第二章13 『魔法屋の白魔法』
城下町を歩いているとき。
魔法屋を見つけて、俺たちは入ってみることにした。
店主のおばあさんは、別の街にいたおばあさんと同じような顔だけど、髪と服の色が異なる。
凪はおばあさんに聞いた。
「どんな魔法があるんだい?」
「いらっしゃい。こんな魔法があるよ」
おばあさんは魔法が書かれた巻物を広げて見せてくれた。
攻撃用の黒魔法と、補助用の白魔法。
どちらも豊富にあった。
これまでの魔法屋より魔法の数もずっと多いし、効果が高そうだ。
そんな中で、俺は白魔法が気になった。
「あの。この《国士無双》は、『自身の攻撃力を5回だけ2倍にする』ってありますけど、この5回ってどういう意味ですか?」
「その魔法を使った瞬間からきっちり攻撃5回分だけ適用されるという意味じゃ。剣で斬るなら、5回斬りかかったら効果は終わり。防御として剣で攻撃を受けてもカウントされる。武器や自分の身体が接触したら一回使用したことになるわけじゃな。使用する際には注意する必要があるぞ」
「なるほど。ええと、これって魔法をまとった打撃でも効果はあるんですか?」
「打撃による攻撃力が2倍になるだけじゃ。ダメージそのものはむろん上がるが、魔力を高めたければ、《神機妙算》がよい」
「そうですか」
つまり、《国士無双》だと物理攻撃を5回分2倍の力でできて、《神機妙算》だと魔法を5回分2倍の力で放てるというわけだ。
効果が永続したら強すぎるし、それくらいが妥当か。しかしこれはかなり使えるぞ。
要は、ここぞというポイントで使う魔法ってことだ。
「じゃあ、その二つください」
「まいど」
今度は逸美ちゃんが尋ねる。
「その《国士無双》とかは仲間にはかけられないんですよね?」
「そうじゃ。仲間の補助は、この辺じゃな」
《攻撃上昇応援》と《魔力上昇応援》。
効果はそれぞれ、
『味方ひとりの攻撃力を1回だけ2倍にする』
『味方ひとりの魔力を1回だけ2倍にする』
となる。
「一度だけっていうのが惜しいけど、あると心強いわよね」
「うん。戦略の幅も広がるしね」
「それなら、わたしはこの二つをいただくわ」
「まいど。ちなみに、さっきの《国士無双》と併用もできるから、考えて使うことじゃ」
俺は驚いた。
「へえ、それはすごいね。ボス級モンスターとの戦闘がだいぶ戦略的になるな」
さらに。
逸美ちゃんは他にもなにか見つけたみたいだ。
《フィジカルバリア》と《マジカルバリア》。
効果はそれぞれ、
『味方全員が敵から受ける物理攻撃のダメージを1分間だけ半減する』
『味方全員が敵から受ける魔法攻撃のダメージを1分間だけ半減する』
である。
「強敵相手にも有効じゃから、持っていて損はあるまい」
おばあさんに勧められて、逸美ちゃんはその二つも購入した。あと、『味方全員の体力を少量回復する』という魔法、《ヒールシャワー》も購入した。
続いて。
鈴ちゃんが気になったのは、
《韋駄天の翼》
『味方全員の素早さを1分間だけ2倍にする』ことができる魔法だ。
「あたしはこれをください」
「まいど」
俺や凪といっしょに戦闘の前線に立つ必要がある鈴ちゃんは、逸美ちゃんみたいに常に全体を見ながら補助はできない。けれど、《韋駄天の翼》なら効果が一分間持続するから、戦闘開始直後に使える。
そして、凪はひとつだけ購入する。
「この《英華発外》をおくれよ」
「はいよ」
黒魔法0、白魔法10の凪がどんな魔法を買うのか気になった鈴ちゃんが聞く。
「先輩、それどんな魔法なんです?」
「『自身の魔力を1回だけ3倍にする』んだってさ。ぼくの白魔法10で使える魔法はそれしかなかったんだ」
「そういうことですか。でも、先輩って魔法なんてワープしか使えませんよね?」
ジト目で鈴ちゃんに見られても、凪は胸を張って答える。
「ぼくは見ての通り、魔法使いなんだ。いずれ魔法攻撃も覚えるよ」
「黒魔法0なのになにを言ってるのか……。先輩も、同じ魔力消費で使える《攻撃上昇応援》とかにすればよかったのに」
「もう買っちゃったもーん」
まったく凪ときたら、その場のノリで買い物するんだから。
やれやれ。期待はしてないが、いつかその魔法が役立つときがくるといいな。
3倍は魅力だし俺も購入するか迷ったけど、《神機妙算》との併用はできないとのことなので、使い勝手がよさそうな《国士無双》と《神機妙算》だけでいいと思い、《英華発外》は諦めた。
他にも自分の防御力を上げたり、相手を眠らせたり、相手の攻撃力を一度だけ下げるような技もあったが、ボスを相手には眠らせられないらしいし、有効そうなのはこの辺なので、俺たちは魔法屋を出た。
「あら? あそこに占いのお店があるわよ」
「本当ですね! ちょっと行ってみませんか?」
女子二人が食いつく。
「うん。俺は構わないよ」
「占いか。それはいい道しるべになる」
ということで。
俺たちは、占い師アナンの館に向かった。




