十五話 執事と主。
・・・え?
「返事は聞かない、答えはわかっているからな。」
レインは告白を放ったあとすぐにそう言った。
レインは俺の事が好きだったのだ。
全く気づかなかったし、そんな事を思ってくれるとは思わなかった。
「レイン、ごめん、」
「ひとつ言っておくが、私は全く傷ついてはいない、君がユイの事が好きというのはマルスから聞いていたからね。」
「さて!飲もうとしよう!」
レインはワインを一気飲みした。
傷ついていないと言うのは嘘だと思う、好きな人にある意味、振られているのだから。
「レイン、俺も一ついわせてくれ、」
「なにかな?」
レインはコップを置いて俺を見る。
「俺の1番目が空いていたら、完全にお前の者になってたよ。」
「そんな事は無いだろう、君は最初からユイの事が好きだったと思うよ。」
「ごめん。」
「良いと言っている。」
・・・・・・・・・・・・・・
「おい!全員のんでるかぁ!!!」
水を差すようにバーンが叫ぶ。
「さて、我々ももっと飲もうとしよう、付き合ってくれるかな?」
とカウンターからビールジョッキを持って俺のところに来る。
「ああ、もちろん!」
ビールジョッキを取り、ビールを飲む。
「ヒカル?レインと何を話していたんだい?」
ソイルが気になった表情で聞いてきた。
「普段と変わらない会話だ。」
俺は軽く嘘をついた。
「2人で話していたから少し気になってね。」
「兄様ぁぁ、お酒ぇちょうだぁいー」
さらに酔ったソティがねだる。
「お前は弱いんだからこれ以上はだめだ!」
「兄様のいじわるぅ!!」
とソティはソイルを叩くがぽかぽかと弱い攻撃だった。
「ふぅ、全く。」
と呆れたソイルは
「バーン、僕達は帰るよ。」
「あぁ!?もう帰んのか!?」
「ああ、妹がこの様子だ、帰らせてもらおう。」
ソイルのお兄さんレベルを垣間見た。
「そっか、ならしゃねぇな、また飲もうや!」
バーンも意外と良い1面も見れた。
「ああ、ではヒカル、レインも3日後。」
そう言って、ソティをおんぶして、酒場を後にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・1時間後。
「我々も帰るか?」
「そうですね、由衣もおきたところですし。」
「うん?帰るのぉ?」
「ほら、肩かして。」
「やぁだ、おんぶして。」
・・・可愛い。
「よっこいしょ。」
以外に重いな。
「ちょっと、今何か思ったでしょ。」
「いや、なんもおもってないよ。」
由衣をおんぶして、馬車へ向かう。
「レイン様、宴会は楽しかったですかな?」
「マルス、宴会ではないぞ、だが楽しかった。」
「そうでしたか、ヒカル様はいかがでしたか?」
「あ、はい、楽しかったですよ。」
「私もたのしかった。」
「そうですか、私も行きたかったものです。」
確かにマルスはずっと馬車番をしていて、ここから動いていない。
「帰ったら一緒に飲みませんか?」
「ヒカル様、是非。」
そして、馬車に乗って屋敷へ戻る。
・・・・・・・・・・・・・・
「わたしぃ、お風呂にはってぇ、寝るねぇ。」
かなり酔っていて、なまった言葉遣いにさっきからなっている。
「はいはい、おやすみ。」
そう言うと、由衣はお風呂へ向かう。
さてと、マルスと飲むのか。
俺はマルスの部屋に向かう。
「お待ちしておりました、ヒカル様どうぞ入ってください。」
「失礼します。」
マルスの部屋には初めて入るが、壁に剣が多数飾られてて、後はテーブルや椅子のみ。
本当に剣のために生きているんだなと思う部屋だった。
「ウィスキーでよろしいですかな?」
「あ、はい!」
「ロック、ストレートどちらで?」
「あ、ロックで。」
そう言うとマルスは冷凍庫から四角い氷を取って剣で氷を丸状の氷に斬った。
空中で斬るその姿は流石の一言だ。
「マルスはストレートなんですね。」
「はい、そのまま飲むのが一番です。」
マルスが飲むと絵になるほどかっこいい。
「ヒカル様、レイン様に何か言われましたかな?」
!?
「言われたようですな。」
「どうしてそれを?」
「勘です。」
「勘で当てられるものなんですか?」
「勘は馬鹿になりませんぞ?」
「それで、何と返答を?」
「俺からは何も、レインは察してくれたんです。」
「そうですか。」
マルスはウィスキーを飲み干し、コップを置く。
「私はレイン様と10年以来の付き合いなんですが、レイン様はどうやら私のことは気にもかけてくれないようですな。」
「マルスはレインのことが?」
「それは言えませんな。」
マルスはレインのことが好きなようだ。
「まぁ、いいのです、私はレイン様の執事兼剣術指南役、どうやってもその関係は崩れない。」
マルスはいつになく弱気だ。
「・・・マルス」
「さて、ありがとうございました、ヒカル様と飲めることが出来て良かったです、また飲んでくださりますかな?」
「もちろんです。」
と言って俺は部屋を後にした。
はぁ、疲れた。
俺はベットに入って由衣を見る。
可愛いな、と俺はおもって由衣は見つめる。
「見ないで。」
!?!?
「むにゃむにゃ。」
なんだ、寝言か、びっくりしたわ。
さて、俺も寝るか。
由衣おやすみ。