第五章1 『のどかな山間』
《ルミナリーファンタジー》クリアを目指す旅は、これからが本番。
旅の支度は整った。
《大地の剣》をゲットしたのは、ついさっきのこと。
新たな武器を手に入れ、パーティー全員が装備を完成させたところだ。
俺たち《星の旅人たち》一行は、《ロンドの山》をくだり、小川の流れるのどかな山間でひと休みしていた。
「小川でまったりするのは、気分がいいですな~」
凪は相変わらず、のほほんとしている。
「宿が見つからなかったら野宿になるし、暗くなる前にもうちょっとだけ進みたいね。だから、もう少し休憩したら出発しよう」
俺が提案すると、花音は大きくうなずいた。
「うん! 新しい街に行くのって楽しいしね! でも、あたしは野宿もいいと思う。キャンプみたいじゃない?」
「はい。ノノもどっちでもたのしいと思います」
ノノちゃんも野宿でも構わないらしい。子供たちふたりがそう言うなら、頑張って宿を探さなくても大丈夫なのかな?
「オレもどっちでもいいけどよ、まず地図で確認してみりゃいいンじゃねェか?」
作哉くんに言われて、
「ふむ。そりゃそうだ」
凪が地図を取り出す。
「ほい」
地図を見るのが得意じゃない凪が作哉くんに地図を渡し、作哉くんはさっと地図に目を走らせた。
「ほーん。そういや、この地図って街の名前も書いてなねェンだっけか」
「訪れたところが、自動でマッピングされる仕組みだよ」
と、俺は教える。
もう地図を見終えた作哉くんが、凪に地図を突き返すように差し出して、
「ま、どっちでもいいが、この地図によると今日のうちに次の街まで行けるかは微妙だぜ?」
どれどれ、と俺が作哉くんの手から地図を取る。花音とノノちゃんもいっしょに見る。ついでにティラコも覗き込む。
「うん、そうみたいだね。次の街までは難しいな」
「え、じゃあ野宿?」
「キャンプですね」
「ガウ!」
花音とノノちゃんとティラコはどこかウキウキした様子だ。ティラコに関してはキャンプというものを理解しているか怪しいけど、こういうのも旅の醍醐味なのかもしれない。
凪が立ち上がった。
「星空を見ながら寝るのも悪くない。見張りを立てる必要もないだろう。なにかあれば、敏感そうな作哉くんか花音ちゃんかティラコが起きるさ」
「ガオー!」
力強く、ティラコが答えた。おそらく、ボクに任せてくれって言ってるんだ。凪の人任せには困ったものだけど、モンスターにはそういう感度のよさがありそうだし、心強い。
まだ空は青い。
夕暮れまでもう少しだけ時間があるし、いつまでもゆっくりしているわけにもいかない。
俺は地図を握りしめ、立ち上がった。
「さあ。行こうか」
山の入口にやってきた。
「《火影山》だって」
花音が看板に目をやり、俺を振り返る。
俺はうなずいて、
「うん。なんだか、ちょっと意味ありげだね」
「名前の情報だけじゃ、まだどんな山なのか要領を得ねェな。ま、いま考えるコトじゃねェだろ」
あんまり興味なさそうにぼやく作哉くん。
「なんでもいいさ。早く登ろう」
凪が最初に山に足を踏み入れた。
そのとき。
ノノちゃんが前方を指差した。
「あ! 見てください! モンスターです」




