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ルミナリーファンタジーの迷宮  作者: 蒼城双葉
第二章 ソロモン島編
43/187

第二章1   『八月二日』

 八月二日。

 ()()めはよかった。

 いつもより、なぜだかものすごく()きるのが楽だ。いや、ゲーム世界に入るのが楽しみで、つい起きてしまっただけなのかもしれない。

昨日(きのう)は《天空(てんくう)(つるぎ)》をゲットしたし、今日からは七つのアイテムを集めるぞ」

 着替(きが)えて出掛(でか)ける準備を()ませると、(おれ)はマスターズ・カンパニーのビルに向かった。



 集合場所は昨日(きのう)と同じく秋葉原駅(あきはばらえき)

 電気街口(でんきがいぐち)を出たところに行くと、今日は(すず)ちゃんがいなかった。

 逸美(いつみ)ちゃんといっしょに(なぎ)を待って、(おく)れてきた凪に話を聞く。

 凪によれば、

「鈴ちゃんは用事があって午後から来るそうだよ」

 とのことである。

 だから、三人でマスターズ・カンパニーへ行った。



 マスターズ・カンパニーのビルに入った。

 中に入ると、相変わらず、異様(いよう)なアイマスクの研究員(けんきゆういん)たちが社内を歩いている。一種独特(どくとく)不思議(ふしぎ)なビルだ。ここからすでに異世界にいるような気分になるくらい。


 昨日(きのう)と同じくナビさんという案内人(あんないにん)()れられて、703の部屋に通された。

 潮戸(しおど)さんにも挨拶(あいさつ)して、いざ始めようというとき。

 俺ははたと気づいた。

「あ! でも、そうすると鈴ちゃんだけ俺たちとスタート地点が変わっちゃわない?」

 凪はのんきに(かま)えて、

大丈夫(だいじようぶ)さ。ぼくがワープを使えば、行ったことのある(まち)とパーティーメンバーの元へなら魔法(まほう)で飛べるんだ。鈴ちゃんが合流(ごうりゆう)するとき、ぼくが(むか)えに行くよ」

「なるほどな。よろしく(たの)むよ」

「おう。(まか)せとけ」

 トン、と凪は自分の(むね)を叩いた。

「みなさん、それでは始めますか?」

 潮戸(しおど)さんの()(ごえ)で、俺と凪と逸美ちゃんの三人はベッドに横になって《T3》をセットした。

 一度、俺は深呼吸(しんこきゆう)して目を閉じる。

 そして、《T3》を起動(きどう)し、現実世界からゲーム世界へと入っていった。



 目を()けると。

 昨日冒険(ぼうけん)を終えた場所――

 しかし、ぴったり同じ場所じゃない。森の中にいる。終えたのがメーデスの背中(せなか)、つまりは空の上だから、おそらく真下(ました)になるのだろう。

 さて。

「よし! 今日も頑張(がんば)ろう!」

 俺は景気(けいき)よく(こぶし)()き上げた。

 だが。

「あれ?」

 凪も逸美ちゃんもいない。

 メーデスの()に乗って空の上でゲームを終えたから、着地点(ちやくちてん)誤差(ごさ)のせいで、バラバラになっちゃったのかな。

(かい)くーん」

 そう思ったのも(つか)()、手を振りながら逸美ちゃんが木陰(こかげ)から出てきた。

「逸美ちゃん! バラバラになっちゃったのかと思ったよ」

「すぐ近くにいたみたい」

「そっか。よかった。無事(ぶじ)合流できたし、それじゃあ行こうか」

 俺がさっそく出発しようとすると。

「よっと」

 声と共に木の上から凪が飛び降りてきた。

「やあ。開」

「凪! なんで木なんかに登ってたの」

「ぼくの着地点の下にちょうど木があったんだろうさ。それにしてもひどいなぁ。ぼくがまだ来てないのに、先に出発しようとするなんて。ぼくたち相棒(あいぼう)だろ?」

「あはは。ついうっかり」

 と頭をかく。ていうか、相棒(あいぼう)ではないけどな、凪が言ってるだけで。

「さ、早く行こうぜ」

「そうね。行きましょう」

 と、逸美ちゃん。

「今日は七つのアイテムのうち、一つくらい手に入れたいな」

 俺の言葉に凪と逸美ちゃんもうなずき、俺たちは歩き出した。



 山道を歩いていると、凪が横道にそれた。

「なにしてるんだよ」

薬草(やくそう)さ。()えてるから取っておこうと思ってね」

「へえ」

「アイテム(らん)はまだまだ()きがあるんだ。持てるアイテム数は無限(むげん)かもしれない。自分たちで使う用とお店で売る用に取っておかないと」

 凪は()んだ薬草(やくそう)を俺と逸美ちゃんにも分けてくれて、それらをアイテム覧に追加した。

「わたしの魔力が足りなくなって《ヒール》が使えないときもあるかもだしね。回復アイテムがあると心強いわ」

 と、逸美ちゃんは微笑(ほほえ)む。

 そうだ。

 逸美ちゃんが《(いや)しの(つえ)》で回復魔法(かいふくまほう)《ヒール》が使えるようになったように、俺もなにか魔法を持っていやしないだろうか。凪だってワープの魔法を手に入れたのだから、《天空(てんくう)(つるぎ)》と()ばれる(けん)を手に入れた俺も使えるかもしれない。

天空(てんくう)(つるぎ)》――またの名を、《魔剣(まけん)グラム》。

 それこそ魔剣(まけん)と言うくらいだし、可能性はある。

「メニューオン」

 確認すると。

 やはり、俺の見立て通り、魔法の覧に二つ、追加項目(こうもく)があった。

雷火(ゼノスパーク)

天空の煌星(ゼノビッグバン)

 おお! 一気に二つも魔法が使えるようになっているなんて。

 逸美ちゃんに見せたかったけど、凪がアイテム(ひろ)いをしながらたったか先に行ってしまい、俺はそれを追いかけて言う機会(きかい)(のが)してしまった。



 山を抜けると、草原(そうげん)に出た。

 そこでは、ティラコ、クルックモに(くわ)えて、新しいモンスターもいた。

 モッフント。

 体の毛がもふもふした犬のモンスター。

 つぶらな(ひとみ)がキュートな、足が短めのダックスフントのようだが、もふもふの体毛は羊のようでもある。


挿絵(By みてみん)


「きゃー」

 逸美ちゃんは、モッフントのHPゲージも気にせず、()きつこうとした。

 しかし。

 モンスターは基本的に、パーソナルエリアに侵入されたら、プレイヤーを攻撃(こうげき)してくる。

 モッフントも例外ではなく、逸美ちゃんに向かって突進(とっしん)してきた。

「やだ~」

 ふわりと逸美ちゃんが身をひるがえして()ける。

 凪が腕組(うでぐみ)して、

「鈴ちゃんがハネコを手放(てばな)せば、ぼくがペットとして()っていたくらいだ」

 まあ、鈴ちゃんは凪によく()た顔したハネコを手放すとは思えないし、このゲーム中はハネコが俺たちの召喚(しようかん)モンスターだ。

 ちなみに、いまは鈴ちゃんがいないし《氷晶(ひようしよう)(かま)》もないから、ハネコは呼び出せない。鈴ちゃんが合流したらいっしょに(たび)をしよう。

「さ、俺たちも戦いに行くぞ」

「そうだった」

 ということで、俺と凪も参戦。

「しかしあの毛、(けん)でちゃんと()れるかな?」

 どう戦おうか(なや)む俺を横目に、凪はさっそくモッフントに近づいた。

「モッフントのドロップアイテムも気になるし、ごめんよ。それっ」

 そして、突進(とっしん)してくるモッフントを、凪はゴルフでもするみたいに《ケリュケイオン》で容赦(ようしや)なく打った。

 が。

 もふもふした毛のおかげが、モッフントは防御力(ぼうぎょりょく)が高いようだ。一撃(いちげき)では(たお)せない。モッフントは動きが機敏(きびん)ではないからすぐには次の攻撃(こうげき)はしてこないが、攻撃(こうげき)をされたら(こわ)いからか、凪は(あわ)てて二度、三度とモッフントを《ケリュケイオン》で打った。

 けれどもまだ(たお)せないので、今度は俺が《天空(てんくう)(つるぎ)》で()る。

「これならどうだ」

 すると、俺の攻撃(こうげき)で、モッフントはHPゲージを0にした。ゲージの()(かた)から見て、俺の攻撃(こうげき)でも二度のアタックは必要だったかもしれない。やっぱり防御力(ぼうぎょりょく)が高いモンスターだったんだ。

 モッフントはエフェクトと共に消えて、《モッフントの毛玉(けだま)》をドロップした。

「ふう。(たお)せてよかった」

 俺は逸美ちゃんに顔を向けて、

「毛玉だって」

「なんだか予想通りね。うふふ」

 逸美ちゃんはおかしそうに笑う。

 凪は(こし)に手を当てて、つぶやく。

(ほか)のモンスターも見たくなってきたなぁ」

「そうだな」

 かくして、俺たちは草原を進む。



 モンスターと戦いながら草原をしばらく歩くと、次の(まち)に到着した。

 街の名前は、


《グリーントーレ》

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