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君が僕にくれた宝物  作者: 豊
10/10

~君が僕にくれた宝物~

遥さんの家のインターホンを押す。「どちら様かな」出てきたのは遥さんのおじいさんだった。

「遥さんいますか?」僕は意を決意しておじいさんに聞く。


おじいさんは少し驚いた様子で僕を見る。「なんだ遥から聞いていなかったのか」僕はとっさにスマホのLINEメッセージを見ようとすると、「遥は一昨日から静岡の叔母の所に引っ越してな、もともとわしもいい年だったし、遥はずっと嫌がっていたけど、数日前に決心が付いたみたいで編入の手続きも終えたばかりでな…」そこまで聞くと僕は無我夢中で駅に走った。


電子マネーの残高を確認して財布の中を確認する。小銭しか持っていなく、コンビニエンスストアのATMでお年玉の貯金をあわてて下ろす。

いくらあれば足りる、頭の中は混乱していてよく分からない。貯金を全額引き下ろしまた急いで券売機に戻った。


駅員さんにここから静岡までの最短ルートを確認すると、飛行機でおよそ4万3千円くらいで、今から行っても途中で終電が無くなり、早くても朝の6時位に到着すると教えてもらった。

僕は自分でも不思議なくらい気持ちを抑えきれず、今すぐ静岡に行きたいと母親に電話をした。怒られると思っていたが、母親は必ず三時間に1回連絡を入れなさい、何かあったらすぐに連絡しなさいと言うだけだった。


連絡バスに乗り、空港で当日便の手配をして羽田空港に着いたのは21時を回っていた。

電車を乗り継いで終電の00時半過ぎに見知らぬ駅に着く。

僕は疲労の中、駅のコンコース近くの交番の横に腰を下ろして始発までの間ここに居ようとした。


すると交番から警察官が出てきて、職務質問を受けた。親に連絡を入れられ、迎えに来れる距離ではないこと、親の許可もあることを理由に始発まで交番内で休ませてもらえることになった。

本来は絶対にダメだけど、緊急避難と言うことで特例だよと警察官は笑ってくれた。

警察官の人にここに来た経緯を聞かれ、ありのままを伝えると青春だなと軽く微笑み奥のソファーで寝かねせてくれた。僕は安堵からかそのまま眠ってしまった。


朝の4時50分に起こされ、お礼を言って始発の電車に乗った。電車の中でLINEメッセージを確認する。

遥さんは何通も僕にメッセージをくれていた。

今すぐ会いたい。会って豊君に言いたい事がある。静岡に行くことが決まって…と書いてあった。

真理さんとは親友でケンカ別れしたくないからどうしよう…とも書いてある。


きっと真理さんも何も言われずに引っ越したことをショックに思っているかも知れないと思い、その文章をそのままコピーして真理さんに送った。

やがて静岡駅に到着する旨のアナウンスが車内に響き渡る。

静岡の駅のプラットホームに足を踏み入れると急に恐怖が襲ってきた。

遥さんに恐る恐るメッセージを入れる。


~LINE~

僕「会えませんか?」

しばらくすると既読が付いた。

遥さん「ごめんなさい。私、もう静岡にいて…本当にごめんなさい」

僕「今、静岡の駅にいます。遥さんに会いたくて来てしまいました。」

遥さん「私がこれから駅に行くから待ってて!」


僕はタクシーやバス乗り場がある場所で1時間は待っていただろうか。不安だけが募り、1時間が何時間にも感じた。やがて一人の女性がこちらに向かって走ってくる。遥さんだ。

息を切らして、今にも泣き出しそうな顔でこっちに走ってくる。僕も無意識に遥さんに向かって走った。


お互い息を切らしながら今にも泣きそうだった。

「僕、伝えなきゃいけないことがある。」「私、豊君に伝えたいことがあるの」お互いが同じタイミングで言った。僕は譲らなかった。

「僕は遥さんが大好きです。遥さんの笑顔を一生守って生きたい。僕は遥さんと出会って生きる意味を遥さんに教えてもらった。」

「豊君…」遥さんの目から涙が溢れ出していた。

「まだ、先の話かもしれないけど、高校を卒業して大学を出て…そしたら僕と結婚してくれませんか?」

遥さんは泣きながら何度も頷いていた。


それから10年が経った。僕は遥さんと結婚し二人の新しい生命が遥さんのお腹に宿っている。

これから生まれてくる子供に僕達は生きる意味を教えていくのだろう。  




おしまい。







「あれ?何読んでるの?」僕は少し涙ぐんでいる遥の顔を見る。

「ん?ちょっと…昔のパパの書いた日記をね…」少し照れながら涙ぐむ遥はどこか嬉しそうだ。

「あー!まだ見ちゃだめ!!」僕は顔を赤くして恥ずかしがる。

「ママー、僕にもその本を読んでよー」息子も興味心身だ。

「そういえば真理が来月出産だから、パパも休み取ってね!」遥は真理さんの話をする時はいつも笑顔になる。



君が僕にくれた宝物は、僕達が歳をとったら二人で一緒に読もうと思う。



おしまい


最後まで読んで頂きありがとうございました。

もし宜しければツイッターフォローして頂けると幸いです。

小説家になろう@豊

@narou_yutaka

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