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ルミナリーファンタジーの迷宮  作者: 蒼城双葉
第一章 旅立ち編
32/187

第一章25  『新しい仲間は可愛いモンスター!?』

 鈴ちゃんの《氷晶(ひようしよう)(かま)》の水晶(すいしょう)魔法陣(まほうじん)を描いてもらった俺たちは、店を出た。

「じゃあ仲間にするモンスターを探しに行こうぜ」

 凪の言葉に俺たちは賛成(さんせい)して、(まち)の外へと出た。



《ドレスフィア》前の草原(そうげん)

 さっきはティラコとクルックモがいた。

 (ほか)のモンスターはいないかもしれないけど、仲間モンスターはいつでも交換(こうかん)できるし、まずはゲットだ。

「なんでもいいからゲットしたいね」

「そうねぇ。さっきの二匹(にひき)だと、クルックモちゃんのほうが伝書鳩(でんしよばと)とかになって便利(べんり)なのかしら~?」

「どうだろうね」

 あはは、と俺は笑った。


 草原と森の(あいだ)まで来たとき。

 ここまでずっとその二匹ばかりが少し離れた場所に見えるばかりだったけど、初めて別のモンスターを発見した。

 (あらわ)れたのは、ネコのモンスターだった。

 名前はハネコ。

 ハネコは、ちっちゃい羽のついたネコのモンスターだ。普通(ふつう)一般的(いつぱんてき)なネコと比べて、明らかに丸い。体長は二十センチくらい。体毛(たいもう)は黄色でふんわりとした感じ。



挿絵(By みてみん)



「新しいモンスターよ。ネコちゃんだわ」

 と、逸美ちゃん。

 このハネコは、めずらしいモンスターだろうか。

 しかし。

 俺と鈴ちゃんは、(おどろ)く前に、ハネコの目つきが気になった。

「なんだかあのネコ、先輩(せんぱい)みたいな顔してますね」

 鈴ちゃんがやや(あき)気味(ぎみ)につぶやいた。

「だね。やる気のない表情だよ」

「ほんとそっくりだわ~」

 凪はまじまじとハネコを見て、

「なんてラブリーで()()まった顔だろうか。あいつをぼくのペットにしてやろう」

「あれのどこが引き()まった顔なんだよ。完全(かんぜん)(ねむ)たそうに目をつぶっちゃってるじゃないか」

 横で俺がつっこみで入れてやっても、凪は真剣(しんけん)な顔のまま、(あご)をさすって興味津々(きようみしんしん)にハネコを見ている。

「まったくです」

 と、鈴ちゃんが声が()れる。

 あのハネコはどう見たって日向(ひなた)ぼっこをしている。

 鈴ちゃんも(あき)れてるんだろうなと思って見てみたら、(ほお)を赤らめていた。

「ま、まあ? べ、別に、いいんじゃないですかね? ああいう可愛(かわい)いモンスターを(かた)に乗せたりするのも、悪い気しませんしね。どうせ先輩(せんぱい)はお世話(せわ)できないでしょうし、その、あたしが可愛(かわい)がってあげましゅよ」

 最後、ちょっと()んじゃってる。

 いくらやる気ない顔でも、凪によく()たモンスターだったら、鈴ちゃん的には大歓迎(だいかんげい)だったようである。鈴ちゃんのやつ、凪によく似たハネコを猫可愛(ねこかわい)がりしたいんだろうな。

 しかし。

 凪は頭の後ろで手を組んだ。

「でも、ぼくはさっきのニャクゥがいいんだよな~」

 これには鈴ちゃんが抗議(こうぎ)する。

「どっ、どのモンスターでもいいんじゃないですか! ものは(ため)しです! それに、どうせニャクゥは反対側(はんたいがわ)のルートにしか出て来ないですよ」

「え~」

「え~じゃないです。せっかく見つけたんですし、運命(うんめい)だと思って、さっそく(つか)まえてみましょうか。ええ、それがいいかもしれませんね、はい」

 興味(きょうみ)ない素振(そぶ)りを演出(えんしゅつ)したいのかもしれないが、バレバレだ。(いさ)み足になっている。

「鈴ちゃん、張り切ってるわね」

「だね」

 逸美(いつみ)ちゃんの言葉に俺はうなずく。

「ところで鈴ちゃん」

「なんですか? 先輩(せんぱい)

 (なぎ)のほうを見もせず、ハネコに集中している鈴ちゃん。

(つか)まえ方、知ってるの?」

 ズコ。

 キレよく鈴ちゃんがこけた。

 鈴ちゃんは凪を振り返って、()れたように頭をかく。

「あ、あはは……。知りませんでした」


 鈴ちゃんは、凪に(つか)まえ方を教わっていた。

(たお)さずに、モンスターに魔法陣(まほうじん)()れさせると、仲間にできるんだ。ちゃんと弱らせないと捕獲率(ほかくりつ)が下がって魔法陣(まほうじん)から抜け出してしまうから、頑張(がんば)っておくれ」

「わかりました!」

 力強くうなずき、鈴ちゃんがそろそろとハネコに近づく。

 と。

 ハネコが鈴ちゃんに気づいた。

 おそらく、ハネコのパーソナルエリアに入ったのだろう。ハネコはパチッと目を開けて、鈴ちゃんを見つめる。

「か、かわいい……!」

 鈴ちゃんは(ほお)()めて口を押さえたあと、(われ)に返り、

「えいっ」

 手を()ばして、ハネコにデコピンした。

 もしクルックモくらいの強さしかなかった場合、普通(ふつう)攻撃(こうげき)したらダメージが大きいから、(たお)してしまうしな。デコピンくらいでちょうどいいのかもしれない。

「痛くはない?」

 心配そうに猫撫(ねこな)(ごえ)でハネコを見る鈴ちゃん。

 肝心(かんじん)のHPゲージはというと、それでもみるみる()って、半分を切った程度(ていど)になった。

「よろしくね」

 そう言って、鈴ちゃんは、ちょんと魔法陣(まほうじん)をハネコに当てた。

 ハネコはたちまち魔法陣(まほうじん)に吸い込まれるように消えて、鈴ちゃんの《氷晶(ひようしよう)(かま)》の魔法陣(まほうじん)が光り(かがや)いた。

「…………」

 みんなが見守る中、やがて――

 パッと。

 魔法陣(まほうじん)再度(さいど)、まばゆい(かがや)きをみせた。

「こ、これは、ゲットできたんですか?」

 鈴ちゃんが凪を見る。

 凪は親指(おやゆび)を立てた。

「ゲットだ」

「やりましたー!」

 (うれ)しさのあまり()()ねる鈴ちゃんに、凪は言った。

「モンスターを召喚(しようかん)するときは、サモンって言うんだぜ」

 さっそく鈴ちゃんは(とな)える。

「はい、わかりました。サモン、ハネコちゃん」


 ポン!


 ハネコが出現(しゆつげん)した。モンスターが仲間にいるって、ファンタジー世界にいる気分に(ひた)れていいな。なんだかんだ、実は俺もモンスターとか好きだし。俺たち四人はモンスターを育てたりモンスターと冒険(ぼうけん)するゲームが好きでいっしょに遊ぶこともあるのだ。

「これならいつでも()べて便利(べんり)ね」

「うん。まあ、戦闘(せんとう)(やく)には立たないだろうけどね」

 うちのパーティーの場合、普通(ふつう)とは(ぎやく)に、戦闘(せんとう)のときには魔法陣(まほうじん)の中に(もど)して待機(たいき)してもらうことになるだろうな。

 逸美ちゃんと俺の言葉も聞こえないほど、鈴ちゃんは(よろこ)んでハネコを()でている。

「うふふ~、よろしくね~ハネコちゃん」

 そして、凪はみんなに呼びかけた。

「さあ。仲間も(くわ)わったし、《ドレスフィア》に(もど)って情報収集じようほうしゆうしゆうだ」



 すると。

 突然(とつぜん)

 ピッと、頭上に(まど)が出てきた。

 俺は足を止めて窓にいる潮戸(しおど)さんを見上げる。

潮戸(しおど)さん。どうしたんですか?」

「みなさん、めずらしいモンスターを仲間にしましたね」

「そうだったんですか?」

 鈴ちゃんが嬉々(きき)(たず)ねた。

「ええ。あの草原と森の(あいだ)で、ごく(まれ)にしか出現(しゆつげん)しないモンスターなんですよ。一時間探し歩いて一匹見つかるかどうか」

 凪は頭の後ろで手を組んで、

「ほうほう。あの顔ならレア度が高いのも納得(なつとく)ですな」

 いや、むしろあの顔でいいのかよ、レアモンスターが。

 潮戸(しおど)さんは言った。

「それから、みなさん。ゲームに入ってもうすぐ一時間半になります。まだ休憩(きゅうけい)は取らなくても問題ないんですが、ちょうどお昼時(ひるどき)ですし、現実に(もど)ってお昼ご飯でも食べたらどうですか?」

「そうだね。そうしよう。ちなみに、オートセーブって言ってたけど、ぼくらがいまいる場所から再開(さいかい)できるんですか?」

 凪の質問にも、潮戸(しおど)さんは明瞭(めいりよう)に答えてくれた。

「そうですよ。もし死んでしまったら教会からやり直しだけど、それ以外ではセーブポイントからのやり直しなどはありません。ログアウトした場所から再開(さいかい)です。イベント後は、場合によって場所が多少(たしよう)ズレることもありますけど」

「そうですか。では、いまからログアウトします」

「はい。お待ちしております」

 俺たち四人はメニューを広げ、ログアウトボタンを押した。


 本当にこれだけでログアウトできるんだろうか。

 現実世界にいるのとまったく身体(からだ)感覚(かんかく)が変わらない分、少し不安だったけど、目の前が()(くら)になると――

 数秒(すうびょう)で、ベッドの上に横になっている感覚(かんかく)身体(からだ)(おとず)れた。

 目を()けると、《T3》の黒いモニター画面が見えるのみである。

 俺はVRマシンを外して、身体(からだ)()き上がらせた。

 やっぱりあれは、ゲームの中だったんだ。あんなに感覚がリアルなのに、仮想(かそう)のデータとしての肉体だったなんてすごい。

 潮戸(しおど)さんは手をグーパーする俺に微笑(ほほえ)みかけて、

「楽しかったですか?」

「はい。まるでホントに異世界に行った気分でした」

 俺の答えに笑顔を返す潮戸(しおど)さん。

「それはよかったです。さあ、まずはお昼にしましょう。ランチは食堂(しよくどう)をご利用ください」

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