表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルミナリーファンタジーの迷宮  作者: 蒼城双葉
第一章 旅立ち編
37/187

第一章30  『一本』

 高く飛び上がった三平(さんぺい)くん。

 対して。

 (なぎ)は、じっと三平(さんぺい)くんから目を(はな)さず、体も動かさずに待っていた。

 左手に持っていた《ケリュケイオン》を左右の手で持ち、地面と水平に。そして、三平(さんぺい)くんの攻撃(こうげき)を受け止めるように上にかざした。

「パワーの差をみせてくれ。ぼくは勝敗(しようはい)には興味(きようみ)ない」

 冷静(れいせい)にそう言う凪にピキッと(いか)りをみせた三平(さんぺい)くんは、技名(わざめい)(とな)える。


「みせてやるよ! 《飛び込み斬り(スカイスラッシュ)》」


 力を込めて、(けん)を振り下ろした。

 技名(わざめい)(とな)えているところを見ると、魔法を(まじ)えた技。鈴ちゃんが使える《氷河を刈る鎌(グレイシアファルチェ)》みたいなものだろう。

 (すず)ちゃんは審判(しんぱん)でありながらも、凪にエールを送った。

先輩(せんぱい)、勝ってください! 馬鹿(ばか)にされたままは(いや)です」

 凪は目の(はし)で鈴ちゃんを(とら)え、小さく息をつく。

「わかったよ。確かに、王子様と魔女(まじょ)()は馬鹿にするには(まと)()ているしさぞ(くや)しかろう」

 ジャンプした三平(さんぺい)くんのアタックはすぐ凪に(とど)距離(きより)

 三平(さんぺい)くんの剣先(けんさき)が凪まであと一メートルを切ったところで、凪は、《ケリュケイオン》を持つ手を、右手だけにする。

 そして。

 三平(さんぺい)くんの(けん)が凪の《ケリュケイオン》に()れるタイミングに合わせて――

 凪は左足を下げつつ、力を()がすように《ケリュケイオン》を引いて、(やなぎ)に風と受け流す。

 これにより、三平(さんぺい)くんの剣先(けんさき)は、地面に()さった。

「し、しまった……!」

 その(かん)、凪自身は力を()がすためにくるりと反転(はんてん)して、さらに左手で手刀(しゅとう)を、トン、と三平(さんぺい)くんの背中(せなか)に当てた。

「確か、一撃(いちげき)入れたらいいんだよね。ダメージ関係なしでさ」

 そう言って、凪は鈴ちゃんを見る。

 鈴ちゃんは笑顔で判定(はんてい)(くだ)した。

「凪先輩(せんぱい)、一本! よって、勝者は凪先輩(せんぱい)です!」

 ふっと凪は息をつく。

「やりましたね!」

 (うれ)しそうに鈴ちゃんが凪に()()る。

一撃(いちげき)勝負(しようぶ)だから勝てただけさ」

 クールに答える凪。

 三平(さんぺい)くんは(くや)しそうに凪を見る。

 しかし、声を上げたのは小さな少年のほうだった。

「ずるいぞ! あんな弱っちい攻撃(こうげき)で!」

「一本は一本さ。誰も、武器(ぶき)で一本取るとは言ってない。それに、ぼくの《ケリュケイオン》に()れた瞬間(しゆんかん)、彼のパワーはある程度(ていど)だけど把握(はあく)できた。ぼくとしてはそれで充分(じゆうぶん)さ」

「くそう」

 小さな少年が(くや)しがるが、三平(さんぺい)くんは反論(はんろん)しなかった。

 負けた、とはっきりわかったからだろう。

 しかし、これで一勝。

 次に俺が勝てば、こんな無駄(むだ)なデュエルは終わりだ。

 小さな少年が進み出た。

「さっさと出てこい! 次だ次! すぐに終わらせてやるぜ!」

 俺も一歩進み出る。

「うん。すぐに終わらせよう」

 鈴ちゃんは俺と少年を交互(こうご)に見て、

「それでは、デュエル開始です!」

 宣言(せんげん)した。



 俺は背中の(けん)に手をかけた。

 小さな少年は、(いか)りに(まか)せて()けてきた。

「うおー! 兄貴の仇討(かたきう)ちだー!」

 これなら、負けることはない。

 まだ俺は技なんて持ってないけど、胴体(どうたい)がガラ空きで()っ込んでくるやつに負けるほど、間抜(まぬ)けじゃない。

 これでも一応(いちおう)武道(ぶどう)のたしなみはあるのだ。


「ッ」


 距離(きより)見計(みはか)らい、俺の一歩分の間合(まあ)いに相手が入った瞬間(しゆんかん)(けん)を振り抜く。

 そして、ガラ()きの胴体(どうたい)()る。

「ぐぁあっ」

 背中(せなか)から、少年の声が(おく)れて聞こえた。

 こんなの、ゲームの世界じゃなくても負けるわけがない。

「勝者、(かい)さんです!」

 鈴ちゃんのジャッジ。

 キン。

 金属音(きんぞくおん)を立てて、(けん)背中(せなか)(さや)(おさ)める。

「ふう」

 小さく息をついて立ち上がり、みんなのほうを振り返ると、逸美(いつみ)ちゃんが()()ってきた。

「さすが開くんね!」

 放心(ほうしん)していた少年は、(くや)しさにまみれた顔で俺を振り返った。

「おっ、おまえ! 剣道(けんどう)とか武道(ぶどう)やってただろ! 先に言いやがれ! (かく)してたなんてずるいぞ!」

「言う必要もないでしょ。確かに武道(ぶどう)はやってたけどさ」

「や、やっぱりやってやがったか……!」

「でも、俺がやっていたのは空手(からて)だよ。剣道(けんどう)をやってた人じゃなくても、あんなガラ空きの胴体(どうたい)()(のが)す人はいないよ」

 小さな少年は三平(さんぺい)くんの(もと)へと()けて行った。

兄貴(あにき)~」

「いまのはおまえが悪い。そして、さっきの勝負もおれの負けだ」

 仲間を(いさ)めてから、三平(さんぺい)くんは俺たちを見て、ビシッと指差(ゆびさ)した。

(おぼ)えてろよ! 次はこうは行かないからな!」

「そうだそうだ!」

 三人は俺たちの横を通り過ぎ、《ドレスフィア》へと歩いて行った。

 終始(しゆうし)それほど興味(きようみ)なさげだった太っちょの少年が、三平(さんぺい)くんに言った。

「《ファフナ大樹(たいじゆ)》には《天空(てんくう)(つるぎ)》に関する情報もイベントもなかったし、準備(じゆんび)(ととの)えたらさっさと本筋(ほんすじ)のルミナリー探しを再開(さいかい)しようか」

「だな。しっかし、ここに来てライバル登場(とうじよう)か。おもしろくなってきたじゃねーか」

 三平(さんぺい)くんはクールにそうつぶやいた。



 三人が《ドレスフィア》に向かう後ろ姿(すがた)(なが)める俺に対して、凪は頭の後ろで手を組んで言う。

「ま。大抵(たいてい)どのゲームでも最初の(てき)っていうのは簡単に勝てるように設定(せつてい)されているもんさ。この先、いつどんな強い相手が(あらわ)れるかもわからない。開もさっさと強力な武器(ぶき)を手に入れないとね」

 やれやれ。こいつはまったく。三平(さんぺい)くんの気も知らないでNPC(あつか)いかよ。

 俺はみんなに言った。

「さて。俺たちは《ファフナ大樹(たいじゆ)》を目指(めざ)して進もう」

「そうね。張り切って行こう~」

「はい。行きますよ、先輩(せんぱい)

 かくして。

 厄介(やつかい)なデュエルを無事(ぶじ)に乗り切った俺たちは、今度こそ《天空(てんくう)(つるぎ)》を求めて、《ファフナ大樹(たいじゆ)》に向かい歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ