第一章14 『ステータスの仕組み』
気を取り直して俺は言う。
「いまのを見るに、俺と凪の数字――100と10にはしっかりと開きがあることがわかる。10ってステータスは限りなく0と同等の価値しかないこともわかった。これは、凪のステータスが低すぎるのかもな」
逸美ちゃんが思いついたように言う。
「そうだ。潮戸さんに聞いてみたらどう? 凪くんがどうかしちゃってるしね」
「逸美さん、その言い方だと先輩の頭がどうかしちゃってるみたいです」
と、鈴ちゃんが苦笑いになる。
「まあ、頭がどうかしてるのはいつものことではあるけどね」
と、俺も苦笑い。
けれど確かに、逸美ちゃんの言うように、迷ったら聞けばいいのだ。
「じゃあ、呼んでみようか!」
俺は少しだけ上を向いて、「潮戸さーん」と名前を呼んだ。
さっきの探偵事務所で見たとき同様、空中に窓が現れる。
窓の中には潮戸さんがいた。
「そっちの天気はどうですかー?」
と、凪がマイクを向けるように手を伸ばして聞く。
「天気予報の中継じゃねーよ」
凪の小ボケと俺のつっこみに苦笑いを浮かべたのち、潮戸さんは答えた。
「はい、潮戸です。みなさん、ちゃんと見てましたよ。ステータスですが、すべて平均は75となっています。現実世界の能力に応じて振り分けられ、最高は150です。ちなみに、体力は肉体の持久力、攻撃は肉体の瞬発力と腕力、防御は肉体の頑丈さと筋力、素早さは反射神経と敏捷性と足の速さ、黒魔法が頭の回転と思考力で、白魔法が知識量に、それぞれが呼応しています。思考力は電気を流した時の反応力で、知識量は脳の記憶を司る部分に蓄積された知識の量が参考です」
「わかりました。ありがとうございます」
ひゅんと窓が消える。
「だってさ、凪。平均は75だって」
「みたいだね。つまり、ぼくのだけ計測ミスってわけだ。やれやれだよ」
「機械のせいにするな」
「そうですよ。自分の情けなさを認めてください、先輩。いつもだらだらしてなんでも人任せにするからこうなるんです」
「まあまあ、そんなに言っちゃあ可哀想だよ」
と、凪はなだめるように鈴ちゃんに手のひらを向けて言う。
「おまえに言ってんだよ」
だけど、どうして凪の数字だけ低いのだろう。凪は運動神経だって悪くないし、頭もいい。中学時代なんか学年で最高3位になったこともある。まあ、常に本気を出すことはないやつだから、認められなかった部分もあるのだろう。たまに学年最下位になるときもあったしな。計測ミスじゃなきゃいいけど。
パン、と逸美ちゃんは胸の前で手を叩いた。
「じゃ、街か村を探すのよね。そろそろ行きしょう」
「うん! ゲーム内の人たちから色々聞いて情報収集しよう」
俺はうなずき、四人は歩き出した。
時間は現実世界とリンクしているのか、日は高い。
木々の緑が太陽の光を遮ることもあるけど、森の中でも道は明るく照らされているので、道なりに歩いて行った。
おもしろいのは、ちゃんと草木の匂いがすることだ。
青葉が風にそよぎ、初夏のような涼しさと気持ちよさがある。
風を体に感じて手を広げたそのとき、木の上に、鳥がとまっているのが見えた。
「あれは……」
ハトのようなモンスターだ。HPゲージが表示されている。緑色のゲージから、体力が満タンであることがわかる。
名前も表示されていた。
クルックモ。
ふんわりした雲をまとったようなハトで、可愛らしくデフォルメされているデザイン。体長は三十センチくらいだろうか。HPゲージがあるからには戦えるのだろうけど、手が届かないし、クルックモは戦おうとする気配もなく、枝に佇んでいる。
「可愛いわね」
逸美ちゃんが和んだようにクルックモを見て、鈴ちゃんもウキウキした顔で言った。
「あんなモンスターもいるなんて、ちょっとわくわくしますね」
凪が空を指差す。
「ほら、ごらんよ」
空には、クルックモが二羽、いっしょになって飛んでいた。
そのあとも、さらに数羽が先の二羽を追いかけるように飛ぶ。
「うわぁ! 新しい世界に来た感じがするね!」
「鳥はその土地のシンボルにもなるからね。さあ、早く行こうぜ!」
凪が走り出す。
「先輩、待ってくださーい」
鈴ちゃんが追いかける。
そんな二人を見た俺と逸美ちゃんは、顔を見合わせて笑った。
「うふふ。凪くん、テンション上がっちゃったのね」
「そうみたいだね。俺たちも行こうか」
「うん」
遅れて、俺と逸美ちゃんも走り出す。
凪たちに追いついてしばらく進むと、森を抜けた。
森を抜けたら草原に出る。
視界が開けて周りがよく見える。
俺は遠くを指差した。
「あ! みんな、あそこ。街じゃない?」
「ホントだ。あれがぼくが訪れる最初の街なんだ」
凪は俺たちを見て言った。
「さあ、行こうぜ!」
足を速めて街まで辿り着くと、入り口には看板が立っていた。
《アルフベル》
あれが、最初の街か。




