第一章21 『衣装チェンジⅠ』
街に戻った俺たちは、近くのお店でアイテムを換金した。
ゴールドも貯まったので、俺たちは衣装と武器を買いに行くことにした。
「専門の換金屋さんがあるわけじゃないのは手間がなくていい」
凪は換金できたゴールドも少ないのに満足そうだ。どうせさっきのアルタイルの件があったし、俺のゴールドをアテにしてるんだろうけどな。
とはいえ、稼いだ額は小さいけど、物語の序盤の店では高い物は売ってないから、いろいろしっかりとそろえてもゴールドが足りないなんてことはないだろう。
《服と防具の店》
一応、盾なんかもあるけど、実質的には服屋さんだ。
店内に入る。
改めて衣装を見るが、俺たちが集めた額で充分にファンタジー世界らしい衣装は買える。剣や槍などの武器を買うゴールドも残せるだろう。見たところ、デザインよりも防御力で値段が釣り上がるようだ。
それぞれ服を見る。
俺は逸美ちゃんに連れられて、逸美ちゃんの服を選んだ。とりあえず防御力よりデザイン重視で、色々な物を何着か着てもらった。
「開くんはどれがよかった?」
「白魔導士の服もよかったけど、やっぱりそのピンクのシスター服っぽいのかな。シンプルだけど綺麗で似合ってたよ」
ハッキリと口にするのは照れるけど、俺は正直に感想を述べた。
逸美ちゃんはぱあっと笑顔を咲かせる。
「綺麗? 嬉しい! 開くんが似合ってたって言ってくれるなら、それにしようかな。踊り子みたいに過激なのは嫌だし、お姫様みたいなひらひらは可愛いけど動きにくいからね」
「いや、お姫様みたいな服も、その、に、似合っ……」
「ちょっと先輩!」
俺が照れずに堂々と似合ってたよと言おうと思ったところで(そうは見えないって意見は無視)、横から、鈴ちゃんの声が聞こえた。どうやらもめているらしい。
「あたしに変な服着せようとするのはやめてください」
「変じゃないよ。可愛い服だし、すごく似合うと思うんだけどなぁ」
「え。そ、そうですか? じゃ、じゃあ、どうしてもと言うなら、ちょっとだけ……」
「ほら。脱いで。服はぼくが預かるよ」
「はい。わざわざすみません。でもこのボタン外しにくい……て、見てないでカーテン閉めてくださいっ」
パシャリ。
試着室のカーテンが閉じられた。
うん。好きにやらせておこう。鈴ちゃん、まんざらでもなさそうだったな。
逸美ちゃんはといえば、すっかり着替えている。
シンプルなシスター服って感じなんだけど、淡いピンクを基調とした聖職者らしい神秘さがあり、首回りの白が清廉さを引き立てている。アクセサリーのネックレスもこしらえて、逸美ちゃんはお会計を済ませた。
新しい服に衣装チェンジだ。
「さあ。今度は開くんのお洋服を選ぼう? ふふっ。可愛いの選ばなきゃ」
と、逸美ちゃんは気合を入れて腕まくりした。
ということで俺のターン……ではあるけど、実際は逸美ちゃんに色々な服を着せられていた。着せ替え人形よろしく試着を繰り返した末、俺もようやく服が決まった。
「うんうん、開くん似合ってる。カッコイイよ。すごいステキ。やっぱりこれが一番開くんに合ってるなあ。本物の勇者みたいにカッコイイ」
「そ、そうかな? カ、カッコイイか。ならいいけど」
たくさん褒められたし、俺もまんざらでもない気分で、向こうにいる凪に呼びかけた。
「ねえ凪、どう? 逸美ちゃんに選んでもらったんだ」
ふふん、と鼻を鳴らして腰に手を当てる。
凪はパッと振り返ると、表情を変えることもなく言った。
「うん。とても似合うよ」
「そうよね。うん、やっぱりいいわよね。カッコよくて凛としてるし。可愛い可愛いわたしの王子様になってるっ。うふふ」
逸美ちゃんが大変満足そうにぽわわんとした顔でうなずく。
凪は淡々とそれに続ける。
「そうなんだ。似合ってはいるけど、それは勇者じゃなくて王子様になってるね。とても戦う恰好ではないよ。逸美さんに乗せられて舞い上がるからそうなるんだ。でも、顔が良くてよかったね。顔立ち次第じゃ似合わないどころかこっ恥ずかしいコスプレだよ」
くっ、くそう。俺は赤面しそうになるのを抑えて(実際どんな顔になっているかは俺もわからないけど)、鏡を見直す。
上が白で下が黒という、綺麗めながらも荘厳さのある軍服みたいだと思ってたけど、確かに中世ヨーロッパの王子様って感じだ。悪くないと思ったのに。
「開、似合ってはいるんだ。あとはその悪目立ちしてる首元の白いひらひらを取ってマントでも羽織って剣を持ってりゃそれっぽくなるよ。派手な衣装じゃなくてよかったね」
「ああ。ひらひらは取ってマントも羽織って剣でも装備するよ」
「もう、ダメよ。開くんひらひら取っちゃダメっ。そこが可愛かったのに。あ、でもそれもいいわ。ううん、むしろこれはこの短めの鞭を持たせて帽子をかぶせて……」
と、鞭を持たされ、軍人のような黒い帽子をかぶせられる。逸美ちゃんは興奮したように、
「いいよ開くん。鞭を操ってみて?」
「いや。鞭はいらないでしょ。返してきて」
「やだ~。鞭持って命令する開くんもいい~」とか言う逸美ちゃん。だが、帽子と鞭を返してきてもらう。
ついでに、逸美ちゃんがマントも選んで持って来てくれたので、それを羽織ることにした。マントは白で、裏地は赤。いわゆる片マントで、左側は前面もマントで覆うような形になるけど、脇の下に切り込みがあって腕はまた別になっているから、剣を収める鞘のベルトをかけても邪魔にならない仕様だ。
逸美ちゃんは口元に笑みを浮かべて戻ってくると、
「あとでこのお着替えの映像か写真もらえないか、潮戸さんに聞かないといけないわね。ふふっ」
などと独り言をつぶやいていた。
やれやれ。そんな機能はおそらくないだろう。




