第一章19 『モンスター初討伐』
街の外に出て草原に出る。
風が気持ちいい。まるで本当の風を感じているような爽やかさだ。
草原を歩いていると。
どこからともなく、小さな恐竜みたいなモンスターが現れた。
モンスターは、ティラノサウルスを高さ八十センチほどの二頭身に圧縮して可愛くデフォルメした容貌だ。身体の色は黄色っぽい。背中と尻尾にはとさかのようなものもある。頭の上には緑色のHPゲージがあり、ティラコと名前も書いてある。
逸美ちゃんが少し困ったように微笑む。
「なんか可愛らしくて倒しずらいね」
「だね。でも怖いよりいいよ。よし、俺が先に戦ってみる」
「開くん頑張って。ファイト」
俺はゆっくりティラコに向かって歩いてゆく。
ある一定の距離に入ると――さっき俺に気づいていなかったティラコが、俺の存在に気づいた。
ティラコは俺を認知して、声を上げた。
「ガオー」
声はそれほど可愛いわけではなかった。怖くもなく親しみやすいくらい。
ティラコは頭突きするように頭を前に突き出す姿勢で、一直線に走ってきた。
「こい!」
俺はティラコを迎え撃つように、じっと動かず構える。
すぐ目の前までティラコが突進して来た瞬間、俺はそれを避けて、ティラコの身体の側面をキックした。
ヒット。
たった一発だけど、ダメージをくらったティラコは、HPゲージが一気にぐんぐん減る――ゲージは緑色からオレンジ、赤色と変わってなくなった。ポリゴンが崩れるエフェクトと共に消える。
「やったー!」
「開くんすごーい」
逸美ちゃんが笑顔で駆け寄ってくる。
「倒したよ。ティラコは頭突きするようにまっすぐ突っ込んで来たから、横に避けるといいと思ったんだ」
「作戦もバッチリだったね」
と、逸美ちゃんはウインクをくれた。
また、ティラコがエフェクトと共に消えた場所に、牙が落ちていた。それを拾うと、《ティラコの牙》の表示が浮かび上がった。なるほど、アイテムをドロップするって、こういうことだったんだ。
凪は冷静に戦いを見て、
「これは各ステータスもレベル制度ではないようだ。やっぱりステータスの上昇はないかもね。ドロップアイテムの表示は出たけど、経験値の表示は出なかった」
「まあ、潮戸さんもレベルとかはないって言ってたしね。それより初討伐なんだから喜んでくれてもいいのに」
無表情の凪にちょっと不満顔を向ける。
「こうなるとぼくのステータスが上がらない危険が」
「なんだよ、そっちの心配かよ。ほとんど上がらないって言ってただろう? 今度は凪が戦ってみて。一番ステータスが低い凪でも倒せるかの確認にさ」
余裕を顔に張り付けて、凪は言った。
「おそらく一撃でいける」
次に現れたモンスターは、クルックモだった。
俺たちが森の中で最初に見たモンスター。
雲をまとったようなハト型で、愛嬌のある顔をしている。体長は三十センチくらいだから、倒しやすそうだ。
「よーし、それっ」
凪が走って行ってパンチすると、クルックモは簡単にポリゴンが崩れるエフェクトと共に消えた。
ドロップしたアイテムは、《クルックモの綿》。
凪はそれを、自らのアイテム一覧に追加する。
「やったね」
俺は周囲をよく見回して確認する。
ふむ。
「ここでわかったことは、二つだな」
そう言って、俺は指を二本立てる。
「一つ目――。クルックモとティラコが、《ドレスフィア》近辺の草原ではよく登場する、初心者向けのモンスターってことだ」
俺は周囲を見ながら言葉を継ぐ。
「二つ目――。モンスターは、向こうから襲っては来ないらしい。モンスターのパーソナルエリアに入ったら、さっき戦闘が始まったみたいに攻撃されるだろうけどね。よって、俺たちはこの二匹を倒せばいいわけだ」
「そうみたいね。近づき過ぎなければ、不意に攻撃されないっていうのはいいことだわ。二匹共簡単に倒せるみたいだし、ゴールド稼ぎもラクラクかも!」
と、逸美ちゃんは嬉しそう。
「これで俺たちみんなモンスターを倒すのは簡単だってわかったし、それぞれモンスター倒してゴールドを集めようぜ」
「うん、そうしよ。わたしは開くんといっしょに戦うわ」
逸美ちゃんが朗らかにそう言うと、鈴ちゃんは凪を一瞥して、
「あたしは厄介なことには巻き込まれたくはないので、凪先輩とは別行動します」
凪はみんなの言を受けて、ポンと手を打った。
「そうなれば、開&逸美さんペアVSぼくと鈴ちゃんペアで、どっちが稼げるか勝負しようよ。勝ったほうがなんでも命令できるってのはどうだい?」
「いいわよ。楽しそう~」
逸美ちゃんは即答。
しかし、俺と鈴ちゃんは反対だ。
「嫌ですよ。なんであたしが先輩と組まなきゃいけないんですか。あたしはモンスターとですね、その、やることが――」
「これ、勝っても命令することなんてないぞ。俺にはなんのメリットもないじゃないか」
凪は腕組しながら俺と鈴ちゃんからの抗議を聞いて、大きくうなずく。
「うむ。それじゃあ十五分勝負だ。よーい、どん!」
「話を聞けー!」
かくして、凪の勝手な仕切りの元、俺たちはモンスター討伐を始めた。




