第二章2 『緑に囲まれたグリーントーレ』
看板には《グリーントーレ》とあった。
名前の通り緑の多い街で、村と言ったほうがそれっぽい。馬や羊を飼っている家も何軒かあるほどだった。
凪は羊を見ながら、
「この世界には、モンスター以外にも動物がいるんだね」
と、つぶやいた。
確かに、そういう世界観なんだなと思う。普通のモンスターとは別に魔王の手下の悪い魔物もいるし、なんでもありって感じなのかも。
逸美ちゃんが塔を指差した。
「トーレはスペイン語で塔。あの塔が象徴になってる街なのね」
「なるほど。緑いっぱいで街を象徴する塔がある。なかなかいい雰囲気だよね」
と、俺も塔を見上げた。
凪は言った。
「塔より先に、まずは近くにある教会に行って、それから街を散策しつつ情報収集しよう」
街の規模は最初と同じくらい。けれど、武器屋を見てみるとわかるが購入できる装備品の性能は上がっている。
通りを歩いている優しげなおばさんがにっこり笑いかけて、
「あらあら坊やたち。こんななにもない街だけど、ゆっくりしていってね」
羊飼いの家では、おじさんが話を聞かせてくれた。
「うちで飼ってる羊は扱いが難しくてね。普通の犬笛で犬を走らせても言うことを聞かない」
凪が興味なさそうに通り過ぎようとしていたが、ローブのパーカー部分をつかんで引き止め、俺はおじさんの話に相槌を打った。
「それは大変ですね。あの、そうしたらどうやって羊を誘導するんですか?」
「ああ。それがおかしなことに、おれがオカリナを吹くとなぜかおとなしくなって言うことを聞くんだ。そうだ、このオカリナをあげよう」
「いいんですか? ありがとうございます」
お礼を言って、オカリナを受け取った。そこで凪が俺の背中をポンと叩く。
「開。ナイス。普通に話しただけなのにオカリナをもらうなんて、ファインプレーだよ」
「どういうこと?」
しかし凪は手を広げて、
「さあ。使い道は不明。だけど、きっとどこかの攻略アイテムさ。で、キミの質問がそのアイテムをもらうための条件だったのさ」
ゲーム勘のない俺にはわからないが、このアイテムは大事にしまっておこう。オカリナはアイテム一覧に追加しておいた。
《謎のオカリナ》
説明文にもどこが謎なのか書いていないが、いつか使い所があるだろう。
そして、やっとこの街を象徴する塔へと向かう。
少し高台になっている場所に、塔はある。
てっぺんには鐘があるから、ヨーロッパの教会とかの鐘楼っぽいのかな。
塔の上まで行くと、大きな鐘の前で、街を見下ろしているおじいさんがいた。
「ここは《導きの塔》。ワシは旅人が道に迷ったときにここへ辿り着けるよう、決まった時間に鐘を鳴らしておる。六時、十二時、十八時じゃ」
一回目に話しかけたらこんな答え。続いて二回目には、情報をくれた。
「ここから北東に1キロ離れた場所に、《迷いの森》がある。《迷いの森》の先にあるのが《ミストフィード》の港町じゃ」
「他になにかありますか?」
三度目の質問で、
「その森の中でも、この鐘の音は聞こえる。迷ったら鐘の音を頼りに帰ってきなさい」
四回目になると、また「ここは《導きの塔》」と話が戻った。
しかしこれで進み方はわかった。
このおじいさんから聞いた通り、《迷いの森》を抜ければ次の街だ。
「さあ、次の街へ行こうぜ」
凪が歩き出す。
「次は港町かぁ。楽しみね~」
「《ミストフィード》って言ってたね。俺はまず、《迷いの森》で出会うモンスターとかも気になるよ」
俺の言葉に、凪がハッとなる。
「そうだった! ぼく今度はカブトかクワガタが見たい!」
「いいね! カブトムシもクワガタも好きだったなぁ。小さい頃は毎年夏休みになるとさ、お母さんの実家がある那須のほうで……」
「それっ! 急げっ」
急に、凪は走り出す。
「て、話を聞けー! 待てよー」
「うふふ。開くんも凪くんも楽しそうだわ。見つかるといいね」
俺と逸美ちゃんが凪を追いかけて走り出す。
俺たちは、街を出て、《迷いの森》を目指す。




