第一章13 『四人のステータス』
「メニューオン」
俺たちは声に出してメニューを呼び出す。
共有ボタンを押して、全員が全員、互いのメニュー画面を見られるようにした。
「それで、確認って?」
と、俺は凪に聞く。
開いた画面をのぞき込むようにして、凪は俺のアイテムボタンをタッチした。
「お。開いた」
凪はつぶやき、俺のアイテム一覧を確認した。
「急になんだよ?」
「ふむ。つまり、メニューを共有状態にしておけば、本人じゃなくても操作はできるってことだ。倫理問題的に、操作できるのはパーティーメンバーだけだろうけどね。また、ぼくもキミもアイテムを持っていないことから、プレイヤーは、初期状態ではアイテムを持っていないことになる」
「アイテムを一つも持ってないなんて、サービスが足りないですね」
と、鈴ちゃんは自分のすっからかんのアイテム画面を開いて言った。
今度は、凪は俺のステータスを押した。
「みんなもステータスを開いてみてくれる?」
「そう言う本人は開かないのかよ」
「ぼくのはいつでも見られる。まずはキミたちから」
勝手な言い分だが、ステータスくらい誰から順番に見ても同じだ。
「ええと、まずは俺。体力79、攻撃104、防御73、黒魔法150、白魔法99、素早さ110、か。これっていいのか悪いのかわからないね。逸美ちゃんは?」
「わたしは、体力88、攻撃51、防御81、黒魔法84、白魔法150、素早さ60。二人はどう?」
鈴ちゃんはメニューをじっと見て、
「はい。あたしは、体力75、攻撃59、防御54、黒魔法88、白魔法82、素早さ70です。それで、先輩はどうなんですか?」
「みんなバラバラだね。この中だと、鈴ちゃんが一番低いのか。仕方ないよ。まだ中学生なんだから」
と、凪は苦笑する。
鈴ちゃんがちょっと悔しそうに凪を見上げて、
「あたしのことはいいんです。先輩はどうなんですかって聞いてます」
「ぼくはっと。ん? あれ? おかしいぞ。故障中みたいだ」
俺は、そんな凪に間髪入れずに促す。
「いいから言え」
「やれやれ。仕方ない。体力10、攻撃10、防御10、黒魔法0、白魔法10、素早さ10だ。ふむ。ぼくのバグはさておき、これはどういう基準なんだろうね」
呆れたように肩をすくめる凪を、俺と鈴ちゃんがジト目で見る。
「おまえ、なんでそんな冗談みたいにステータスが低いんだよ」
「先輩、全部この中でダントツに一番低いじゃないですか」
しかし凪は気にしない様子でのんきに笑っている。
「だからなにかの間違いだよ。さっそくバグとは困ったもんだ。いや、逆にキミたちのステが高過ぎるのかもしれないぜ。開、あの木を蹴ってみてくれるかい?」
「うん」
俺は近くの木を、カブトムシでもふるい落とすみたいに足裏で蹴った。すると、木は大きく揺れて、定規でも曲げたみたいにしなった。
「つまり、開の攻撃力なら現実世界よりダメージが大きくなるってことだ。モンスターと戦う前提ならそれくらい必要かもね。逆に、防御力も上がってるはずだよ。あれだけ高い場所から落ちたのに誰もケガなくピンピンしてる。いや、あそこは痛みすらなかったからそういう設定なのかもだけどさ」
「チュートリアルで妖精のコルナが言ってた、筋力が強化された程度で現実と変わらない運動神経ってのはこういうことか」
「みたいだね」
「凪、おまえが木を蹴ったらどうなる? ステータスの違いが見てみたい」
「いいよ。見ててごらん」
凪が木の下まで行き、俺と同じように足裏で蹴った。
「それっ」
しかし。
木は、まったくと言っていいほど揺れない。
「…………」
しーん、と俺たちは言葉を失った。
当の凪は気にした様子もない顔してるけど、こんなんで大丈夫なのか?
「なんだかこの先が思いやられるよ」
凪がやれやれと手を広げる。
俺は言った。
「それは俺のセリフだよ」




