~冬休み~
僕の住んでいる場所は夏休みが短く、冬休みが長い地方だ。
冬休みは毎日、起床と共に雪かきをする。今日も雪かきをしていると、遥さんのことが気になった。
祖父母と遥さんしかいないから雪かきは大変なんだろうと思うと居ても立っても居られなくなり、遥さんの家へ向かった。
遥さんの家の前に着くとおじいさんが雪かきをしている。僕に気付くとおじいさんは手を振った。
「僕も手伝いますよ」僕は使っていないスコップを持つと勢いよく雪をかいていく。
「悪いな、しかし豊君なんでまたここに?」おじいさんは雪かきで曲がった腰を伸ばしながら僕に聞く。
「遥さんのこと考えたら、雪かき大変じゃないかなって思って、その、なんていうか、気がついたらここにきてました」僕は恥ずかしい顔を下を向いて隠しながら雪かきを続ける。
そっと横目でおじいさんを覗くと嬉しそうな顔をして僕を見ていた。
「豊君は不思議な子だな。一見臆病に見えるけど信念があって、その信念に対しては真っ直ぐに進む。それは遥のためか?」おじいさんの質問はいつもストレートだ。
「は、遥さんのためと言えばそうかもしれませんが、おじいさんやおばあさん、遥さんが大切にしている全てのためだと…」そこまで言うとおじいさんは僕の背中を叩く。
「遥と仲良くしてくれてありがとう。わしは豊君が遥を好きでいてくれて本当によかった」と涙ぐむ。
「お、おじいさん?ちょ、ちょっと…」手を止めておじいさんを気遣っていると2階の窓が開く音がした。
「おじいちゃん…キャッ」パジャマ姿の遥さんは僕と目が合うと驚いてカーテンを閉めた。
それから数分して遥さんが降りてきた。
「今日はどうしたの?」不思議そうな顔でもあり、少し嬉しそうでもある。僕は雪かきを手伝いにきたと説明すると遥さんはとても嬉しそうな顔をしてくれた。
それから僕らは二人で雪かきをして、おじいさんの作ったお昼ご飯を食べた。
いつも一人で部屋にこもる冬休みと違って、今日はとても充実した一日だった。
帰り道、遥さんの顔を空に思い浮かべる。
僕は遥さんが好きなんだ…。そう考えると胸のあたりがモヤモヤした。