技。
ここで。
アーゴスが金棒を振り落とした。
こいつには、いくつかの攻撃パターンがある。それを利用する。
俺はさっきと同じように金棒を避けて、今度は《天空の剣》で、アーゴス本人ではなく、フックを狙った。
「《雷火》」
雷と炎が剣先に宿る。
そのまま、俺は剣を振った。
カキン
フックはよい音を立て、雷と炎をまとった《天空の剣》の威力で、ポッキリと折れた。
よし。
やっぱり《天空の剣》と《国士無双》のコンボは強い。
ただ中距離から遠距離の魔法技として《雷火》を使うより、魔法をまとって物理攻撃として使ったほうが威力は高まる。さらに《国士無双》もあれば、竜に翼を得たる如しだ。
これならアーゴスのフックも怖くない。
《国士無双》が発動しているあと4回で仕留める。
アーゴスは、地面に振り落とした金棒を横から薙ぐように回した。やはり、フックに関わらずこの攻撃をしてきた。
俺は横から来た金棒を、剣を縦に構えて受けた。
防げた。
でも、受けだろうと剣を物理的に使っているから、《国士無双》の効果は残り3回……。
「なっ……!」
また距離を取ろうとしたときだった。
アーゴスは、先が折れたフックで殴りかかってきた。
やばい。
よく見ると、折れたはずのフックは、ハチやサソリの毒針のようになっていた。フックが折れたら飛び出す仕掛けだったのか。
両手で剣を構えているから、いまはそれを防げない――
魔法を唱えたとしても、剣の向きからして、相手に当たらない。もしくは手のひらを向けても魔法は放てるけど、剣の柄から手を離せない。
絶体絶命だ……!
が。
突如――俺とアーゴスから少し離れた場所に、凪が現れた。




