第二章14 『占い師アナン』
占い師のお姉さん、アナン。
素顔ははっきり見えないけど、二十代くらいだろうか。口元を黒い布で覆い、全身も占い師らしい黒ずくめの衣装。
アナンさんに、少し占ってもらった。
「あなたはソロモン島という島に行くことになるでしょう。そこで得られる物は、とても貴重で神秘的なお宝です。しかし、それを守る者はあなたたちの力を奪います。その脅威からあなたたちを助けてくれるのは、光る風です。もし目的のお宝を手にしたのち、また道しるべが欲しくなったらおいでなさい」
とのこと。
占ってくれた結果に従うと、俺たちは島に行くことになる。
そのためには、さっきの船に乗る必要があるだろう。
「ソロモンといったら、《ソロモンの宝玉》だね」
「そうね。島に行くってことは、船で航海する先がソロモン島ってことなんだよね?」
「たぶんそうだと思います」
俺、逸美ちゃん、鈴ちゃんと流れを把握したところで、凪が補足した。
「アナンちゃんはお助けキャラだ。ぼくらが次に行くべき道を教えてくれているのさ。さらに親切なことに、アイテムをゲットしたあと、また次の行き先に迷ったらここにくればいいとも言ってくれてる。そうすれば、次に行くべき場所を教えてくれるんだよ」
「ホントに先輩はよく知ってますね」
鈴ちゃんが感心する。
外に出ようとしたとき、アナンさんは凪を見て、
「あら? あなたには、枷がありますね」
「ぼく、キミにはなにも貸してないよ?」
「違うよ。枷。つまり、なんらかの縛りがあるってことだと思うんだけど」
そう言うものの、俺自身もその意味はわからない。
アナンさんは言う。
「代わりに、あなた方にはこの世界の使徒のご加護がありますわ。あなた方はきっと、この世界を救ってくださることでしょう」
俺は後ろから凪に言う。
「枷とか使徒のご加護っていうのが意味するところはわからないけど、俺たちは世界を救うって言ってくれたね」
「キミ。喜ぶのはいいけど、これは誰にでも言う定型句だよ。まあ、ぼくたちはぼくたちで頑張ろうぜ」
なんだよ、定型句か。
みんなきびすを返して館を出る。
俺もお礼を言って立ち去ろうとすると、アナンさんはまるでNPCじゃないみたいに、目元をにこやかに緩めて言った。
「誰にでもは言いませんよ。特にあなたは、全宇宙を支配し、世界を平定するとの予言があります。あなた方はきっと、我々ゲーム世界の住人を、魔王の手から救ってくださるでしょう」
全宇宙を支配?
世界を平定?
我々ゲーム世界の住人を救う?
意味深なことを言うものだから、ついお礼を言いそびれてしまいそうになった。
しかし。
全宇宙の支配と世界の平定だなんて、ギリシャ神話のゼウスのようだ。
そして、ゲーム世界の住人。そんな単語、まるで、自分たちがゲーム世界に住んでいることを理解している意思ある人間じゃないか。それこそ、AIだ。
「それでは、お気をつけて。光る風を忘れずに吹かせなさい」
光る風を、忘れずに吹かせる?
お宝を守る者――すなわちボス。そのボスが、俺たちの力を奪う攻撃を仕掛けてくるか、奪われた状態で戦うクエストなのか。それはわからないけど、俺たちを助けてくれる光る風は、自分の意思で吹かせることができる、ということだろうか。
「おーい。開~」
凪に呼ばれて、アナンさんには「はい」とだけ答えてきびすを返す。
俺はまたアナンさんに背を向け、先に占いの館を出たみんなを追ってここを離れた。




