第二章4 『発見!? カブトムシ』
《迷いの森》を歩き回る俺たち。
壁伝いに歩くけど、一向に進んでいる気がしないのは気のせいだろうか。
「そろそろまたオカリナでも吹いてみるか」
凪に言われて、俺は《謎のオカリナ》を吹いてみた。
しかしなにも起きない。
すると。
突然。
ピッと――俺たちの頭上に窓が現れ、鈴ちゃんが映った。
「みなさんおはようございます。今日は遅れてしまいすみません。あたし中学の補習で数学を選択していたので、一限目だけ出てきました」
凪は窓に向かって手をあげた。
「やあ。鈴ちゃん、早かったね。予定では午後ってことだったのに」
鈴ちゃんは得意げな笑みを浮かべて、
「これくらい余裕です」
「でもダメだぜ? 鈴ちゃんひとりの補習のために、夏休み中の先生かり出すなんてさ」
「違いますよっ。補習は全生徒が科目を選択して受けるものなんです。あたしは成績も問題ないのでご心配なく」
確かに鈴ちゃんは頭がいいからその点問題ないだろう。凪はそんな鈴ちゃんの説明も聞かずに呼びかける。
「せっかくならいまからおいでよ」
「時間も時間ですし、あたしは午後から合流します。それより先輩、困ってますね」
ちょっぴりドヤ顔になる鈴ちゃん。いつも凪におちょくられている仕返しと言わんばかりである。
「でもいいところに目をつけましたね。どうです? 先輩。あたしのお助け欲しいですか?」
鈴ちゃんが意地悪っぽく微笑んで、勝ち誇ったように凪を見下ろす。
「いらないよ」
「そうですよね。ふふっ。でも、どうしてもって言うなら――て、いらないんですか!?」
「うん」
ケロッとした顔で凪がうなずく。
急にさみしそうな顔になって、鈴ちゃんが聞いた。
「なんでですか?」
「攻略は自分たちでするから楽しいんだ。そんなものより、ぼくはキミがそばにいてくれたほうが嬉しいけどね」
「なっ、なに恥じゅかしぃこと言ってるんでちゅかっ」
顔を赤くした鈴ちゃんが噛み噛みで凪に言い返すと、ピッと窓が消えた。
さっきまで勝ち誇っていたけど、残念ながらあの反応じゃ鈴ちゃんの負けだ。
凪は頭の後ろで手を組んでつぶやく。
「ちぇっ。せっかくなら早く合流したかったのに、いっしょにゲームしようって言う前に切られちゃった。リアクション担当がいたほうが盛り上がるってものなのにさ。一人だけぼくらの冒険を鑑賞してるだなんて、のんきなもんだなあ」
「のんきなのはおまえだよ。鈴ちゃんはわざわざ急いで来てくれた感じだったろ。それより、さっき鈴ちゃん言ってたね」
逸美ちゃんが聞き返す。
「なにを?」
「いいところに目をつけてるってさ。きっといっしょに見てる潮戸さんから攻略法を聞いて、俺たちの考えが間違いじゃないってわかってるんだよ。きっとオカリナが関係してると思うんだけど……」
「しかし鈴ちゃんには困ったものだよ。答えを聞いちゃうなんて、ゲームの楽しさってのをまるでわかってない。ありゃゲームソフトと攻略本を同時に買うタイプだね」
え、いっしょに買っちゃダメなのか?
凪がやれやれと手を広げた瞬間、ピッと窓が現れ、
「先輩、おしゃべりばっかりじゃダメですよ。もうそろそろお昼ですからね」
鈴ちゃんがそれだけ言うと、また窓は消えた。
凪はぼーっと鈴ちゃんを見てから、俺に言った。
「ほうほう。鈴ちゃんがカリカリしてる。お昼の話までしてお腹がすいたらしい。待たせちゃ悪いし、さっさと行こうか」
「別にお腹がすいたってわけじゃないと思うよ。でも、オカリナはこの森で使うってわかっただけでも収穫だ。とりあえず壁伝いに歩いて行こう」
それらしい方策がないいまでは、壁伝いに進むのが無難だ。今度は凪も反論せず、黙って従った。
歩き出したそのとき。
「あっ、開」
「ん?」
凪が見ている先へ目をやると。
「あれってまさか……!」
「うん。カブトムシだ!」
カブトムシのモンスター、発見!




